第11話 従妹は俺以外には氷のように冷たいようだ6
その後、昇降口で茜とは別れた。
まあ、3年と1年では教室は流石に違うから。
でも、彼女の学校生活がどうなるのか少し不安ではある。
極端に人付き合いが下手だし、このまま孤立なんてしたらどうしよう。
そう思うと気が気ではない。
でも、俺も俺でやらなきゃならないことがあるし、とりあえず教室へ向かおう。
◇
午前2時間の授業も終わり、今日はこれで授業は終わりだ。
昼前の下校となる。
今日は、生徒会の仕事もないからこれで帰れる。
鞄を持って教室から出ようとした時だった。
入り口付近がやけに騒がしい。
覗いてみると、茜が3年の男子生徒に絡まれていた。
「ねえ、俺とお茶でもしない?」
そう声を掛けられていたが彼女はプイっとそっぽを向く。
茜の仕草が気に入らなかったのか、男子生徒が拳を振り上げようとしていた。
俺は、咄嗟に間に割り込む。
そして、左頬に痛みが走る。
「なにしてんだ」
「げ、前嶋」
「茜、大丈夫か?」
「うん…でも」
「俺は、大丈夫だから」
茜は、俺の顔を心配そうに眺めた後に俺の背中に隠れた。
腰に、茜の両手の感触があるのが分かる。
「それで?手を上げるとはどういう了見だ?」
俺は、怒気を孕ませた声で男子生徒を威嚇する。
男子生徒は、委縮しているがキッと俺を睨みつける。
「うるせぇ、その女が俺を無視するからだ」
「こいつは、人見知りなんだ。
お前みたいな軽薄そうなのが大嫌いなんだよ」
「じゃあ、なんでお前がその子のこと知ってるんだ」
「なんでもなにも、こいつは妹だからな。なんか文句あるか?」
そう言った瞬間。
腰に痛みが走った。
うん、茜に抓られているな。
よっぽど、妹と言われるのが嫌なようだ。
でも、ここで幼馴染みや従妹なんていたら火に油を注ぐ様な物だ。
視界の端に教師が慌ててやってくるのが分かった。
「確か、お前は隣のクラスの藤堂だっけ?
流石に暴力沙汰は擁護できんからな。覚悟しとけ」
「あー、確かにこれは。前嶋、とりあえず保健室に行くように」
「はい、そうします。後の事はお願いします」
「ああ、任せておけ。じゃあ、藤堂は生徒指導室な」
藤堂は、教師に引っ張られていった。
全く、口の中少し切れたな。
「茜、ちょっと保健室寄るからな」
「うん」
俺で、これくらいで済んだが茜がこの力で殴られていたと思うとぞっとする。
可愛い顔に傷が…大怪我をしていたかもしれない。
まあ、目撃者も大量にいるから藤堂も相当重い罰を科せられるだろうな。
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