第39話 サクラ対、、俺?
アスモデウスのコピーを真っ二つにして倒したのは良いが、そもそもの話、模擬戦だからダメージ分の麻痺を喰らって、全身麻痺までいったら終了って言ってたんだよな?
なのに真っ二つ、、。
これ、超重大な不具合発覚したんじゃないの!?
という訳で、模擬戦案内音声さんに問い合わせ中である。
〈いえ。今回限りのスペシャルマッチでございます。あんなクズ野郎はコピーでさえ生かしておく価値はございません。ましてや、魔王様から直々に麻痺ってもらえるなんて、、以ての外ですっ!!!〉
「お、、おぅ。じゃ、じゃあ次からは怪我なしの模擬戦になるんだよね?」
〈はい、そのように致します。今回は独断で設定変更してしまい、申し訳ございませんでした。〉
「いや、構わないよ。模擬戦案内音声さんがしなくても、俺の方から頼んでたと思うし。」
〈そう言ってもらえると麻痺ります。ありがとうございます。〉
「そ、、そか。」
俺は武舞台を降りて、サクラちゃんの所へ。
「ワカバお姉ちゃんっ!すっごく凄かったーっ!!」
「ありがとっ♪さっきのはスペシャルマッチだったから、次からは怪我したりしないから、存分に戦っておいで?」
「うんっ♪応援しててねーっ!!」
「ふふっ、頑張ってねっ♪」
サクラちゃんが武舞台の方へ向かったのを見送り、俺は武舞台から少し離れた椅子に座って、観戦の準備をする。
しかしこの席、完全に解説席だよな?
ま、まぁ、国民が増えてきたら何かイベントでもやってみるのも良いか。
この解説席もその時使うだろ。
おっ!サクラちゃん、相手を決めたみたいだ。
何と戦うのかなぁ〜?
武舞台に上がるサクラちゃん。
武舞台中央には、見たことのある超絶美幼女が立っている。
、、サクラちゃん、どうして『俺』を選ぶかなぁ〜?
これ、自分が倒されるように応援しなきゃいけないんでしょ?すっごい複雑な気分だよ?
なぁんてね!
どうせ俺なんだから、きっと適当に手加減して、良い感じに戦ってから負けてあげるんだろうね。
だって俺、サクラちゃんを見守る会会長だからな!!
、、いや。敢えてギリギリ勝つパターンもあり得るか?
ギリギリ勝って、もう少しでやられちゃう感を演出し、これからの訓練にやる気を向けさす。
あー、、これだわ。俺の勝ちで終わるわ。
俺が勝敗予想をしてる間に、サクラちゃんは武舞台中央に到着し、コピー俺と向かい合う。
「ふふっ、サクラちゃん。俺は強いよ〜?」
「うん、知ってるよっ!でも、ワカバお姉ちゃんがどれくらい強いのか見てみたいんだーっ♪」
「、、ふむ。俺の本気が見たい、、と?」
「うんっ♪」
コピー俺は腕を組んで何やら考え込んで、、ないね。俺の方をチラチラ見てやがる。『これ、本気でやらないと嫌われルートだぞ?どうすんだ!?』という意味だろう。自分だから分かる。
まぁ余りにも力の差が歴然だから、いざとなったらサクラちゃんも勧誘してあげるか〜、、。
99代目 魔王の力を体験する、良い機会かもしれんしな!
