第2話:私がピーちゃんです。

ピーちゃんが飼い主さんちに帰ってから数ヶ月経ったある日、僕の部屋の

チャオムが鳴った。

宅配便かなって思ってドアを開けたら、そこに一人の女の子が立っていた。


その子は僕を見て恥ずかしそうに微笑むと軽くお辞儀をしてこう言った。


「こんにちは・・・私、愛川プリンって言います」って・・・。


「え?は?・・・愛川?・・・どちら様の愛川さんですか?」


「ですから愛川プリンです」


「愛川?・・・プリン?・・・え?・・・プリンって?外人さん?」


「え?、忘れたの?私のこと?」


「いや〜忘れたって言うか・・・僕の身の回りで知ってる女の子って言ったら、

妹の「一奈いちな」くらいなんだけど・・・」


「もう、じれったい・・・私です、ピーちゃんです」

「あなたのところにいた時の名前がピーちゃん」

「あなたが私につけたんでしょ、ピーちゃんって」


「ピーちゃん?」

「ピーちゃんはインコだけど・・・パステルカラーレインボーって

言う珍しいセキセイインコなんだ・・・今頃元気してるかなピーちゃん」


「元気です・・・あなたの目の前にいます」


「君って変わってるね・・・君、どこからどう見たって人間の女の子でしょ」

「っていうかさ・・・なんでピーちゃんのこと知ってるの?」


「もう、ほんとに鈍い人・・・ピーちゃんは私だって言ってるでしょ」


「・・・・・また、また、また〜・・・」


「ありえないよね・・・」

「インコが人間になるなんて・・・ありえないでしょ」


「ありえるの・・・信じて、ういちゃん」


「おえ、なんで僕の名前知ってんの?」

「自分で教えてくれたんでしょ・・・よろしくねって言ったじゃない」


「それよりいつまで玄関に立たせとく気ですか?」


「いや〜見知らぬ人は家に入れちゃいけないかと思って・・・」


「もう玄関まで入ってます」

「それに私はういちゃんのことは、よ〜く知ってます」

「もう・・・いいから、ちゃんと私の話を聞いて」


「ん〜まあじゃ〜中に入って・・・そこのソファにでも座って・・・」


「私のこと信じてくれないと困ります」


「にわかには信じがたいかも・・・君がピーちゃんだって証拠でもあるの?」


するとその愛川って名のった女の子は自分の上着を脱ぎ始めた。


「なにやってんの・・・待て待て、ここでそれはマズいでしょ」


「今、証拠でもあるのかって言ったでしょ?」


愛川さんは上着を脱ぐと左腕をあげて僕に見せた。


「ほら、これが証拠」


見ると、ちょうど脇の下あたり・・・そこに痛々しい傷跡が残っていた。


「この傷、初ちゃんが消毒して薬塗って治療してくれたんだよ」


「まじで?・・・君、ほんとにピーちゃんなんだ・・・」


「だから、さっきからずっとそうだって言ってるじゃない」


「ああ、その傷・・・分かった、信じる・・・信じるよ・・・ってか

こんなことあるんだ」

「なんかさ動物が人間に化けるって昔話みたいだね」


「化けるって人を妖怪かなんかみたいに・・・」


「で?そのピーちゃんが、なんで僕のところ戻ってきたの?」

「せっかく、おばあちゃんちに返してあげたのに・・・」

「おばあちゃんは?どうしたの?」


「それなんだけど・・・あの後ね、初ちゃんが私をおばあちゃんちに返しに来て、

しばらくしてから、おばあちゃんが亡くなっちゃったの」

「で、私はマカロンと一緒に親戚の家にもらわれて行くことになっちゃって」


「マカロン?なに?、そのマカロンって?・・・お菓子?」


「私と一緒に飼われてた男の子のインコ・・・」


「ほ〜ピーちゃんの彼氏?」


「違います・・・マカロンは私のタイプじゃないです、迷惑です」


「で、親戚にもらわれて行ったんだけど、そこの家族が全員最低最悪家族で・・・

私は餌ももらえないしケージは掃除してもられないしで、それでマカロンと

結託して脱走したの」


「で自由を手に入れたマカロンは勝手にどこかへ飛んでいっちゃって」

「飛べない私は初ちゃんのところに行くしかないって思って、こうして戻って

来たの」


「ね、分かってくれた?」


「なるほどね・・・分かった・・・そういうことならここにいていいよ」

「でもさ・・・それならなにも人間になんかならなくてもインコのままでも

よかったんじゃないの?」


「あのねインコのままだと初ちゃんのお世話できないでしょ」

「それに怪我を治してくれて可愛がってくれた恩返しだってできないでしょ」

「私、これでも初ちゃんのタイプの女性になったつもりなんだけど?」


「あ〜なるほどね・・・納得」

「間違いなく、たしかに君は僕のタイプ・・・どんぴしゃ」

「いい線行ってると思う・・・」


「でさ、僕は君のことなんて呼べばいいの?」

「ピーちゃん?それともプリンちゃん?」


「おばあちゃんちでプリンって呼ばれてた時の方が長いからね」

「せっかく初ちゃんがピーちゃんってつけてくれたんだけど、プリンって呼ばれ

慣れてるって言うか・・・その方がしっくり来るね」


「そなんだ・・・じゃ、今日からプリンちゃん、って呼ぶから君のこと」


ん〜まだ僕は疑心暗鬼?・・・現実問題インコが人間になるってことある?

鶴の恩返しじゃあるまいしさ。


つづく。

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