第5話 居場所

僕と翔馬くんは頻繁にあの廃墟の屋上で話すようになった。


翔馬くんは隣町の中学生で僕と同い歳の13歳だった事。よく喧嘩を起こして怪我をしてくる事。


話をしているうちに僕と翔馬くんは仲良くなっていた。


「なあ、冬樹の事も聞かしてよ」


僕が学校で酷いいじめにあっている事はまだ翔馬くんに言う勇気は無かった。


母子家庭で生活がギリギリなこと。学校があまり楽しくない事などを話した。


「そうか。話してくれてありがとな。これからは楽しい事が話せるように2人でたくさん楽しい事しようぜ?!色々挑戦して冒険しよう!」


そんな事言ってくれる人、今までいなかった。

僕は初めて、嬉しくて泣きそうになった。


翔馬くんと出会ってから僕には希望ができた。

学校でどんなに酷いことをされても、僕には居場所が出来たから、我慢できる。


今日も翔馬くんとあの場所で会う。だから今日も頑張れる。



ーーーーーーー



「最近アイツをいじめても手応えないんです。」


「どういう事」


「普段は泣いたり辛そうな顔したりしてたのにここ最近、何をしても無反応だったり、反抗的な目で睨みつけてきたりしてくるんですよ」


「へぇ…なら、もっと懲らしめてやらなきゃね?」


「で、でも…やれる事は全部…」


「君の父親のクビなんていつでも切れるんだけどね」


「……!!」


「居場所なんかどこにも無い事を分からせてやってね?」


肩まで伸びているであろう赤黒い髪の毛は後ろに綺麗に束められていて、笑顔だけど目の中に一切の光もない男が優しげに笑う。

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