第32話 ロストマジック教室
ジッポン王国と国名を決めてから暫くしないうちに、魔石のメンテナンスを任せていた2人がやって来た。
「お待たせ致しました、魔王様。」
「おっ、そっちも終わったみたいだね。」
「なっはっは!妾に掛かれば、魔石メンテナンスなんてちょちょいのちょいなのじゃ!」
「いやいや、ルシフルさんや?まだ起きたばかりなんだから、無理したらダメだって。ベリアルがちゃんとやってるか見張っててって言ったのに〜。」
「うむ〜。心配してくれるのはありがたいのじゃが、此奴に任せとったら後5時間は掛かる計算じゃったからのぅ。」
「な、なるほど。5時間は長いね。、、で、どうしてベリアルは、そんなになってるのかな?」
作業を終えてやって来た2人であるが、何故かベリアルの様子がおかしいので、直接聞いてみる事にした。
まるで交通事故に遭った直後に胸ぐら掴まれて顔面集中殴打されたみたいだ。
「うははっ!妾がフルボッコしてやったのじゃーっ♪」
、、ですよねー。
ま、まぁ理由は予想できるのだが、もしかしたら違うかもしれないからな。ちゃんと事情聴取はしとかないと!
「ど、どうしてボコったのかなぁ?」
「む?妾を100年も放置しておったのじゃぞ!?まだ殴り足りぬくらいじゃ!!」
、、ですよねー。
よく殺さなかったねと、褒めてあげたいくらいだよ、うん。
「ま、まぁこれ以上殴ったら、ベリアル死んじゃうからね、我慢してくれる?」
「分かっておる。ちゃんと鑑定で残りHPを見ながらボコったからのぅ!ピッタリ100で止めるのは苦労したのじゃーっ♪」
「そ、、そか。」
見た目は超美少女なんだけどなぁ。俺の中では、『血気盛んな脳筋姫』に位置づけされてしまったぞ。
だがまぁ、この件については100%ベリアル達元部下に非があるからな。
死なない程度にボコられるのは仕方ない。
これ以上は追及しないにしよう。
俺はベリアルにフルケアヒールをかけながら心に決めたのであった、、。
「そうそう、話は変わるんだけどさ?」
「はっ!ジッポン王国の件でございますね?建国おめでとうございます、魔王様!」
「あ、ありがとう。、、なんで知ってるの?」
「先ほど、『ジッポン王国 建国に伴い本日5月1日はチタマの祝日となった。休める者は休み、どうしても働かなければならない者は半日で切り上げる事。これは神が決めた絶対遵守事項である。』と、頭に響いてきましたので。」
「ついでに言うと、ここがジッポン王国の国土になった事も伝えてきたのぅっ♪」
ふむ。祝日の恩恵、全チタマ人があやかれるのね、良かった良かった。
ジッポン王国民以外からしたら、どうして外国の建国記念日で祝日になるんだよ!ってなると思うが、一般庶民としては休みが増える事は喜ばしいはずだ。
逆に、上に立つ者達からしたら、庶民からの税がその分減る訳だから、許しがたい祝日だろう。
という訳で、建国初日に全チタマ国家を敵にしたな、うん。
まぁどうせ10年後にぶっ潰すんだから、その前にちょこちょこ仕掛けて来てくれるなら大歓迎!
少しでも戦力を削らせてくれるって事だからな。
10年後の戦い、敵50億人くらいまで減ってくれたら嬉しいね!
「とりあえず、サイショノ街に居続けるのは無理がありそうだね〜。」
「む?別にジッポン王国が魔族の国だとは知られておらんじゃろ?国王が誰なのかも通知されんかったしのぅ。」
「あ、そうなの?なら別に問題ないか。」
「はっ!しかし、ジッポン王国の地に侵入を試みる輩は現れるかと。」
「あ〜、それなら大丈夫だと思うよ。今、ジッポン王国全体にハイパー蚊帳DXっていう結界を張ってるからね?100億Vの電圧に耐えられる人しか入れないようになってるんだ!」
「なははっ!100億Vとは豪気な結界じゃのぅっ♪今の妾でも、HP半分くらい持っていかれるじゃろっ♪」
と、何故かソワソワしながら口にしたルシフル。、、試さないでね?
