第2話 聖女マリア覚醒す
翌朝王都中央広場には中心部にひときわ高いステージが
作られていた。聖女マリアの斬首刑を人目に晒そうとする
悪趣味極まる、王子一味の晴れ舞台になる予定だった。
ガーンゴーンと大聖教神殿の鐘が打ち鳴らされる。
舞台の上に聖女マリアが後ろ手に縛られて中央に追い立て
られる。よろよろとよろめき、跪いてしまった。
「これより大悪女マリアの公開処刑を執り行う」
大神官グレーンが口上を述べる。
「この女マリアは聖女と言う称号を良いことにして秘密裏に
この国を滅ぼそうと画策していた。有ろうことか国王陛下
のお命を奪おうとしていたことが判明した、極悪非道の
大悪人である。よって只今から斬首刑を執行する」
広場中に集まった民衆の罵詈雑言が聖女マリアに浴びせ
られる。マリアは俯いて震えて聞いていた。
死刑執行人の巨躯の兵士が幅広の大剣を持って壇上に
上がった
民衆の歓声がますます大きくなっていく。
兵士が大剣を振り上げた時雷光がその大剣に落ちて兵士が
はじけ飛んで口から泡を吹いて痙攣している。
一方で聖女マリアには温かい光が降り注ぎ全身を覆った。
「女神様だ!」誰かが叫んだ。
「聖女マリア様に女神様の祝福が寄せられたんだ」
マリアの全身が神々しく輝いている。
民衆は思わず正座して
その中で立ったまま聖女の悪口を言い続ける者達が30人位
いた。何故か声も体も震えている。
項垂れていた聖女マリアが頭を上げて透き通るようなしかし
ずっと遠くまで届く綺麗な声で言った。
「私を、覚えも無き罪人にでっちあげて亡き者にしようとする
愚か者共に告ぐ。私を悪女にしたいのなら望み通り悪女になって
あげましょう。私を死刑にしようとした者とそれに協力した
者共に一人残らずこれより3日の間死ぬ様な苦しみ痛みを与えよう。
魔人族殺しの罰である。安心せよ決して殺さぬ。三日三晩
死にたくなるような苦しみを味わうが良い」
常人にとっては死よりも恐ろしい罰である。
王宮内の王子他一味の耳にもマリアの声が届いていた。
マリアは続けて言った。
「私はこの国に加護を与えることを止める。天変地異の対処
も魔物の襲来にも手を貸さぬ。五穀豊穣も与えぬ。
これまで私の居なかった国と同様になるだけだ。
他の国に出来てこの国に出来ぬわけが無かろう。病気の治療も
私はしない。他の国から薬を買って。治療法を学ぶが良い」
「但し心正しき者たちには魔物に襲われない防御力を与えよう
10日飲まず食わずでも生き抜ける力を与えよう。望むなら
私がこれから向かう国への同行を許そう。
ではこれより罪人共に罰を与える。何ともない者は心正しき
者と認定されたものと思って良い。私と一緒に行くか
この国に残るか自由にするが良い。
私はこれより境界の壁の外に向かう。明後日の朝まで待とう。
朝9時には遠い国に向かって出発する。では罰を行使する」
その途端、あちこちで苦しみだした。その者たちは多くが
人間に化けていた魔人族だったが、中には大神官のように、
悪しき心根の人間も多数含まれていた。
王宮内では人間の王子や、正体がサキュバスだったメアリー
などが入り乱れて苦しみに七転八倒していた。
聖女とは人間の心正しき女性の肉体を借りて女神の魂が
宿った者なのだ。
人間と違って神様は迷ったり躊躇したりしない。
だから罰は即座に下され実行された。
但し、心正しき者の救済案は人間のマリアの優しさによる
ものだった。神なら迷うことなく一人残らず天罰を与えて
いたことだろう。
聖女マリアが壁の外に出た時馬車がすぐそばに来た。
辺境国と呼ばれるアルタイル王国とベルフ王国の国王が用意
した馬車だった。
「お世話になります。ヨデム様、ジールス様」
「こちらこそよろしくお願いします。聖女マリア様」
昨夜のうちに牢獄にとじ込められた聖女マリアとヨデム国王が
秘密裏に打ち合わせしておいたスケジュール通りの事だった。
続く
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