22話

 時計がないので正確な時刻は分からなかったが、空の明るさや太陽の位置を鑑みるに、まだ朝も早い時間帯なのだろうとは思う。しかし、住人たちは大人も子供も関係なく、皆が一様に活動を開始していた。友好的に挨拶してくれる人々に返事をしつつ、邪魔にならないよう注意して道の端を進む。


 そうして歩くこと、数分。ロレッタは昨日覚えたネイキスたちの家に、再びやって来た。子供が攫われ、並々ならない不安や恐怖を感じていただろうサラへ、謝罪と説明をする為に。


「ロレッタお姉ちゃんだ! おはよう!」


「れーたん! おはよ!」


「おはようございます。あの、お母様はいらっしゃいますか?」


「母さん? 家にいるよ! こっち!」


「こっち!」


 元気いっぱいな子供たちに手を引かれ、玄関の内側へと案内される。掃除の行き届いた室内では、サラが足を崩した状態で針仕事に勤しんでいた。子供サイズの服に空いた穴を縫い合わせている最中のようだ。


「母さん、ロレッタお姉ちゃんが用事だって!」


「れーたん、よーじ!」


「そんなに大声を出さなくても聞こえているわよ、まったく……。おはよう、ロレッタちゃん。うるさくてごめんなさいね。何かあった?」


「おはようございます。私のほうこそ、朝から突然押しかけてしまい、申し訳ありません。少々、お話ししたいことがありまして……」


「……そう。どうぞ、上がって」


「お邪魔致します」


 玄関でしっかりと頭を下げてから、靴を脱いで中へ入った。間取りはリューズナードの自宅とそれほど変わらないが、敷地面積はこちらのほうが広い気がする。子供たちが走り回ることを想定して建てられたのかもしれない。


 椅子もソファもない室内で、客人としてはどこに陣取るのが正しいのかを逡巡し、ゆっくり話ができるようにと、サラの正面に腰を下ろす。珍しい来客に子供たちも興味津々のようだったが、母親に外へ出ているよう促され、すごすごと退散して行った。後で一緒に遊んであげられたら、と思う。

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