(いみエモ話)心がきゅんなSFの、結末は?所長の約束が、数百年を超えるとき…。

冒険者たちのぽかぽか酒場

第1話 こういうSFも、良いもんだ。時間と空間を研究するこの場所は、「約束」を大切にしている。その理由って?

  (いみエモ話)

 意味がわかると、エモイ話。

 あなたは、この話の意味がわかりますか?

   ☆

 「地球約束SF研究所」

 この研究所では、日夜、 x軸と y軸、 LGBTQ+軸の操作で変え得る時間と空間についての研究がおこなわれている。

 所長は、おばあちゃん。

 「絶対に、だれとも結婚したくない」

 そんな信念をもつ、不思議な、独り身おばあちゃんでもある。

 研究所の名前に「約束」という言葉が付く理由は、名付け親の、所長くらいしか知らない。

 今日の研究所は、大盛り上がり。

 「限定的ではありますが、時間の操作が可能となりました!」

 それはつまり、いわゆる「タイムマシン」が完成したということ。

 試運転をするため、 1人の若手研究員が、完成したマシンに乗り込んだ。

 「いくぞ?」

 タイムマシンを発動させた彼の意識が、遠のき…。

 「いつに、きたんだ?ここ、どこ?」

 実は、 300年前の、今の研究所の建つ場所にきていた。

 「…あれは、何だ?」

 彼の目の前には、見慣れない建物が建っていた。

 彼の良く知る研究所が建てられる以前の、そのまた以前の、研究所だ。

 「…あ」

 建物の中から声がして、 1人の少女が出てきたぞ。

 「所長?おつかいを頼んで、申しわけありません!」

 所長?

 「へえ…。あんなに若い子が、所長か。IQの高い、相当優秀な子にちがいない」

 すると、意外なことが起こる。

 相当優秀そうなその子が、道にしかけられた、動物用のわなに引っかかってしまったのだ。

 「いったーい!」

 その子の元に駆け寄る、彼。

 「だ、大丈夫ですか!」

 「ありがとうございます。えっと…あなたは?」

 「名乗るほどの者では、ありません」

 彼が素っ気ないのも、当然だ。

 過去の時間軸をいじりすぎてしまえば、厳罰もの。

 「もうこの時間軸から、帰ろう…」

 その子をおんぶして研究所に送った彼が、その場から立ち去ろうとした、そのとき!

 その子が、モジモジとしはじめる。

 「あのう…。また、会えますよね?」

 顔を、赤らめて。

 「…わかった。また、会おう」

 「やくそくよ?」

 「ああ。君の、名前は?」

 「おなじく、名のるほどのものではありませんよ」

 「…プッ」

 「私、あなたとさいかいするまでは、だれともけっこんしないからね!」

 「はい、はい」

 …ウイ、ウイ。

 ウイーン…。

 彼が乗り込んだタイムマシンに、もやがかかりはじめる。

 それから、数十分。

 「良し!」

  彼は、 300年後、つまりは元の時間軸に戻れたようだ。

 戻れた彼は、せっかく勤めはじめた研究所をやめることとなった。

 「でも、幸せだ!」


  (この話の意味)

 彼が出会った、 300年前の時間軸に生きる女の子は、超優秀。

 非公認で、彼女はタイムマシンを開発してしまう。

 彼に会いたくて、タイムトラベル。

 たまたま、 200年と少し後の世界に到着。

 そこから彼女は、80年以上を生きることになる。

 彼女こそが、この研究所の所長だ。

 そして所長は、過去の世界で誓ったこの約束を思い出す。

 「あなたとさいかいするまでは、だれともけっこんしない!」

 だから所長は、それを守るために、だれとも結婚しなかったんだな。

 そんな「今」の時間軸の中で、他にも、過去の世界でのことを思い出した男がいた。

 タイムマシンの試運転をした、あの彼だ。

 「 300年前に出会ったあの子って、今の所長?面影が、ありすぎる…」

 すべてを思い出した彼は、すぐに、研究所を退職。

 そうして、所長のおばあちゃんにプロポーズ。

自身よりもずっと優秀な人に、やめてもらいたくはなかったんだろう。

 「…所長?約束を果たすのに、 300年も、かかってしまいましたね?」

 超、年の差婚。

 良いねえ、愛のSF。

 エモいなあ。





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