6. あの日の僕ら2・外伝 ⑪~⑮


-⑪ 保留-


 美恵や愛美達が同じ座敷席に座る文香のとったまさかの行動に目を丸くしていたのだが、係長の返事は意外な物だった様だ。


勝久「良いんですか、そう言えば今日バレンタインデーでしたもんね。自分もチョコレート大好きなんですよ、喜んで食べさせてて頂きます。手作りなんだ・・・、凄いな・・・。」


 どうやら刑事にとって人生初の告白は店内の喧騒によってかき消された様で・・・。


愛美「酒井さん・・・、今どうやって聞こえたの?」

勝久「えっ?!い・・・、いや・・・、「チョコレートが大好きです、私と食べて下さい」って・・・。」

神崎「お前、どんだけ鈍感なんだよ・・・。」


 円卓を挟んだ向かいで頭を抱える愛美と神崎。


勝久「えっ・・・、何・・・?大好きなんだからチョコを美味しく食べちゃだめなの?」


 自分の発言に気付いていない勝久を必死にかばおうとする文香、その横で勝久の目線はチョコレートにしか向いていなかった。


文香「い・・・、良いんです。私もチョコレートの話がしたかっただけなんで。えっと・・・、生クリームを使っているんで結構甘く仕上がっちゃったかもなんですが大丈夫ですか?」

勝久「な・・・、何がです・・・?」

文香「結構な辛党って聞きましたので・・・。」


 顔を赤くする文香を警視総監がカウンターへと呼び出した。


龍太郎「文香ちゃん・・・、ちょっと大丈夫かな・・・。」


 文香は瓶ビールをグラスに注ぎなおしてカウンターの端の席へと座った、未だざわつく店内でも龍太郎は文香の告白をしっかりと聞き取っていた様だ。


龍太郎「すまねぇな・・・、あいつ昔からあんななんだよ。警察入りたての頃は教育係だった俺がどれだけ苦労したか・・・。」

文香「そうなんだ・・・、ねぇ龍さん・・・、教えて?振られちゃったって事に入るかな?」

龍太郎「いや、ちゃんと聞こえてなかっただけで文香ちゃんにはまだ可能性があると思うぜ。と言うより、「告白なんかしてなかった」だろ?ただチョコが好きだって言っただけだろ?そうだ・・・、ちょっと待ってろ。」