俺はコピー俺にコクリと頷き、ゴーサインを出す。すると向こうも同じく頷いた。
「よし、サクラちゃん。俺の本気を見せてあげる。覚悟はい〜い?」
「う、うん!いくよーーっ!!!」
サクラちゃんは気合いの入った声を上げ、アロンダイトを構えて駆け出した。
だが、3歩ほど進んだだけで立ち止まってしまう。
サクラちゃんは冷や汗を垂れ流し、膝がカクカク震えている。
生物の生存本能による危機察知が警鐘を打ち鳴らしているのだ。これ以上アレに近づいてはならない、、と。
「ふふっ♪サクラちゃんはきっと強くなる。俺の殺気を受けて立ってられるんだから。でも、まだ俺の本気を見たいなんて思えるかな?」
「う、、うん。本気、、見た、い。」
サクラちゃんの気持ちが伝わったのか、コピー俺はふぅっとひと息吐き、カッと眼を見開く。
その瞬間、全ての時が止まる。
実際に時間が止まった訳ではない。全身に突きつけられている無数の刃が、1mmでも動けば死ぬと脳に理解させ、脳が運動神経に強制停止を指示しているのだ。
ああ、呼吸すらままならない。、、いつまで続くのか。、、もう、諦めようかな。
死を覚悟する。と同時に、究極の緊張状態からくる尿意が襲ってくる。
ははっ、、こんなことなら、トイレに行っておけば良かった、、な。
そんな訳の分からない事が頭を埋め尽くす。
そして訪れる最後の瞬間。
突きつけられ刃が肌に触れ、、
ジョババー〜〜〜、、チョロッ、、、
静寂が支配する場に、無情に響く放水音。
はぁ〜〜っ♡きっ、気持ち良いーっ♡
これで思い残すことは、、
「はいっ終わりー!戻ってきて〜?」
「ぇ、、ぁ、え?」
「ふふっ♪俺の本気の殺意はどうだったかな?」
「ぇ、、え?あ、い、、生きてる?」
「死ぬ幻覚でも見たのかな?」
「う、うん。もう死ぬからって、、ああーーーっ!!どどどっどうしよーっ!!?」チョロッ
サクラちゃんは自分のやらかした痕跡を目の当たりにして、魂の叫びをあげた。
、、腹筋に力が入り最後まで搾り出せたようで何より。
「心配ないよ。ほらっ、『俺』なんて全く動揺してない。むしろドヤ顔だよ?」
「あ、本当だ!じゃあ私もーっ♡」ドヤァ
「うんうん!それじゃあ今回は俺の勝ちで良いかな?ちゃんと剣で決着つけなきゃダメ?」
「ううんっ、ワカバお姉ちゃんの勝ちで良いよっ♪私もオシッコしないように頑張るーっ!!」
「あ〜、オシッコ我慢しすぎると病気になっちゃうから、無理しちゃダメだからね?」
「分かったーっ♪」
「よしっ♪次は、同じステージに立ってからだね。」
「同じステージ?」
「そっ。まぁ『俺』にそう言えばやってくれると思うから、深く考えなくて良いよ。じゃあまたねーっ!」
「うんっ、またねーっ!!」
と、コピー俺がフッとその姿を消した。
「お疲れさまー!さっきのは何だったんだろうね?幻覚を見せるスキルかなぁ?何か言ってた?」
「うんっ!なんかね〜、本気の殺意?とか言ってた!それより、ワカバお姉ちゃんっ!どうしてそんなに余裕なのっ!?」
サクラちゃんはモジモジと恥ずかしがりながら聞いてくる。
、、ふむ。どうやらチタマ世界には、聖水の製造方法があまり知られてないようだな。
地球では結構有名な製造方法だと思っていたが、、。
あっ!もしかして、一部の富裕層が情報を止めているのか!聖水を独占しようと動いているに違いない!!
サクラちゃんには、ちゃんと教えておこう。
「サクラちゃん。コレはね?全ての穢れを浄化する『聖水』っていうんだよ?」
「ええーっ!?じ、じゃあ、病気で教会に行くと貰えるのって、聖女様のオシッコだったのーーっ!!?」
「、、そうなるね。ちなみに?」
「うぅ〜、、3回飲んだのは覚えてる〜。」
「そ、、そか。こうしてサクラちゃんが元気なのは、聖女様のオシ、、ゴフンゴフンッ!聖女様のおかげだね。」
「もーーっ!!ワカバお姉ちゃんも、病気になったら飲むんだからねっ!!」
「、、ふむ。俺は病気にならないんじゃないかなぁ?状態異常無効だから、多分病気も状態異常に入るもんね。」
「ええーーっ!?ワカバお姉ちゃんズルいズルいズルーーいっ!!!」
「ふふっ、まぁまぁ。それより早く着替えちゃおっか?ビチョビチョだと気持ち悪いからね。」
「でも、着替えはママが持ってるから、、。」
「大丈夫大丈夫っ。任せといて!」
俺はワカバの別荘1DKを出した。
レベルが上がって2DKまで出せるようになったが、洗濯が目的だから1DKで充分だろ。
という事で、2人で全裸になり濡れた服を手に別荘の中へ。
脱衣所にある洗濯機へぶち込み、洗濯開始!
