第13話 告白

月日は流れ寒さが感じられる季節になった。

僕は今まで翔馬君にすら打ち明けられていない自分の事を話そうと決心した。


「寒くなって来たなー。冬になると思い出すぜ。冬樹とここで会ったあの日の事」


「おかしな廃墟マニアさんと出会ったあの日の事か」


「そーそー、ってなにがおかしなだよ!」


そんないつも通りのツッコミをされ和やかな空気になる。


少し間が入ったあと、僕は真剣な顔で喋りかけた。


「僕があの日、どうしてここに居たか聞かないの?」


「おかしいでしょ?真冬の夜に真っ暗な廃墟の屋上で下を眺めてる人って。明らかに異常者だったはずだよ。」


「異常者って、それ言ったら俺だって異常者になるじゃんか。まあ異常と言えば異常か!」


ぷっと翔馬くんは笑った。どうやらまだ笑いに変えようとしてくる。


「僕が本当に翔馬くんと同じ廃墟マニアにでも見えたの?…」


と、ずっと疑問に思っていた事を尋ねる。


少し間が入ったあと彼は答えた。


「…俺と同じだと思ったよ。」


さっきまでへらへらしていた翔馬くんが真面目な顔をしだした。僕は


ゆっくりと呼吸をし、息を整える。


「…僕……あの日…」


詰まりそうになりながらも…ゆっくりと、ゆっくりと彼に打ち明けた。


「僕はあの日、死のうとしてたんだ。」


そう一言言うと彼は優しく微笑んで言った。


「うん。知ってたよ。

話してくれてありがとう」


「えっ…?」


少し困惑した。同情する訳でも軽蔑する訳でもない彼の反応があまりにも予想外で。


…翔馬くんはあの時から、出逢ったあの日から僕が死のうとしていた事を察していたんだ。


それを知っていながらも何も分かってないように振舞って、僕と遊んでくれていたんだ。


僕の口から打ち明けるその日までずっと知らないフリをしてくれていたんだ。


翔馬くんのそんな優しさに僕は思わず涙が溢れてしまった。


僕、今までどれだけ翔馬くんに救われてきたか


「うっ…ううっ…ありが…ありがとう…」


一言お礼を言うだけでも時間が掛かるほどの嗚咽が、息が苦しくなる程涙が出た。


ずっと僕が打ち明けるその日まで待ってくれていたんだ。


楽しい思い出を作っていこうと言って僕に手を差し伸べてくれたんだ。


僕が酷いいじめを受けてきた事など赤裸々に話した。


翔馬くんはただ静かに聞いてくれていた。


話が終わるまでずっと、ずっと。

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