 ウィンクしながら文香の告白を必死に無かった事にしようとした店主は飲み物の入った冷蔵庫の方向へと向かった後、冷え冷えのビアジョッキ片手に戻って来た。


龍太郎「ほら、俺からの奢りだ。今日の事はスッキリ忘れて呑んで行けや。」

文香「りゅ・・・、龍さん・・・。」


 文香が噛みしめる様に出されたビールを一気に煽る一方で、勝久は愛美と神崎の2人から肘鉄を喰らっていた。


勝久「いっでぇ!!2人して何なんだよ、俺一応警部なんだぞ・・・!!」

神崎「その警部が鈍感じゃ駄目だろうが・・・、よ!!」


 先程喰らった場所に追加でもう1発食らった勝久が痛さで崩れそうになる中、同じ女性として許せなかった愛美が睨みつけていた。


勝久「おいおい・・・、お前まで何だってんだよ。いくら警視総監の娘だからって人を睨むのは良くないんだぞ。」

愛美「酒井さん・・・、本当にちゃんと聞こえなかったの?」

勝久「いや・・・、だから言ったじゃないか。「チョコレートが大好きです、私と食べて下さい」ってちゃんと聞こえてたって。」

愛美「あのさ・・・、本当はかなり一大決心してでの発言をしてたのに何で気付かなかった訳?!聞いてあげなかった訳?!」


 かなりご立腹の愛美の言葉を受けた勝久は勢いよくその場で立ち上がった。


愛美「何やってんの。」

勝久「そんなに言うなら、聞き直して来る。」

神崎「お前は馬鹿かよ!!文香ちゃんに恥かかすつもりかよ!!」


 警部を必死に止める神崎の言葉に全員が賛同したので勝久は顔を赤らめながら座った。


-⑫ 内心では-


 人生で初めての告白をサラッと受け流された文香の心中には、警視総監に慰められながらも辛さという物が未だに残っていた。

 しかし、龍太郎の言葉や出された酒に元気が出て来たのでいつの間にか気にならない程度になってしまっていた。


文香「そうよ、私は龍さんに言われた通り告白なんてしてないのよ。でも多分きっと・・・、これから誰かに恋する事も無いだろうな・・・。」


 カウンターで1人両腕に顔を隠す文香、表面上は強がっていながらも肩が小刻みに震えていた。


愛美「ごめんなさい、本当はあんな無神経な人じゃなかったはずなんですが。」

文香「良いの、気にしないで。紛らわしく告白した私が悪かったの。」

愛美「何でですか、文香さんはご自分の大切な気持ちを素直に警部に伝えただけじゃないですか。誰も文香さんの事を責めたりなんかしませんよ、ご自分が悪いだなんて言わないで下さい。」


 自分の無神経さから出てしまった発言に対して真摯に叱ってくれた少女に感謝していた女性刑事は、嬉しくなったのか目の前の女の子に何か奢りたくなった。


文香「ねぇ、何かご馳走させてくれない?貴女のお陰で目が覚めた気がするからお礼させて欲しいの。」

愛美「そんな・・・、大した事していないのに良いんですか?」


 少し遠慮気味の愛美に店主が優しく声を掛けた。


龍太郎「愛美ちゃんだっけか・・・?この文香ちゃんが人に御馳走したいだなんて中々言わないんだぞ、それに人の好意は素直に受けておくもんだぜ。」

愛美「そうですか・・・、じゃあ炒飯を頂きます。」

龍太郎「待ってな、飛び切り美味い炒飯を作ってやるぜ・・・。」


 そう言うと店主は、何故か携帯片手に調理場へと向かった。その姿を見て怪しむ者は1人もいなかった、きっと龍太郎の警視総監としての姿が目に焼き付いているんだろう。

 そんな中、勝久は煙草を片手に1人裏庭へと向かった。僅かながらだが、勝久の表情が少し曇っている事を感じた神崎は足音を立てない様にこっそりと後ろからついて行った。

 勝久は裏庭に到着してから数秒程の時間をかけてゆっくりとベンチに腰を下ろした、それからまた数秒かけて煙草に火をつけて燻らせ始めた。この間も勝久の表情は曇ったままだったのである事を思い出した神崎は一先ず落ち着こうと化粧室へと向かった。


神崎「あいつ・・・、まさか・・・。いや、そんな訳が無いよな。何を今更。」


 ただの空想である事を祈りながら化粧室を後にした神崎は裏庭の出入口から改めて勝久の様子を確認した、あまり時間が経過していないのにも関わらず灰皿が先程に比べて多数の吸い殻で埋まっていた。


