第4話:一奈(いちな)

マカロンが僕の部屋にいることでプリンちゃんは半分ノイローゼ気味に

なっていた。

イライラして僕にまで八つ当たり・・・僕が何したって言うんだよ。


このさいマカロンには出てってもらったほうが僕の部屋に平和が戻って

きそうだった。


で、そんなある日。


「こんにちわ〜・・・お兄ちゃんいる?」


ピンポンも鳴らさずいきなり入ってきた女。

まるで自分ちみたいに、ずけずけ僕に部屋に入り込んできた。


で当然プリンと、ばったり出くわすわけで・・・。

はじめて会った猫同士みたいに敬遠し合う。

片方は本当はインコだけど・・・。


「あ、一奈いちな・・・どうした急に、滅多に来ないのに」


「やっほ〜お兄ちゃん・・・学校がお休みだから出てきちゃった」


一奈ってのは僕の妹。

本当の妹・・・本当の妹なんだけど、実は養女。

僕の父親の親友だった人の子供だったんだ。


父親の親友夫婦はふたり揃って事故でお亡くなりになって、身寄りがない一奈が

乳児院に預けられるって話を聞いて、父親は、一奈をほうっておけず情にほだされて、うちで引き取ってしまった。

だから彼女は「棚橋 一奈たなはし いちな」になった。


だから僕と一奈は血が繋がってないんだな。

戸籍上、社会的表向きは兄妹なんだけどね。


一奈はプリンを見るなり


「誰、この人?・・・」


「誰って・・・あなたこそ」


「あなたこそ誰?」


「私はプリンです」


「それ、あなたの名前?」


「そうですけど・・・」


「まあ美味しそうな、お名前?」


「あ〜プリン、ごめん・・・こいつ僕の妹」

「一奈って言うんだ・・・本物の妹だよ」


「そうなんですか・・・お邪魔虫が去ったと思ったら、またお邪魔虫? 」


「お邪魔虫ってなんですか?」


「まあまあ、ふたりとも仲良くしなよ・・・」


どうやら火花バチバチみたいな、プリンと一奈、最初っからこれだと先が

思いやられる・・・。


「一奈、何にしに来たんだよ」


「それなんだけど、あのね私、来年高校卒業するから、そしたら上京して

くるつもりだから・・・」

「ひとりで暮らすつもりだったけど、マンション借りたら家賃とかもったい

ないでしょ 」


「で、閃いたの・・・お兄ちゃんちにお世話になろうって・・・ 」


「なろうってって・・・一奈・・・そうか大学に進学するんだった」


「え〜ちゃんと教えたよ、大学合格したよって」

「忘れたの・・・ひどい、大事な妹のことなのに」


「あ〜ごめん、ごめん」


「で、それよりなに?・・・僕のところに?来るわけ?」


「と思ってその報告に来たら・・・いつの間にか彼女作ってるし」


「だな・・・そう言うわけだから、悪いけど他にマンション探してくれる?、な」


「ヤダ・・・私、そのプリンちゃん?なんかに負けないもん」


「負けないからって、なに言ってんの?」


「プリンちゃんは今から、私のライバルになったの」


「ライバル?って・・・なんの?」


「恋のライバルだよ・・・お兄ちゃんは誰にも渡さないから」


およよ・・・それは耳を疑うような予期せぬ一奈の言葉だった。


「恋のライバルってなに?」


「文字どうり恋のライバルだよ」


「あのな・・・一奈いちなは僕の妹だからな、恋ってなんだよ」

「なに意味不明なこと言ってんだよ」


「お兄ちゃんこそ何言ってんの?」


「わたし〜子供の頃からお兄ちゃんのお嫁さんになるって決めてたんだからね」

「今でも、そうなりたいって思ってる・・・」


それを聞いたプリンちゃんは、まじですかって呆れた顔をした。


「いや、いや、いや、兄妹きょうだいで結婚なんてありえないだろ?」


「なんで?、私たちほんとの兄妹じゃないじゃない」


「だってさ、戸籍上じゃ兄妹なんだから」


「そんなのただの紙切れでしょ」


「でも世間体が・・・」


「なに、じじくさいこと言ってんのよ」


「あの〜ふたりとも私を無視して話してません?」


「あ〜プリンちゃん、ほったらかしてごねん」

「気にしなくていいからね、今のは妹の、たわごとだから」


「たわごとってなによ」

「それよりもう襲ったの?」


「襲った?・・・襲ったって?・・・なに?襲ったって」


「お兄ちゃんがプリンちゃんを・・・だからもうエッチしたのかって聞いてるの?」


「何、言ってんのおまえ・・・」


「その返事次第で状況が大きく変わってくるの・・・」


「ねえ、エッチしたの?」


「しましたよエッチ・・・ういちゃんと、とっても濃厚で超ハードなエッチ」


「え?プリンまで・・・濃厚って、超ハードって?・・・」


「うそ・・・もうやっちゃったの?お兄ちゃんと」


「初ちゃんは私の恋人だもん、当然でしょ」


プリンは勝ち誇ったように言った。


つづく。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る