第7話 園崎尊
俺は園崎尊。大企業の社長息子だ。こんな辺鄙な中学校へ通っているのは庶民の考え方や価値観を学べるいい場だからだそうだ。
中学入学したてのある日、強制的に部活動を見学させられ先輩に対し、下手でつまらない。俺が1ヶ月やりこんだ方が素質ある。この3年間時間の無駄でしたね。と感想を述べると、
俺の態度が気にいらなかった先輩が俺を呼びつけ殴りかかってきた。
庶民は図星をつかれるとすぐに感情的になり集団で人を攻撃してくる事を学んだ。
「ちょっと、何してるんですか!」
「それ以上殴ったら先生呼びつけますよ!」
ッチ!と舌打ちをしながら上級生は去っていった。
先輩を止めたのは先生でも無く同じ上履きの色をした生徒だった。
大柄な先輩に1人で立ち向かうその姿が今でも忘れられない。
「大丈夫ですか?血が出てる、応急処置ですが血だけとめさせて下さい。」
そう言うと自分の綺麗なハンカチで俺の血を拭った。
俺より一回り小さく、白髪に近い金髪で目は大きく水色の瞳、目鼻立ちもハッキリしていて美しかった。
「これで止まりましたね。でもすぐに消毒して下さいね。これはただの応急処置ですから!」
「…ハーフ?」
「え、?あ、ああ…そうだと思い、ます。」
「綺麗だね。」
「はは、ありがとうございます。一応、男ですけど」
「分かってる。あと、処置ありがとう。同級生だし敬語はやめてよ。俺は園崎尊っていうんだ。君は?」
「はは、そうだね!僕は相堂冬樹。よろしく!」
それから俺は相堂冬樹を見かけるたびに目で追ってしまう。どんな友達と話しているのか、周りにいるやつはどんな奴なのか、クラスが違うと彼に関わる事が難しい。
そのうち俺は相堂冬樹に対して異常な感情が芽生え始める。
いや、一目見た時からもう芽生えていたのかもしれない。
もっと関わりたい。
俺だけが相堂冬樹の唯一無二の存在になりたい。
父の会社の社員の息子が同級生だと知った。その息子は俺が大企業の社長息子だと周りに言いふらし、俺はいつしか周りから興味を持たれるようになった。
頭よく成績がいい、運動や楽器なども全般できる、出来ないものなんて何も無い。おまけに社長息子。そんな俺に周りが群がらないはずが無かった。
ーーーーーーーー
これを利用しよう。
2学期の始まり、まだまだ暑い夏の放課後
俺は父親の部下の息子に声掛けた。
「相堂冬樹って知ってる?1組の。そいつが俺の大事な物を盗んだんだ。」
「自分の目で確かめたんだ。確かに1組の相堂冬樹だった。盗まれたものは大した事ないからいいけど、俺の所有物を盗まれた事実が、俺がなめられていることが気に入らないんだ。」
「何が言いたいか、分かるよね?」
「…はい。」
ここから俺の王国が始まる。
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