神崎「そう言う事か・・・、あいつよっぽどだな・・・。」


 そう呟くと、調理場で客へ出す水を用意していた王麗に注文して瓶ビールとグラス2個を受け取ると裏庭へと向かった。


王麗「やっぱりかい、相も変わらずあの子は嘘が下手くそだね。このビールは私の奢りだから元気づけてやんな。」


 女将兼警視がそう言って送り出すと神崎は改めて裏庭へと向かった、出入口から覗き込むと勝久は未だに曇った表情をしていた。


神崎「お前、本当は聞こえてたんだろ?」


 文香からチョコレートを受け取った時とは全くもって別の表情を見せる勝久。


勝久「ああ・・・、やっぱりお前には分かっちまうんだな。」

神崎「麗子さん・・・、か・・・。」


 過去に愛した女性の名前を耳にし、ビール片手に1人男泣きを始める勝久。


勝久「文香さんの気持ちは嬉しくないと言えば嘘になるよ、俺はアイツ以上の女性がこの世にいるとは思えないんだ。」

神崎「傷つけたくなかったから・・・、か・・・、お前も優しい奴だな。」

勝久「優しい・・・?今の俺にその言葉は相応しいのかな・・・。」


-⑬ 男はこういう生き物なんだ-


 裏庭で警部が男泣きを続ける中、優しい嘘だったとはいえ告白を軽く流された刑事は涙ながらにヤケ酒を呑んでいた。


文香「もう生きていたくない、死んだ方がましよ。」

愛美「何馬鹿な事を言っているんですか、男なんて星の数位いるんですから大丈夫ですよ。」


 失恋した人間を慰める時に必ず使われる台詞で文香を泣き止ませようとする愛美に、炒飯を作っていたはずの店主が携帯片手に近付いて来た。


龍太郎「愛美ちゃん、今君のお父さんと話していたんだがやはり勝久が過去を引っ張るのは必然だったと思うって言うんだよ。やはり婚約までしていた女性の事を忘れるのは難しい事なんじゃないかな。」


 (現実社会であり得るか分からないが)どんな事でも警視総監同士で情報交換をすると決めていたが故に、今回の事案も報告と相談をしていた龍太郎。


愛美「あの大将・・・、私それを言わない様にしていたんですけど。」


 何となくこうなる事を予感してはいたのだが、文香の気持ちを考えるとなかなか言い出せなかった愛美。


文香「何?愛美ちゃんは私がふられるって分かっていた訳?」

愛美「いやいや、酒井警部が告白に気付いていなかっただけでふられた訳じゃ無いじゃないですか。いくら何でも考えすぎですよ。」


 ただでさえ辛さを露わにしている文香の心をグサッと刺さる事を言ってしまったのではないかと反省する愛美、ただ心中では勝久自体が何とか挽回してくれると願っていた様だ。

 しかし、裏庭では未だに過去を引きずる勝久が煙草を燻らせていた。


神崎「お前な、そんな顔していると天国の麗子さんも悲しむじゃねぇか。笑っていろよ、お前の事を愛してくれる女性が見つかったんだ、その人の気持ちを無下にするつもりか?」

勝久「どうやって笑えと?俺に麗子以上の女をこの世で見つける事なんて出来る訳が無いだろうが。」


 神崎が持って来た瓶ビールを受け取った勝久はグラスに注がずに一気に煽っていた。


神崎「おいおい、まさかと思うが酒に酔った勢いで文香ちゃんに声を掛け・・・。」


 何をしでかすか分からない勝久を必死に止める神崎の台詞を止めたのはあの人だった。


王麗「こら酒井、いくらうちの人の後輩だからって店内の貼り紙を見てないなんて言わせないよ!!」


 警視が指差す先には「ラッパ飲み禁止」のポスターが貼られていた、ただこの裏庭ではそのルールは無効だったはずだが。


王麗「あのね、いくらあの子を思っての事だと言ってもあんただって嘘は人を傷つけるだけの物だって分かるだろ?」

勝久「分かります・・・、分かるから嘘をついたんです。」


 まさかと思うが・・・、敢えて文香に嫌われようとしているのだろうか。もしもそれが本当なら、勝久が内心では文香の事を意識していたと判断されてもおかしくはない。


勝久「文香さんには俺なんかより相応しい人間がいるはずです、きっと見つかると信じているから気付かなかったフリをしていたんです。あの人に言うべきと思うんだよ、「君の・・・」。」

神崎「勝久待て!!権利的な物と意味を考えろ!!」


 ふぅー・・・、危ない危ない・・・。勝久、いくらコメディ小説だからってやって良い事と悪い事が有るんだぞ!!神崎さん、本当にありがとうございます(個人的に感謝)。

 ただこのお陰で1つ発覚した事がある、勝久が音痴だったという事だ。音痴で無ければ本当に大人の事情で作者が罰せられることになる。

 そんな中、勝久の出鱈目な歌声が聞こえて来たのか文香がやっと泣き止んだ様だ。


文香「何あれ、ちょっと今の人をこっちに呼んでよ!!カラオケの準備して!!」

王麗「な・・・、何だって?!」


 ただ文香の言う通りに動く者はいなかった、流石に警部を社会的に抹殺する訳にはいかないからだ。


-⑭ 桜の下の再会-


 文香の突然の告白からどれくらい経過しただろうか、桜の花が彩りを与え始めた辺りの景色をホテルの窓から眺めていた勝久は貝塚義弘関連の調査に集中するあまり本来数週間のみの予定だったはずの滞在を4月まで引っ張ってしまっていた事を反省していた。


