第44話 超新星爆発
電車に乗って都市部に到着した万有は、おぼろげな記憶を辿って目的地を目指す。
少し迷いながらも、半年前に最後の雇い主だったクランの拠点にたどり着いた万有は、早速戸を叩く。
「はいはいどちら様ですか……ん?」
「お久しぶりです、マスター。あの時の借り、返しに来ましたよ」
「……マジか」
うやうやしく万有を中に案内するマスター。朝早いからか、他のメンバーは寝ているようだった。
大広間でマスターと向き合って座る万有は、受けるクエストの要望を伝える。
「丁度良い。いつかお前が来た時のために、受けて欲しいクエストを予め確保して置いてたんだ。それがお前の要望に合致している」
万有がマスターが差し出した依頼書を受け取ると、万有は一回頷く。
「ならこれを受けましょう。しかし最低8人というと……」
「ああ、アイツらを起こしてくる必要があるな。そこで待ってろ、準備が整い次第すぐ出発しよう」
それから30分たらずで協会に直行。飛行船に乗り、1時間かけて現地へ向かうこととなった。
今回万有が受けたのは、二年間受注者が0人だったS3級モンスターの討伐だった。
本来、S3の討伐に同行するには同行者全員がS級で無ければならなかった。しかしマスターとその部下達は全員A級。
従来なら受注を断られる所だったが、「まあ万有が全部やるだろうし」という理由で受注許可が通った。
その予想通り、討伐は一瞬で終わった。コスモ展開・重力による圧殺までの時間はたったの5秒。移動時間の720分の1だ。
あまりの圧倒ぶりに、マスターとその部下達は口をあんぐり開けて呆然とするしかできなかった。
(一匹でも瞬殺すれば自信が回復するかと思ったが……あまりにもあっけなさすぎる。何も感じなかった)
マスター達と共に拠点に帰ってきた万有は、預金通帳を見て舞い上がる人々を横目で見ていた。
(借りは返した、これで悔いなく――)
「ちょっと待ってくれ!」
呼び止められ、足を止めて振り返る万有。駆け寄ってきたマスターが万有に手渡したのは、『最新版宇宙大全』という題名を携えた、分厚い本だった。
「お前の能力、重力を操るんだろ? 宇宙のことを知れば、もしかしたら能力の拡張に繋がるんじゃ無いかと思ってさ」
「これを、俺に?」
「ああ。もしお前が借りを返しに来ることがあれば、礼にこいつを渡そうと思ってたんだ。こんな謝礼しか渡せなくてすまんな」
「……いいえ、何にもならない金を貰うより遙かに良いです。ありがとうございます」
「そっか、ならよかった!」
万有は深々と一礼し、拠点を後にするのだった。
それから電車に乗り込んだ万有は、貰った本を車内で流し見し始める。そうして目的の駅にたどり着く直前、万有は興味を惹かれる単語を目にする。
(超新星爆発……?)
星が終わる時に放つというそれは、万有に多大な興味を抱かせる。その単語について詳しく書かれた項目を速読する万有。
(……これだ! これがあれば、あのヒュドラの巨体も一瞬で吹き飛ばせる! だが……)
万有が抱いた懸念点は二つ。発動には時間が掛かること、そして規模を見誤れば自分も無事では済まないこと。
(またしてもぶっつけ本番か。規模の関係上コスモでタイマンの状況を作らなきゃ行けないから、弱らせた相手にとどめを刺すワザになりそうだ。誰かの手柄を奪うようで、とても気が引けるがな)
本を閉じ、開いたドアから外に出る万有。重力で本を浮かせて読みつつ、万有は山小屋へと向かった。
そして、何事も無く山小屋に着いた万有がドアを開けると、そこには銀髪の女性が二人に話をしている光景があった。
「万里姉!」
「おっ、少し早いお帰りね。邪魔してるわよ」
「君がその反応をするって事は、やっぱりこの人は君の師匠なんだね。最初聞いたときは、嘘かと思ったけど」
「万里姉もヒュドラ討伐に参加するんですか?」
「いや、私はアドバイスに来ただけ。いくら私でもアレを相手取るのは無理があるわ」
「でしょうね……座っても?」
「貴方が家主なんだから許可なんか要らないでしょ」
「むしろアタシ達が座って良いかを聞くべき立場のらね……」
万有は万里の隣に座り、万里の話に耳を傾ける。
「二人にとってはおさらいになるけど、改めて言うわね。アレン・ハルが破壊したヒュドラの能力は二つ。毒を吐き出す能力と、モンスターを召喚する能力への適応よ」
「モンスターだと? じゃあ俺の重力が通じる相手って事か?」
「いえ、ヒュドラは他にも重力・パチンコ・未来視に適応しているわ。1号が脅威に感じた能力、それに適応させてるみたい」
「ん? パチンコってもしかして私の能力のこと?」
「つまりはミトラちゃん、君がヒュドラと戦うしか無いって事。覚悟は良い?」
「ねえ、パチンコって私の――」
「元よりそのつもりだったのら。アレン兄ちゃんとアタシ、二人で街の皆の仇を討つ。そうして初めて、アタシは新しい自分になれるのらから」
「決まりね」
「ところで、その情報を伝えて大丈夫なんですか? 未来の情報って、伝えるとヤバいんじゃ」
「安心なさい、ここまでの情報は過去の話。というか、今のところ未来視への適応を持つヒュドラが関わってる未来は見えない状況なの。でも……」
万里は自分の目を手で覆う。
「ヒュドラ起動以前に見た、未来のアーカイブなら見せることは出来る。みんな目を閉じて。今からそれを見せてあげる」
「パチンコ……」
三人は目を閉じ、瞼の裏に映る映像を見る。30秒ほど眺めた後、三人はゆっくりと目を開ける。
「……え、ヒュドラの他に1000体いない?」
「おそらく、1号が5号の能力を使って大量召喚したモンスターのら。けど5号に適応の能力は無いから、ヒュドラ以外のモンスターは全滅するはずのらよ」
「だが3号の召喚したモンスターの中に、1号が確保して置いた手駒が混ざっていない保証は無い。碧、もし取りこぼしがでたときは頼んだぞ」
「任せといて! だって」
額に巻き付いた包帯を破り捨てる碧。包帯の下から現れた右目は、それまで紫色だったはずが赤くなっていた。
「お前、その目……」
「今日ボロ負けしたせいか、右目が復活してたから! 本調子で戦えるよ!」
「また負けたのか……ともあれ、各々決戦に向けての準備は整ってるって訳だな」
「なら私、早速協会に頼んで塔の周りを封鎖させておくわね。その方がみんな戦いやすいでしょ?」
「ありがとうございます。じゃあ二人共」
席を立ち、右手を前に突き出す万有。
「古くさいが、決戦前に気合いを入れるには一番だろ?」
「アハハ! 万有ってそういうのやるんだ! いいね」
「古いかどうかは知らないのらけど、こういうのも悪くないのらね」
碧が万有の手の上に右手を重ねると、ミトラも椅子の上に立って手を重ねる。
「これで終わりだ、精一杯やるぞ」
「「おう!!」」
一斉に手を下に下げる三人。その様子を傍から見ていた万里は、満面の笑みでそれを眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます