パステルカラーに恋して。

猫野 尻尾

第1話:傷ついたインコちゃん。

僕は「棚橋 初たなはし うい」歳は23才。

社会人一年生・・・今は郊外のこじんまりした賃貸マンションの二階に

住んでる。

仕事は広告デザインの会社に勤務。


で、僕は休日の土曜日、久しぶりに原付スクーターで街に買い物にでかけた。

服や小物とか食材を買ってブヒブヒーッてマンションまで帰ってくると、

階段の上がり端に一羽の鳥が・・・。


「あ、インコ?」


一羽のインコが、飛べずにバタバタもがいていた。

頭の色が薄い黄色で体は薄いブルー。


セキセイインコだ。

僕は子どもの頃セキセイインコを飼ってたころがあるからすぐ分かった。


インコなんで自然の中にはいないんだから、きっとどこかの家で

飼われてたインコがカゴから逃げてきたんだって思った。


手で持ち上げてみると、どうやらどこか怪我をしてるみたいだった。

ここまで飛んできて降りたところを、もしかして猫にでも襲われたのかな。


当然、そのまま放ってなんかおけないよね。


僕はインコちゃんを部屋に連れて帰った。

よく見ると左の羽の付け根に、血が少しにじんでいた。

だから僕は、傷口を消毒して薬を塗って手当てをしてやった。


インコちゃんを入れるケージなんかないから捨てようと思っていた

段ボールにタオルを何枚か敷いてその中にインコちゃんを入れた。


そのインコちゃんがどんな種類のインコちゃんなのか気になって調べてみた。

そしたら一般的にレインボーと呼ばれイエローフェイスのオパーリンって

品種ってことらしい。

このインコちゃんはその中でも全体に淡い色合いのパステルカラーレインボーって

言うらしいことが分かった。


それから僕の献身的介護によってインコちゃんの傷は癒えて日ごとに元気に

なっていった。

飼われてたんだろうなってこともあって人懐っこいインコちゃんだった。

僕にもすぐに慣れてくれた、


でも一度痛めた羽はちゃんとちゃんと治らず羽ばたくことができなくて

インコちゃんが部屋の中を飛ぶことはなかった。


だからインコちゃんは器用に自分の足とクチバシを使って僕の体をつたって

肩までやってきてクチバシで僕の耳をかじってよく遊んでいた。

しかも人の耳元で訳わかんない声で、いっぱいしゃべってくれた。


僕はすっかりインコちゃんが好きになった。

オスだかメスだか分からなかったけど僕はそのインコちゃんに「ピーちゃん」

って名前をつけた。


ピーちゃん、僕の名前は「うい」って言うんだ、よろしくね。


飼ってると情が湧いてしまって僕はピーちゃんをこのまま僕の家族にしようかと

思った。


ある日、原付で近所のコンビニへ出かけた時、コンビニのガラスに張り紙が

してあって


「こんなインコちゃん探してます」


って書いてあってその下にインコの名前なんだろう。

「プリンちゃん」って書いてあった。

でその名前のさらに下にインコの写真が掲載されていて、その写真を見たらば・・・なんとまあ見たことなるようなインコだよ。

僕はすぐにピーちゃんだって分かった。

珍しい色合いはピーちゃんと同じ。


そうかピーちゃんを探してるご家族がいるんだ・・・。

ピーちゃんを返したくないけど、ピーちゃんは元々よそ様の家で飼われてたインコ。

返すべきなんだろうな。


で、僕はその張り紙を写メしてピーちゃん用の小ぶりのケージを買って

その中にピーちゃんを入れて飼い主さんのところにピーちゃんを返しに行った。


その家の玄関のドア横を見ると「愛川」って表札がかかっていた。

チャイムを鳴らすと出てきた方は80才くらいのおばあちゃんだった。


ピーちゃんを見て、「プリンちゃん、プリンちゃん」ってめちゃ喜ばれて、

おばあちゃんに、


「プリンちゃんを見つけてくださってありがとうございました」って、


もういいですってくらい何度もお礼を言われた。


あ〜ピーちゃんのもとの名前は「愛川プリン」ちゃんて言うんだ。

プリンちゃんも家族の元に帰れてよかったんだ。


少しだけ寂しかったけど、なんだかいいことをしたみたいで僕の心は晴れやか

だった。

プリンちゃんとは、お別れだけどご家族と一緒に暮らした方が、あの

おばあちゃんにとっても、あの子にとっても幸せなんだよな。


マンションに帰るとなんだか、部屋の空気が違っていた。

寂しいんだ・・・急にピーちゃんがいなくなって僕の部屋は寂しくなった。


しばらくしたら慣れるよなって思いながら生活していたんだけど寂しい

思いはなくならない。

僕はよっぽどペットショップへ行ってインコを買ってこようかと思った。


そしたらある日、僕の部屋の玄関のチャイムが鳴った。

宅配便かなって思ってドアを開けたら、そこに一人の女の子が立っていた。


その子は僕を見て恥ずかしそうに微笑むと軽くお辞儀をしてこう言った。


「こんにちは・・・私、愛川プリンって言います」って・・・。


つづく。

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