勝久「俺も歳を取る訳だな、もう4月になってしまった事が嘘の様だ。・・・って、今日って4月1日(エイプリルフール)じゃないか、皮肉なもんだな・・・。」


 久々のゆっくりとした休日に思わず独り言と笑みがこぼれる勝久は、ゆっくりとソファに腰かけて煙草を燻らせ始めた。


勝久「偶には俺も愛でても良いのかも知れないな、その権利があるかどうか分からないが。」


 数回程深く煙を吸い込んだ後、吸殻を灰皿に擦り付けた勝久はエレベーターに乗り込んで1階まで降りて出入口へと向かった。目と鼻の先にある公園では桜がぽつぽつと咲き始めていた、お世辞にも「満開」と言える物では無かったが男1人でゆっくりと歩きながら見るには十分と言える光景だった。


勝久「3月の後半から暖かい日が続いているからもう上着を持つ必要は無い、部屋に置いて来て正解だった。」


 この辺りでは有名な花見スポットである公園へと向かった勝久の頬を優しい風が撫でる中、数メートル先に談笑する文香と美恵の姿があった。偶然にも今日は潜入捜査で入っている給食センターの仕事も休みらしい。

 花見をする数人の男女が盛り上がりを見せる中、勝久は1人浮かない顔をしていた。実は「松龍」での出来事を未だに忘れる事が出来ずにいたので、どうやって文香に声を掛けて良いのか分からなかったのだ。


勝久「俺がまだ麗子との事を引っ張ってしまっているから文香さんの事を傷つけてしまったのは紛れもない事実だ、俺も情けない男なんだな。」


 不意に立ち止まった場所にあった自動販売機で缶コーヒーを買った勝久はゆっくりとタブを動かして開けると、1口飲んでため息をついていた。


勝久「こんなにコーヒーって美味くない物だったか、それともこの味は俺の心中を表しているのだろうか。」


 そんな中、ポケットの中で携帯が振動していた。ふと画面を見ると「神崎」の文字が。


勝久「俺だ。」


 勝久はいつも通りの冷静さと寡黙さを保ちながら電話に出た。


神崎(電話)「もしもし?お前な、電話越しでも分かるレベルの暗い雰囲気を出してんじゃねぇよ。折角の花見シーズンだぞ、文香さん達を誘って出かけてみないか?もうそろそろ話しかけても大丈夫と思うぞ。」


 勝久と文香の様子を傍らから密かに見守っていた神崎は、2人の間に溝は無いと何故か心の何処かで確信していた。


勝久「何だよその自信は、それにどうやって誘えって言うんだよ。」


 同じ警察の人間とは言ってもすれ違いばかりで2人が会うとすれば「松龍」位だったのでそれ以外のタイミングなどあるのだろうかと暗中模索していた勝久の事を何故か嘲笑う神崎は数秒程無言となった後にさり気なく電話を切った。


勝久「チィッ・・・、何だよアイツ。」


 すると、イラつく勝久の数メートル先で文香が電話に出た。まさか・・・。


文香「もしもし、神崎さんじゃないですか!!え?今日ですか?美恵も私も休みですよ、お花見ですか?良いですね、じゃあ私達もう公園にいるのですぐ近くのスーパーで適当に何か買って・・・、って勝久さん・・・。」


 どうやら文香は美恵との会話を楽しんでいた為にずっと勝久の存在に気付いていなかった様だ、ただ文香の表情は驚きと嬉しさを兼ね持っていた。

 文香は、携帯片手に笑顔で勝久に近付いて声を掛けた。


文香「あの・・・、今神崎さんに誘われたんですが一緒にお花見しませんか?」

勝久「私は良いですが・・・、いつの間に連絡先を交換していたんですか?」


-⑮ 3人の後輩たち-


 自分の知らぬ所でいつの間にか文香と連絡先の交換をしていた神崎の事を改めて侮れない奴だと思いながら勝久は文香や美恵と共に近くのスーパーへと向かった、入り口に入った時に振動を感じたので携帯を取り出すとまたもや画面にはまたもや「神崎」の文字が、あったが今度は電話では無くメッセージを送って来た様だ。


