17話

 村へ入ると、リューズナードはそのまま真っすぐ一軒の家屋へ向かった。家屋の前にはネイキスとユリィがいて、収穫した作物の乗った籠を一生懸命に運搬している。農作業の手伝いだろうか。ロレッタも遅れないようについて行く。


「あ! れーたん! りゅー!」


「! お、おかえりなさい!」


 やがてこちらに気付いた子供たちが、籠を置いて一目散に駆け寄って来た。リューズナードが片膝を着き、二人と目線を合わせる。


「ああ、ただいま」


 そう応えた彼の声があまりにも優しくて、ロレッタは心底驚いた。自分へ向けられるものとは明らかに違う。信用されていないのだな、と、当たり前の事実を突き付けられた心地になる。


「あのね、リュー。言い付けを破って、勝手に外へ出て、ごめんなさい! たくさん迷惑かけて、本当に、ごめんなさい……!」


「にーたん……」


 震えた声で必死に謝罪するネイキス。兄の様子につられたのか、隣でユリィも悲しそうな顔をしている。


 そんな二人の頭を、リューズナードの大きな手がわしゃわしゃと撫でた。


「迷惑じゃない、心配したんだ。もう黙って一人で外へは行かない、と約束できるか?」


「……うん、する。ごめんなさい」


「ありがとう。怖い思いをさせて、悪かった。どこも怪我してないか?」


「して、ない……。それに、怖く、なかったもん、あれくらい……っ」


「そうか。俺は村の誰かが嫌な目に遭っていたらと思うと、怖くてたまらなかったんだけどな。ネイキスは強いな」


「ふえぇ……」


「にーたん、なかない」


「泣いてないぃ……!」


 目元を擦りながら強がるネイキスと、兄を励まそうとしているユリィを見て、リューズナードが穏やかに笑っている。きっとこれは、この村の日常風景なのだろう。やはり、彼は「悪い人」などではないのだ。

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