第2話 帰宅途中に起こった出来事
――今日、いつものように私はバスで帰宅していました。バスを最寄りのバス停で降りると、家までは徒歩で十二、三分です。主にバス通りと住宅地ですが、夕方の六時を過ぎると、冬の初めの今の時期はもう薄暗く、住宅地は人通りもあまりありません。
住宅地の途中に小さな広場があります。小さな花壇があって、ベンチがある場所です。そこを通った時に、何かゴトゴトと物音がした気がしました。よく見ると広場の入口の隅に、木箱が一つ置いてあります――
「うわっ! 今、先生、添削しましたか? すごく文章が本格的になりました! 同時に怖さが甦ってきてヤバいです」
「でもこの位の事を怖がって帰って来たんですか? 音の原因も確かめずに?」
「だって木箱ですよ。怪談の中では、木箱の中に入ってる物は、たいていヤバいものです」
「そんな変な思い込みや先入観は捨てましょう」
「先生、実はこれで終わりではないんです。この続きがあるんですよ」
「続き?」
「この続きを聞いたら、先生も、そこへ行きたいとは絶対思わなくなるはずです」
「僕は理由も分からず怖がったりしないので」眼鏡の縁が冷たく光った。
「先生って、本当に怖いものがないんですか?」私はふうっとため息を付いた。確かに、どんな怨霊もゴーストもこの先生からは逃げていきそうだ。
「じゃあ言いますけど、私だって音の原因を探ろうと、その木箱に近付いたんですよ。原因が分からないままだったら、夜寝てても気になってしまうと思ったんで。それで、そうっと木箱に近付いたら、そこから小さな手が出ていたんです」
「小さなってどの位の大きさですか? 手と言っても、それは人間の手なのか、動物の手なのかも教えてください。そして木箱の大きさは?」
先生はまるで職務質問中の警察官のように尋ねてきた。職務質問を受けた事はないけど、たぶんこんな感じだ。
「小さいは小さいという事。私の手の四分の一もありません。人間みたいな手です。というよりあれは人形の手です、きっと」
今度は北嶋先生の方が、ふうっとため息をついたけど、それは私に呆れた時のため息だった。でも私が怖がるのは当然の事なので、私は、そんなため息をつかれるような覚えは全くない。少なくとも今回だけは。
「とりあえず、もっと暗くなる前にさっさと現場へ行ってみましょう」
「え、え〜! ちょっ……」
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