三宮駅へ

 摩耶大橋を渡り終えてから、ここまで来たのだからと、三ノ宮駅まで行くことになった。

 どのルートを歩いたのかは、今からはよく思い出せない。

 写真を再確認すると、磯上という地区で大阪市水道局が水道の復旧工事をしているのを撮影している。次に、こうべ市民福祉交通センターとその前に山積みされた段ボール箱、磯上公園に積み上げられた瓦礫を撮影していた。神戸の市街地では、磯上公園の南側の道を西へと進んだようだ。

 震災の写真で、ビルが横倒しになった光景が知られているが、2月までに撤去されたらしく、もうそのビルは見当たらなかった。

 高層ビルは、壊れたものと、見た目なんともないものとがあった。

 震度7の激震に襲われたことを考えると、意外に無事な建物が多いと思った。

 特に新しいビルは損傷が少なかった。神戸市役所がその典型で、古い庁舎は建物の途中の階が潰れて大破していた。しかし、隣の新庁舎の高層ビルは何事もなかったかのようにまっすぐに立っていた。


 三ノ宮駅は市役所から続く大通りを北上して到着した。駅の西側でビルが大破した写真もよく知られていた。あの銀行の看板が目立っていたビルは、自分が行ったときには解体の途中だった。

 駅前のデパートの角から歩道橋に上がり、三ノ宮駅のペデストリアンデッキに到着した。ふり返ってデパートの方を見ると、ある程度壊れていて閉鎖中だった。

 線路の高架や、JRの駅舎はそれほど壊れているようには見えなかった。

 阪急の駅が大破していると聞いてはいたが、こちらからはよく見えなかった。


 三ノ宮駅の周りは、人であふれていた。


 この頃は山陽本線・神戸線が三ノ宮駅より西側で運行を再開していた。西側に住む人々は、電車でここまで来ることができた。

 電車で手軽に来られるが、駅の周りは壊れた建物ばかりで、被災地の光景がまだ残っていた。

 このため、現地の様子を一目見ようと多くの人が来ていた。


 物見遊山とか野次馬とか、言葉はいろいろある。しかし、災害の現場を直接見るということは悪い経験ではないとも思う。仕事で来ているとはいえ、自分たちも同じようなものだ。


「見に来るのは分かるけど、駅前でピースして写真撮るのはないよな(苦笑)」


 会社に戻ってから、酒の席でそういう話になった。現地の人の気持ちを考えるともっともな話だ。とはいえ、直接そういう人にとやかく言える道理も、自分たちにはないのだけど。


 被災者の迷惑にならないよう心がければ、現地に行くことは悪くないと今も思う。現地に行かないと分からないことは多い。そして、どんな場所でも、節度を持った行動が求められる。災害現場では、ことさら逸脱が認め難いということは心に留めておきたい。

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