液体洗剤『オタック』と柔軟剤『モフラン アロハビッチ』が備え付けであったのは嬉しい誤算だ。
「んじゃ、洗濯してる間に、体も綺麗にしなきゃね!」
「でも『聖水』だから綺麗なんじゃないの?」
「え〜っとぉ、、聖水は飲む事で効果を発揮するんだよぉ?そのままだと、ただのオシッコだから、ちゃんと洗わなきゃだよぉ?」
「そっかぁ!分かったーっ♪」
子供相手の言い訳ならこのくらい適当でも通じるんだな、覚えておこう。
浴室に入ると、子供2人なら広く感じる程度の広さがあって安心した。ぎゅうぎゅう詰めだとくつろげないからな!
「お背中お流ししますね〜っ♡」
「うむ、頼む!」
とか、よく分からない亭主関白夫婦の入浴シーンなんかの小芝居を楽しみながら、体を洗って綺麗さっぱり!
シャワーで洗いつつ、バスタブにお湯を溜めていたので、湯に浸かって疲れを癒すとしましょう。
「ふあ〜、、良い香り〜♡ワカバお姉ちゃ〜ん、お湯が緑でシュワシュワだよ〜〜?」
「あ〜〜、、これはね〜入浴剤『ボブ』を入れたんだよ〜。、、黒人じゃないから安心してね?」
「よく分かんないけど〜、分かった〜。」
2人でとろけるバスタイムを楽しんだ後、洗濯物を乾燥機にぶち込んで、乾くのを待つばかり。
ただボ〜ってしてるのもなんだし、コピー俺の使った本気の殺意とかいうのについて考えてみよう。
「何か分からないのー?」
「ん?あぁ、コピー俺が使った本気の殺意ってやつを考えてるんだ。コピー俺が使えるんだから、俺だって使えるはずだよね?」
「ワカバお姉ちゃんはまだ使えないの?」
「う〜ん、多分使う機会があれば使えるんだろうね〜。」
と、ソファーに座ってコーラを飲みながら2人で話す。
2人とも全裸ではあるが、そこはスルーしてもらいたい。
俺はアイテムBOXに着替えが入っているから、出して着れば済む話なんだけど、サクラちゃん1人だけ全裸ってのは色々と問題があると思うからな。
さて話を戻すが、ここで俺が本気の殺意とやらを試しに使ってみるとする。
仮に成功しても、サクラちゃんは再び聖水を作り出してしまうだろう。
試すなら被害を考えて、夜中にこっそり模擬戦ジムでだな。
「そういえば、コピーワカバお姉ちゃんがねー?ワカバお姉ちゃんに言って、同じステージに立ったらまた戦うって。どういう意味なの〜?」
「ふ〜む。ちょっと待ってね?」
「うん。」
さて、コピー俺さんや?まだ時期尚早ではありませんかねぇ?確かに、俺と戦うなら魔族強化しないと無理だよ?そりゃそうなんだけどさ〜!?
ママンさんには、パパンさんとサクラちゃんの事を理由にして10年の猶予期間をとったんだよな。
だけど、パパンさんとは離婚して、今はベリアルを狙っている。
で、ベリアルが魔族なんだから、ベリアルと結婚するとかになったら、ママンさんも魔族にしてあげるべきだとは思う。
末永くお幸せに〜♡ってやつだ。
そこでやっと、『サクラちゃんも魔族になりたい?案件』が生まれるというもの。
それをコピー俺め!自分はコピーだから、面倒事は俺に丸投げでオッケーっしょ!とか思ってたに違いない!!俺だから分かる!
ん〜〜、、仕方ない。
「サクラちゃん。とっても大事なお話なんだけど、聞いてくれる?」
「うん、どうしたの?」
俺は、サクラちゃんの人生におけるターニングポイントを作ることにした。
どちらの未来を選んだとしても、死ぬまで面倒をみてやろう、、と。
サクラちゃんを見守る会の会長だからな!
、、まぁ、話すのは服を着てからにしようか。
全裸でする話じゃないな。と、少し冷静になる俺なのであった、、。
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