神崎(メッセージ)「どうだ?俺のお陰で文香さんとお近づきになれそうだろ?」

勝久(メッセージ)「お前な、俺が人間関係に関してはドの付く不器用だって事を覚えているだろう?責任持ってくれるだろうな・・・。」

神崎(メッセージ)「安心しろって、こっちで知り合った助っ人を送っておいたから。3人いるから何とかなるって・・・、多分・・・。」

勝久(メッセージ)「「多分」って何だよ、それにお前はこっちに来ないのかよ?」

神崎(メッセージ)「あのな、俺は文香さんから重要な任務を任されているから行くわけにはいかんだろ。」


 花見における重要任務と言えば1つしかない。


勝久(メッセージ)「お前・・・、今日はある意味楽である意味辛いポジションなんだな。さっきまでの自分の発言を反省するわ。」

神崎(メッセージ)「そうだぞ、この寒空の下で頑張っているんだから早く来てくれよ。」

勝久(メッセージ)「アホか、こんなにポカポカ陽気だと言うのにその発言こそ撤回しろや。それで?お前様が送り込んで下さった「助っ人」ってどなたなんですか?」


 「お前様」と言う言葉や敬語を使う何となく嫌味ったらしさが垣間見える、ただ事態はそれ所ではない。


神崎(メッセージ)「実はこの前松龍で吞んでた時に文香ちゃん達が後輩ちゃん達を紹介してくれてね、いい子達だから勝久も気に入ってくれると思うんだけどな。」

勝久(メッセージ)「お・・・、お前って奴はいつの間に・・・!!!」


 勝久が携帯と睨めっこしている間に3人も女性が増えていた、どうやらこの3人が神崎の言う「助っ人」の様だ。


文香「3人共悪いね、折角の休日なのに。」

後輩①「大丈夫ですよ、どうせ私達暇してましたし。」

後輩②「それにまた「あの神崎さん」に会えるんですよね、楽しみで仕方ないですよ。」


 まさか「あの神崎さん」と呼ばれているとは・・・、神崎が女性達に与えたインパクトはかなり強かった様だ。しかし勝久からすれば目の前にいる女性のインパクトの方が最もらしい、髪がまさかの緑色。


後輩③「それにしてもこんなに食材買ってどうするんです?文香さんの家でお料理を作って現場に向かう感じですか?」

文香「いえ、松龍の厨房を借りる事になっているの。夕方の営業前だから使って良いって龍さんが言ってくれてさ。」

後輩①「それと・・・、後ろでずっと携帯を睨んでいる人ってお知り合いですか?ずっとついて来てますけど。」

美恵「本当ね、勝久さん、この3人を紹介させて頂けませんか?ずっとついて来ているだけなので周りから見たらストーカーみたいになっているみたいでして。」

勝久「あ・・・、いやすみません。えっと・・・、そちらの方々は?」


 勝久は携帯をポケットに入れて3人の後輩たちを優しく手差しした、因みに3人も文香や美恵と同じく給食センター(ではなく刑事課)の人間で先に先輩達が口止め等の根回しを行っていた。


文香「左から傘倉 花(かさくら はな)、小芦瑠璃香(こあしるりか)、そして緑の髪の子が草森奈津(くさもりなつ)です。一緒に仕事をしている子達で皆料理上手なんですよ。」

勝久「それは心強い、是非皆さんのお料理を楽しませて下さい。」


 スーパーから数分程歩いて6人は満開の桜の木に囲まれた松龍(マンション)の駐車場に到着した、店に入ると何故か場所取りをしているはずの神崎の姿が・・・。


勝久「お前何やってんだよ。」

神崎「さっきなんだけど文香さんがここの桜も綺麗だって教えてくれてね、相談してここで花見をする事になったんだよ。」


 そんな中、厨房の方から文香を中心とした女性達の笑い声が・・・。


文香「ちょっと花、あんたまた馬鹿みたいにステーキ肉買ったね!!」

花「良いじゃないですか、安かったし大好きなんですもん・・・。」

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