芦屋まで歩いた
三ノ宮駅でしばらく休憩してから、大阪に戻るため歩き始めた。JRの線路に沿って戻ればやがて大阪方面の電車に乗れる駅に着くはずだ。
駅の賑わいから思ったより日常が戻っているのでは、とふと思った。しかし、線路わきの道を歩き始めてすぐに、倒壊した家屋が道を塞いでいて先に進めなくなった。やはり、破壊された都市の状況は深刻だった。
線路に沿って歩くのをあきらめ、少し北に歩いて山手幹線という大通りに出た。
この後は3人が3人とも、ほとんど話をせず黙々と歩いた。三ノ宮駅に着いた時点でだいぶ疲れていたので、ただ「帰る」ということだけを目的に、ひたすら歩いた。
どの道を通ったかは今では十分に思い出すことはできない。2時間以上歩いたのは間違いないと思う。
そうして、JR神戸線の電車が動いている芦屋駅に着いた。あたりはすっかり暗くなっていた。
駅に着いて、電車に乗って座席に腰を下ろし、それでようやく一息ついた。
今地図で測ると、阪神の青木駅から三ノ宮駅まで直線で8kmほどある。三ノ宮駅から芦屋駅までは11kmだ。摩耶大橋を渡って遠回りしているから、間違いなく20km以上歩いたことになる。電車が十分に復旧していないから歩く距離が多くなるのは分かっていたが、これはさすがに歩きすぎたと思った。
歩くといえば、高校に入ってすぐに年中行事の強歩大会があった。全校生徒が50kmほどを1日かけて歩くスポーツイベントだ。1年のときは「人間がそんなに歩けるのだろうか?」と思ったが、意外に歩けてしまうもので、3年間毎年参加した。
他に、大学のときに群馬の山をいくつか歩いたりした。
そういった経験があるので、歩くことそのものはあまり不安はなかったが、さすがに勢いで歩けるのは2時間ぐらいで、それ以上歩くとどうしてもつらい。
行き帰りに歩くとはいえ、既に日常に戻っている大阪に宿があったのは、やはり恵まれていたと思う。とにかく東に歩けば電車が動いていて、それで帰れる。歩く距離が長いだけで、不安はまったくなかった。
長距離歩いた経験がその後また活かされる時が来た。2011年の東日本大震災だ。電車が止まって家に帰れなくなって夜の東京を長距離歩いた。これは気持ちもつらかった。話すと長くなるので、これについてはまたいつか。
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