17話
村へ入ると、リューズナードはそのまま真っすぐ一軒の家屋へ向かった。家屋の前にはネイキスとユリィがいて、収穫した作物の乗った籠を一生懸命に運搬している。農作業の手伝いだろうか。ロレッタも遅れないようについて行く。
「あ! れーたん! りゅー!」
「! お、おかえりなさい!」
やがてこちらに気付いた子供たちが、籠を置いて一目散に駆け寄って来た。リューズナードが片膝を着き、二人と目線を合わせる。
「ああ、ただいま」
そう応えた彼の声があまりにも優しくて、ロレッタは心底驚いた。自分へ向けられるものとは明らかに違う。信用されていないのだな、と、当たり前の事実を突き付けられた心地になる。
「あのね、リュー。言い付けを破って、勝手に外へ出て、ごめんなさい! たくさん迷惑かけて、本当に、ごめんなさい……!」
「にーたん……」
震えた声で必死に謝罪するネイキス。兄の様子につられたのか、隣でユリィも悲しそうな顔をしている。
そんな二人の頭を、リューズナードの大きな手がわしゃわしゃと撫でた。
「迷惑じゃない、心配したんだ。もう黙って一人で外へは行かない、と約束できるか?」
「……うん、する。ごめんなさい」
「ありがとう。怖い思いをさせて、悪かった。どこも怪我してないか?」
「して、ない……。それに、怖く、なかったもん、あれくらい……っ」
「そうか。俺は村の誰かが嫌な目に遭っていたらと思うと、怖くてたまらなかったんだけどな。ネイキスは強いな」
「ふえぇ……」
「にーたん、なかない」
「泣いてないぃ……!」
目元を擦りながら強がるネイキスと、兄を励まそうとしているユリィを見て、リューズナードが穏やかに笑っている。きっとこれは、この村の日常風景なのだろう。やはり、彼は「悪い人」などではないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます