第45話 決戦の時
そして迎えた翌朝。グリフォンに乗り込んだ三人は、上空から塔付近の様子を眺めていた。
鬱蒼とした森のあちこちから、上空にいる三人までモンスターの鳴き声が響いてくる。
「既に見た光景だけど……こうして実際に目の当たりにすると、すっごい怖いね」
「問題ない、すぐに静かになる」
万有は立ち上がり、コスモを展開する。
「ヒュドラ含めて周辺のモンスターは総じて1001体。さて、どれだけ減るかな?」
万有が指を鳴らすと、森のあらゆるところで大きな破裂音が聞こえだす。それから万有はもう一度コスモを展開し、残存数を確認する。
「……3体残った。丁度一人ずつ当たるぞ」
「どこら辺にいるのら?」
「わからん、索敵できるモンスターとか出せないのか?」
「索敵……心当たりはあるのら。ブラインドクロウ!」
ミトラが右手を突き出すと、ミトラの腕に二羽のカラスが止まる。
「コイツは目が見えない代わりにモンスターの匂いを嗅ぎ取る能力に長けてるのら。これから追加で二体のグリフォンを召喚するから、すぐそれに飛び乗って移動して欲しいのら」
「おう」「わかった」
両手を交差させるミトラ。するとグリフォンの横に大きな鷹が二匹現れる。万有と碧がそれぞれ飛び乗ると、鷹はそれぞれカラスを追って飛んでいく。
(……いよいよ、全てが終わらせる時が来た。アレン兄ちゃん、みんな……アタシ頑張るから、そっちで見てて欲しいのら)
体毛をぐっと引っ張り、首をうねらせてこちらを凝視するヒュドラに向けてグリフォンを飛ばすミトラ。
ヒュドラは口を大きく開け、グリフォンに向けて高エネルギーの光弾を連発する。ビームの間を縫いってグリフォンは突き進み、ミトラが飛び降りると同時に全身に雷を纏って突進する。
しかし、グリフォンの突進を喉元にまともに食らったにも関わらず、ヒュドラは微動だにしなかった。
(硬い! 今まで戦ってきたモンスターの比じゃ無い程に!)
地面に着地したミトラは両手を交差させ、一気に六体のモンスターを召喚する。
「超合成獣・グランドキメラ!」
モンスターは合体し、ヒュドラと同じレベルの大きさにまで成長する。出てきたモンスターはこの世の物とは思えない歪な見た目をした、両手両脚を持つぐちゃぐちゃの肉塊だった。
「……別名、災いの獣。ヒュドラ制作の副産物として生まれた、最悪のモンスター。組織にとっての最悪は、この世界に取っての最高だったみたいのらね」
肉塊はヒュドラに組み付き、真ん中の頭を小脇に抱えて頭を何度も殴りつける。
「アタシもかつては最悪の生命だったのら。でも、街の皆がそうでなくしてくれたのら。獣、今度は世界の手によって、アンタがそうなる番のら。思いっきりやれ」
右手から青いエネルギー弾を放出するミトラ。それが肉塊に着弾すると、肉塊は一回り大きくなり、さらに強い力で首を絞める。
負けじとヒュドラももう二本の頭で肉塊の腹に噛みつき、その肉を噛みちぎる。しかし肉塊は微動だにせず、ヒュドラの首を折ってちぎる。
「良し! 残るは二本――」
しかし千切れた場所から新たな首が生え、すでにホールドを解いていた肉塊の腕をすり抜けて耐性を立て直す。
(……要は、三つ同時に破壊しないといけないのらね。となると、もう少しエネルギーを送り込んでもよさそうのら)
再びエネルギー弾を肉塊に撃ち込むミトラ。するとついに肉塊の背丈はヒュドラを追い越し、ヒュドラの頭を三つ同時に抱きしめられるにいたる。
そのまま両腕を膨張させて締め上げる肉塊。その間、肉塊はヒュドラが放つ高エネルギー光線によって背中を貫かれ続けるも、首を締め上げる手を緩めなかった。
「いけ! そのまま絞め殺せ――」
言葉を言い切る前に、肉塊はヒュドラが突きだした尻尾をモロに喰らって穴を開けられ、体勢を崩して倒れ始める。
「まずい!」
ミトラが手を伸ばすと、肉塊は地面に倒れ込む寸前で青い光を放って消滅する。それからヒュドラは、下にいるミトラを視界の真ん中に捕らえる。
(硬い上に手札も多く、攻撃の威力も高くてさらに再生能力も高いとは。完全無欠のモンスターのらね。アレン兄ちゃんがいなけりゃ戦いにすらならなかったのら。でも)
ミトラは両手を前に伸ばし、手首を交差させる。するとミトラの背後に――
「コイツに頼るのはとっても癪に障るのらが、獣だけに忖度するわけにゃいかんのらからね……行け、試作体ヒュドラ」
灰色の、しかし目の前にいるヒュドラと同じ見た目同じ背丈のヒュドラが現れる。ヒュドラは現れた威嚇し、現れた試作体も負けじと威嚇仕返す。
「ヒュドラにはヒュドラを。しかもコイツには、今のアンタにはない毒があるのら。試作品と完成品との差はそれで埋まったようなモノ。心配せずに暴れるのら、試作体」
均衡を破り、試作体はヒュドラの一番右の首元に噛みつく。そして牙から毒を注入すると、一瞬で首全体が紫色に染まってボロボロと崩れ出す。
(自身の毒には耐性を持ってるもんだと思ってたのらけど……そうか、今のアイツは毒がないから耐性も消えてるのらか)
さらに崩れた箇所から首が再生してくる様子もなく、付け根は変色したままとなっている。
(ヒュドラの毒は再生の阻害を行う、つまりこれをあと二回ヒュドラを倒せるのらね。となればヒュドラ以外にも、行動阻害をさせるモンスターを召喚した方がよさそうのら)
ミトラが手を叩き、周囲に数十体の蜂を召喚する。さらにその背後には三体のグリフォンと一体の巨大なイエティが召喚されており、前に召喚したモンスターを含め全員が青いオーラを纏っていた。
(獣から回収した分も含め、エネルギーはこれで使い切った。これに全てを賭ける!)
ミトラはこめかみに指を当て、モンスター達をどう動かすかを思案するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます