第10話 従妹は俺以外には氷のように冷たいようだ5
やがて、バスは田園風景を越えて学校前へと辿り着いた。
学校の傍は、あまり建物が無い。
結構田舎な感じだ。
それでも、総在校生600人を超えている。
自転車通学が7割近くを占めている。が、バス通学も2割近くあるため朝はバスも混む。
俺達は、バスを降りて校門へと向かう。
視線が俺…いや、茜に向く。
隣を歩く彼女は、今も仮面を被ったお人形状態だ。
人形状態でも茜は可愛いから注目されるよな。
今は、俺に引っ付いてはいない。
まあ、流石に校内だから仕方がない。
ホッとする反面、ちょっと残念な俺がいる。
「ねえ、君可愛いね。新入生?」
「…」
茜は、視線を向けることもなく無言で歩いていく。
ああ、傍から見ると凛とした美少女に見えるのか。
「ちょっと、待ってよ…おい、待てって」
そう言って男子生徒が茜の肩に手を掛けようとした。
俺は、咄嗟に男子生徒の手首を掴む。
「止めてくれないかな?」
「げ、生徒会長」
生徒会長…そう、俺の事だ。
去年の生徒会選挙でなぜか推薦で会長になってしまった。
めんどくさいったらあらしない。
「俺の妹なんだわ、こいつ」
従妹も、妹も大した変わりはないだろう。
従妹だと変な虫が付きそうだし。
妹なら、俺の事を怖がってくれるかもしれないしな。
「し、失礼しました」
男子生徒は、俺の手を振りほどいて走り去ってしまった。
「ありがとう…でも、妹はやだ」
「今は、それで勘弁してくれ。
苗字も同じなんだから変に詮索されなくて済むだろ」
「…分かった」
ちょっと、目つきが悪いほどに睨まれてはいたが俺にとっては可愛いなとしか思えないほどだ。
たぶん、俺にとってはどんな茜も可愛く思えてるのだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます