第10話 遊園地
土曜日当日。傘を持ってくか悩むくらいの分厚い曇り空で若干微妙な気持ちになりながらも僕は友達と初めて行く遊園地にウキウキしながら身支度をしていた。
待ち合わせはあの廃墟。
廃墟で合流して近くのバス停でバスに乗り、駅まで行く。
電車の窓から見える大きな観覧車が僕たちの気分を高ぶらせた。
「やべー!ワクワクしてきたー!早くジェットコースター乗りてー!」
駅を出た途端、早く入ろうと言わんばかりに翔馬くんに手を引っ張られ、僕達は無事遊園地へ入場した。
最後に遊園地へ行ったのは6歳だっけか。曖昧な記憶の中その時は父さんもまだ居たなと少し当時を思い出す。
5年前父さんは母さんと離婚し、母国へ帰った。それっきり会っていない。
(父さん…元気かな。)
「おい、何ぼーっとしてんだよ。早く行くぞ!」
翔馬くんは強引に僕の手を引っ張ると、1番激しそうなジェットコースターの列に並んだ。
もうすぐ自分達の番が来る。
翔馬くんは顔色を変えて話しかけてきた。
「ちょ、これやばくね…さすがにやばいって…… やっぱ一旦なしにしね……?」
走行中のジェットコースターから聞こえてくる大きな悲鳴がより恐怖心を煽ってくる。
「さっきまでノリノリだったくせに」
「遠くから見る分には楽しそうに見えたけどいざ自分が乗るってなると…やべぇな。」
怖いもの知らずな翔馬が怯えた顔するのは中々見れないので新しい一面が見れて少し嬉しい。
その後しっかりジェットコースターに乗った。
「ははは!叫びすぎだよ。はは!」
「……死ぬかと思った、てか冬樹笑いすぎだろ!!」
「だって物凄い声で叫ぶんだもん面白すぎるでしょ!あははは!」
「くっそー…ジェットコースターなんて二度と…」
「ほーら!次のジェットコースター乗ろ?」
そう言うと翔馬くんの手を強引に引っ張り、僕らはまた別のジェットコースターの列へ向かった。
時間はあっという間に過ぎていき、閉園の時間も迫ってきた。
「乗りたいものは全部乗り尽くしたなー。あと1個くらい乗れそうだけどなんか乗りたいのあるか?」
「観覧車。観覧車に乗りたいな」
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