第41話 F14 マオキャット




俺・ルシフル・ムルムルの3人で、魔の大森林改めジッポン王国入口にトラポした。


ハイパー蚊帳DXの外側には、大量の真っ赤な岩?、、じゃないな。岩のようにゴツい体格の竜達がいた。



俺は拡声器をイメージして魔力を放出する。

分かりやすいように、魔法名は『拡声器』で良いだろう。


[拡声器っ!]



〈あー、あー。竜の諸君、こんにちは。俺はジッポン王国の王、ワカバ・エドである!代表者はいるか!?〉


俺の呼びかけにより、竜達は一斉にざわつき出すが、モーゼの十戒の如く二手に分かれ、そこにできた道を一際大きな竜が闊歩して来た。


冗談抜きに、羽の付いた山かと思う程の迫力である。



「我が名はマグロ。赤竜の王だ。」


え?竜なのにマグロ!?



〈そ、、そか。で、これだけ沢山の部下を連れて、戦争でもする気かな?〉


「いや、誤解しないでもらいたい。我々は住処を探している最中なのだ。」


〈え〜っと、ちょいタンマ。待ってね?〉


「ああ、分かった。」


俺は振り返り、後ろに控えていたルシフルに小声で話しかける。



「こう言ってるけど、どう思う?住処を探してるとか意味不明なんだけど。」


「う〜む。おそらくじゃが、前の住処を捨てなければならぬ事情が出来たんじゃろ。」


「って事は、ジッポン王国を支配しに来たって意味かな?」


「いや、どうやら向こうさんに戦闘の意思は無さそうじゃな。そっちで炭になっとるヤツは、使者として入ろうとしたのかもしれん。」


「な、なるほど。それは可哀想な事をしたね。んで、ルシフル的にはどう思う?」


「うむ。ジッポン王国の戦力アップには良いじゃろぅが、、。本来、竜族は世俗に関わる事はないのじゃ。その辺りの事情を聞いてみん事には、何とも言えんのぅ。」


「ふむふむ。んじゃ、事情聴取してみるか。」



ルシフルに参考意見を聞いた俺は、再び拡声器で話しかけた。



〈あー、お待たせ。前に住んでた所はどうしたの?〉


「、、青竜(せいりゅう)と緑竜(りょくりゅう)の奴らに奪われてしまったのだ。元々、緑竜らとは仲が良くなかったのだが、まさか青竜と手を組むとは、、。追撃から逃げ延びている矢先に、ジッポン王国誕生の報せを受けてな。」


〈なるほど。それでここまで来たって事ね。でも、竜族は世俗に関わらないんじゃなかったの?〉


「そうなのだが、報せを出せるのはチタマの理(ことわり)の外側にいる者だけだ。その者らが報せを出すほどのお気に入りがいる国ならば、我々を匿ってくれるのではないかと思ってな。」


〈ふ〜む。今に至るまでの事情は理解した。でもね?冷静に考えてみてほしい。、、君たち全部入れただけで、ジッポン王国は満タンになっちゃうんだよーっ!!〉


いやまぁ、少し大袈裟に言ったけど、明らかに人口過密国もとい竜口過密国になるよ。


そうなると、一般人はいつ踏み潰されるか分からないから、怖くて外を歩けなくなる。


竜がつまづいて転んだだけで、一般人の家は全壊しちゃう。


そんなの認める訳にはいかないよな!?



〈だから、悪いんだけど、、


「い、いやっ!待ってくれ!!これを見てほしい!!」


〈んん〜?〉


赤竜の王は両手を頭の上に置き、魔力を高めていく。


すると、みるみるうちにコンパクトなサイズになっていくではないかっ!!


まぁ、コンパクトと言っても、大型バス1台分くらいはあるんだけど。


ちょっとした山がバスの大きさになったら、コンパクトになったって言っても良いよね!?



〈おぉ、、。〉


俺が感嘆の声を口にしたのを聞き、赤竜の王は他の竜達に合図を送る。


それに応え、一斉にコンパクトサイズへと縮小していく竜達。


山だった王が大型バスサイズになったのだ。他の竜達は軽自動車サイズまで小さくなった。


今度こそコンパクトサイズだ!



「貴国の国民として受け入れてくれるなら、国内で通常の大きさにはならないと誓おう。いかがか?」


「ふむ。その大きさなら大丈夫か。、、分かった、君たちをジッポン王国の国民として受け入れよう。」


「、、感謝する。」


俺と赤竜の王は握手を交わす為、互いに近づく、、。



「あっ!ストップ!ストーーーップ!!!」


「うん?、、あっ!!危っ、危なかった!!」ドキドキドキ、、


何とか制止が間に合い、赤竜の王は寸前で踏みとどまった。



そう、、ハイパー蚊帳DXが展開されたままなのである。


俺は20m四方の入口を開けて、竜達を招き入れる。


もちろん、トップバッターの王と友好の握手を交わしてからね!



