28話
日が暮れるまで農作業と家事を手伝い、体の疲れに任せて床につく。それだけを繰り返す生活が始まって、およそ二週間が過ぎた。カレンダーのような物が無いので正確ではないかもしれないが、恐らくそのくらいだ。
サラの足はほとんど完治していたものの、ロレッタは自ら頼み込んで手伝いを継続している。手が空けば他の家庭の作業も見て回り、たまに体験させてもらいながら、少しずつ村での生活や住人たちの輪に溶け込んでいった。
良く言えば牧歌的、明け透けに言えば原始的な暮らしは、毎日が新鮮な驚きと感動に溢れている。見る物、触れる物、聴く音、全て王宮の本には載っていなかったものばかりだ。自分の世界が如何に狭かったのかを思い知る日々が、楽しくて仕方がない。小さなことにもひとつひとつ純粋な反応を示すロレッタを、住人たちも可愛がってくれるようになった。
村での生活において、全く進展がないのはリューズナードとの交流だけだ。相変わらず、彼と家で顔を合わせる機会は訪れない。ただ、彼もこの村の住人なので、家の外でなら姿を見かけることはよくある。最近になってようやく分かってきたことだが、どうやら彼は故意にロレッタを避けているわけではなく、元々睡眠時間の短い生活を送っていたようだった。
朝は日の出と共に起床して、すぐに村の周辺に異変がないか見て回る。他の住人が起床する時間帯になると、水と薪を老人や怪我人のいる家へ届けに行く。日の高い間は有志の者たちに剣術や体術の指南をしたり、子供たちの相手をしたりして過ごす。空の色が変わり始める頃には、村の外へ魚や動物の肉を狩りに出掛け、貴重な食料として住人たちに分け与える。夜間は村の男衆と交代で見回りを行い、日付が変わったであろう時刻になってようやく帰宅する。
実際に見かける姿と、住人たちから聞いた話を統合した結果、リューズナードはおおよそこのような時間割で活動していると推測できた。食事や水浴びは見回りの途中で適当に済ませているらしい。一日中、体を動かして献身的に働く一方、自己管理が杜撰で心配になってくる。ロレッタの中の常識で考えれば、どう見積もっても活動時間と睡眠時間が釣り合っていないが、いつかふらりと倒れてしまわないだろうか。
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