第11話 観覧車の景色
観覧車は初めて入る。思ったより狭かった。
ゆっくりと上がっていき、遊園地全体が見下ろせる程高くなった。
「綺麗だな。ほら、遠くの街まで見える」
「本当だ。すごい綺麗だね。」
「晴れてたらもっと綺麗に見えたんだろうな」
「確かにそうだね。でも僕は曇りでも雨でも全然いいんだ。」
「なんで?」
「翔馬くんが一緒にいてくれると、どんな景色でも綺麗に映る。それが僕の記憶の中にずっと残るから。」
「…!!」
「ふふっ、それは俺もだよ、冬樹。」
翔馬くんは目を細めて優しく微笑んだ。
観覧車はあっという間に終わってしまい、閉園の時間も間近になってきた。
「ちょっとトイレ行ってくるわー!ここで待ってて」
そう言って翔馬くんはそそくさと走っていった。
(そういえば翔馬くんのあの笑顔は初めてみたな。)
(あんな優しい笑顔を向けられるんだ。
いつもやんちゃに笑うから不意にドキドキした)
(確かに翔馬くんは特別な友達で)
(友達……?)
自分に問いかけた。本当に彼を友達だと、親友だと思っているのだろうか。
友達以上の感情を抱いているのは自分でも明らかだった。薄々自覚はあったけど、確信はまだしたく無かった。
変に意識して気持ち悪いと思われてしまうのが、僕から離れてしまう事を妄想して怖くなるからだ。
自分の恋心に確信してしまった時点で僕は…
彼に対して気丈に振る舞えるほど器用では無い。
「はぁ…」(失いたくないなぁ。)
「はぁはぁ、待たせたな。」
考え事をしているといつの間にか翔馬くんが息を切らしながら戻ってきていた。
そして小さな紙袋を僕に渡してきた。
「これ、土産買ってきた」
袋を開けるとペンダントが入っていた。
「色違いのオソロ。冬樹が青で俺が赤。
遊園地関係ないけど見つけたら欲しくなったんだ。男二人でオソロとかキモかったか?」
「いや、全然。むしろ嬉しいよ。こんなの…嬉しすぎる…」
僕はギュッと握りしめた。大切に。大切に。
「喜んでくれて良かった!俺も嬉しいわ!
そんじゃかえろーぜ!」
僕らは遊園地を後にした。
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