「んじゃ、ムルムル。竜達を城の前まで案内してあげて?まだ住居区画とか決めてないから、今日は適当でいいや。明日皆でちゃんと決めるからって伝えてね!」


「はっ!かしこまりました。魔王様はいかがなされますか?」


「あ〜、俺は今からやる事があるんだ。ルシフルはどうする?」


「む?愛しの妹だけにやらせる訳にはいかんじゃろ。妾も後片付けに参戦するのじゃっ♡」


「了解っ♪じゃあムルムル、竜達の方は頼んだからね!」


「はい。いってらっしゃいませ。」


俺たち2人でハイパー蚊帳DXの外へ出て、入口部分を再び蚊帳で塞ぐ。


これで準備万端。いつでも後片付けを始められる。



何の後片付けかって?そりゃあ、赤竜たちのやり残した、青竜・緑竜の奴らの殲滅作業でしょ。



「追撃隊は少ないのぅ。..5...6...66匹ってところじゃなっ♪」


「だね〜。ただ、相手は飛んでるってのがやりづらいとこだね。」


「む?魔族なんじゃから飛べるじゃろ?」


「え?どうやって?」


「良いか?背に魔力を集めて、羽が生えるイメージじゃ。さすれば、、ほれ?」ファサッファサッ



ルシフルの背に、コウモリのような黒い羽が生まれ、見せびらかすようにパタパタと羽ばたいている。


、、うん。片側20cmの羽で、どうやって飛ぶんだろうね?


なんて思ったのだが、ルシフルはフワッと宙に浮いた。



「羽さえ出来れば、後は簡単じゃ。大気中の魔力の流れを操作して、進みたい方向・速さを意識すればよい。後、羽はデカいと邪魔になるだけじゃからな?そうそう。早く来ないと、妾が全て狩り尽くしてしまうのぅ?」


「あっちょっ、待っ、、


ではのっ♪っと言い残して、カタパルトで離陸する戦闘機の如く飛び出したルシフル。


これは急がないと、本当に1人で終わらせちゃうぞ!?



ええーっと、確かデカいと邪魔だって言ってたな。


まぁ実際、ルシフルの小さい羽で飛んでるのを見てから、小さいと飛べないっていう常識はぶっ壊れたよ。


戦闘の邪魔にならないサイズでイメージ!


ルシフルとたいして変わらない体格だから、羽のサイズも同じでいっか。


いや、待てよ?全く同じだと、真似したみたいだよな。魔王たる者、オリジナリティを追求するべき、、か?


いやでも、今は急がなきゃダメだからなぁ。オリジナリティの追求は、また今度にしとくか。


なんて、色々考えながら背中に魔力を集める。



すると、ポンッと背中に何か違和感が生まれた。おそらく羽が生えた感覚なのだろう。


首を捻って自分の背中を覗き込む。



、、ふむ。コレはコレでカッコイイ。


だが、どうしてF14の可変翼が生えてるのかなぁっ!!?


あっ!!ふくらはぎに尾翼とターボファンエンジンまで生えてやがる!!



嬉しいミニチュア1/20スケール!!


、、真後ろから見たら、戦闘機の着ぐるみ(子供用)を着た子に見えるんだろうな。



と、とにかくっ!!

こうなってしまったのは仕方がない。今は急がなきゃなんだっ!



ええ〜っと、ルシフルは魔力操作でなんたらかんたらとか言っていたが、俺には適用されないと思う!!


だって戦闘機だものっ!!


これは俺なりに魔力の流れをイメージしないとダメだろうね。




という訳で、とりあえずターボファンエンジンに魔力を集めて、、



キュィィィィーーーーッ!!!


ファンの高速回転が甲高い音を上げる。



よしよし。可変翼は開いてる。オートにしておこう。


後は離陸だけか。



よし、テイクオフッ!!



ゴォォオォォーーッ!!ドゴーンゴゴゴゴ、、



ふむ。浮いた瞬間に左に傾いて、そのまま地面に頭から突っ込んでしまったな。


墜落の原因は分かってる。


ターボファンエンジン2基あるのに、右しか動いてなかったからだ。


右だけ全開になったら、バランス取れずに左に突撃するよ、うん。



そうと分かれば、もう大丈夫!

F14マオキャット、テイクオフッ!!


俺はターボファンエンジン2基に魔力を集中し、一気に飛び立つ。


ゴゴォォオォーーーッ!!



フワッと浮かび上がり、どんどんスピードが上がる。


それに合わせて進行方向を意識すると、ちゃんと思った方へ飛行してくれた。


良かった。もしかしたら垂直に飛び続けて、宇宙まで行っちゃうんじゃないかと、少〜しだけ心配だったんだ。マジで良かった。



「しかし、コレは改良が必要だな。この音は何とかしないとダメだろ。目立ちすぎる。後、戦闘機のパイロットらしいメットにゴーグル、酸素吸入マスクも欲しいところだな。」


なんて考えてみると、パパッと装着!


しかも、バイザー付きメットに酸素吸入マスクが一つになった、F35用のハイテクメットだ。


バイザーの内側に、地形情報や機体情報なんかがリアルタイムで投影されてて、ターゲットまでの距離なんかも一目で分かる。素晴らしい!


何故か着ている服まで、紺色のフライトスーツになっているが、、まぁ今は戦闘機パイロットの気分を満喫するとしよう!



俺は飛行練習として、宙返りしてみたり、きりもみ回転してみたり、、マッハ5でアクロバット飛行を楽しむ。



「コレは気持ちいいなーっ♪小さい時、パイロットになりたいって思ってた、、事はないけど、今はパイロットになるのも良いかもーっ!!」


はしゃぎながら空を舞う俺であるが、この時はまだ気づいていなかったんだ。



戦闘機のパイロットじゃなくて、、戦闘機になってるって事にっ!!!




この1分後に気づいて、なんかめちゃくちゃ凹んだ俺なのであった、、。



青竜・緑竜追撃隊に接敵するまで、残り63秒。


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