21話

 少しさっぱりしたところで、再び家の中へと戻り、住人たちに貰った服を取り出した。シンプルな無地の布に簡単な刺繍があしらわれた、手作り感溢れるデザインだ。村の女性陣は皆、似たような衣服を着用していた気がする。繊細で上品なドレスも好きだが、この素朴な可愛らしさもまた、違った趣があってすぐに気に入った。


 実際に着替えてみると、驚くほど軽くて動きやすい。そして、村の一員になれた気がするのも嬉しかった。その気持ちに気が付くのと同時に、本当に王族の一員ではなくなったのだという実感も沸いてきて、言い表せない複雑な感情に襲われる。血縁関係を重要視する王族社会において、姓を剥奪された自分は、もう完全に見向きもされない存在と成り果てたのだ。


 そうだとしたら、今ここにいる自分は、一体何者なのだろうか。生家の姓を名乗ることも許されず、かく言う伴侶にその存在を必要とされているわけでもない。環境が変わっても、居場所がないのは同じ。進歩のない自分に嫌気が差してくる。


 気持ちが沈みかけた時、ふとリューズナードの言葉を思い出した。


 ――だから俺たちは、生まれた国を捨てて、自分たちが心穏やかに暮らせる居場所を、皆で作った。


(……そうだわ。自分の居場所は、自分で作るもの……!)


 与えられるのをひたすら待つのは、もうやめよう。自分にできることを、自分のやりたいことを、探しに行ってみよう。たった一歩を踏み出せば、その先には広い世界が広がっているのだから。


 決意を新たに、ロレッタは家屋の扉を潜り抜けた。

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