104話

(リューズナードさんも、こんな気持ちだったのかしら)


 彼は、戦うことが自身の存在意義だと言った。


 彼にとって「戦う」とは、「仲間を守ること」と同義だ。かつて仲間たちから与えられた役割が、今もそのまま彼の存在意義に、生きる理由になっている。


 たった一人で戦い続ける、なんて易々とできることではない。けれど、守りたいものを脳裏に思い浮かべれば、それが原動力となって自分の体をいくらでも突き動かしてくれる。そんな気持ちが、今さら理解できてしまった。


「……お前、なんだか妙に、反抗的になったわね。野蛮な下民の影響でも受けたのかしら、鬱陶しい。……まあ、それでやる気になるのなら、結構よ」


「!」


「この世に魔法という概念が無ければ、きっと大陸でも随一の強さを誇る剣士だった。そんな男を、いざとなったら、お前がその手で殺す。そして、その男の代わりに敵国の兵も殺し回って同等の戦果を挙げる。そう言っているのよね?」


「っ…………はい。どれだけ時間がかかっても、必ず成し遂げられるようになってみせます」


 「殺す」の部分を強調されて、息が詰まる。苦悶の表情で頷くロレッタを見下ろし、ミランダが愉快そうに笑った。


「良いじゃない。やれるものなら、やってみなさいよ。もしも、お前にそんなことができたなら、その時は望み通り、契約も婚姻も破棄してあげる。非人の村にも干渉しないわ」


「本当、ですか?」


「ええ。お前も泣き言なんて漏らすんじゃないわよ。それと、私の軍事指揮に逆らうことも許さない。余計な口を叩いたら、また人質でも取って、あの男にお前を殺させようかしら」


「おやめください! もう、あの村の皆様を巻き込まないでください……!」


「皆様、ねえ……。ずいぶん肩入れするじゃない。そんなに愛着が湧いたの? まあ、使える手駒が増えるのなら、なんでも良いわ。……アドルフ! 聞いていたわね? これから、ロレッタを近衛兵として鍛え上げて頂戴。どれだけ厳しくしても、怪我をさせても、構わない。私が許可するわ」


「……畏まりました、ミランダ様」


 アドルフが恭しく頭を下げる。ロレッタは、苦々しい思いで唇を噛み締めた。

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