だがまぁ、先代魔王様がそう言うくらいだから、ここに強引に入って来れる人はいないだろう。
「それじゃあ母さん達と合流して、俺はニーテンゴ街とサンノ街に行ってくるよ。」
「はっ!お供致します。」
「妾も行くのじゃーっ♪」
「そう?それじゃあご一緒してもらおうかな。とりあえず俺に捕まっててね!」
「む?妾達を担いで走るつもりかのぅ?」
「ブッブー!ハズレだよ〜。まぁまぁ、すぐに分かるから、ね?」
「う、うむ〜。」
俺は2人と手を繋ぎ、瞬間移動的旅行魔法『トラポ』を使う。
俺たちの周囲が、切り取れた空間のように無重力状態になったかと思えば、フワッと体が浮き上がり、光を置いてけぼりにする速度で飛び立つ。
が、まばたきを1回するより早く目的地に到着。
ワカバの別荘前にそっと着地したのであった。
「はい、到着〜。」
「な、、なんじゃ今のはーっ!?」
「ちょっ落ち着いてっ!?説めっ、説明するからっ!!」
到着した途端、ルシフルは俺の両肩を掴んで激しく体を揺さぶってきたので、前後に激しく揺れながら静止を促す。
「う、うむ、すまんのぅ。妾とした事が、少々取り乱してしまったのじゃ。」
少々ってレベルじゃなかったからね!?
「えっと、さっきのは超高速移動魔法『トラポ』っていって、行ったことのある場所に限り瞬間移動的旅行を可能にしてくれる、めちゃくちゃ便利な魔法だね!」
「まさに、失われたチタマ創世期の古代魔法、ロストマジックなのじゃ、、。」
「ロストマジック?」
「はっ!現代に使い手がいない魔法が幾つかございます。空間転移魔法、時間操作魔法、重力操作魔法などでございますね。」
「、、ふむ。トラポは空間転移とは別だと思うけど、重力操作魔法の方は心当たりがあるね。」
俺はベリアルの両足にグラビティ1000tを掛けてみた。
ベゴベゴベゴッと膝まで地面に埋まったベリアル。
「どう?」
「はっ!足を上げようにも、凄まじい重さで動かせません。」
「今ベリアルの両足に1000tの重力を掛けてるからね!んじゃ、逆に軽くするからね?」
ベリアルの両足から1000tの重力を解除すると同時に、全身にかかる重力を1/1000にしてやる。
ズビュンッ!!!
「あー、、飛んで、もとい跳んで行っちゃったね。まぁすぐに慣れて戻って来るでしょ。」
「ま、魔王様!妾にもロストマジックを授けてほしいのじゃっ!!」
「ん?もちろんだよ。ルシフルがトラポを覚えてくれれば、ニーテンゴ街とかサンノ街に行くのが楽になるからね!」
「ありがとなのじゃーっ♪」
「どういたしまして!あっ、母さんにも教えてあげようと思ってたんだった。一緒に教えた方が1回で済むし〜。ルシフルの事も紹介しなきゃだし。とりあえず中でご飯食べてからにしよっか!」
「うむっ!了解なのじゃっ!!」
彼方まで跳んで行ったベリアルは放置して、2人でワカバの別荘へ入る。、、前に、自販機で飲み物を買うのも忘れずに。
「ただいま〜。サクラちゃんはまだ寝てる?」
「おかえり、ワカバちゃん。サクラはまだ起きてないのよ。」
「おかえり〜。またまた美少女を連れて来たね。そちらは?」
「うむ!妾はルシフル・ナ・サタン。98代目 魔王なのじゃ!」
「ええーーっ!!?」」」
「ぬぁっはっは!100年もの間、地下室で眠らされておったのじゃ。今代の魔王様が見つけてくれなかったらと思うと、全身に寒気が走りよるのぅ。」
「、、という訳で、俺の眷属になってもらったんだ。よろしくね〜?」
「そうだったのね。いいわっ、私がルシフルちゃんのママになるわっ!!」
「えぇっ?母さん、今の見た目だと、ルシフルと同い年くらいにしか見えないよ?」
「あ、そうだったわ。で、でもっ!娘と同い年に見えるくらい若々しいって事で!!」
「妾の母に、、のぅ。ではたくさん甘えさせてもらうのじゃーっ♪」
そう言うとルシフルは、母さんに抱きついて甘え出した。
ふむ。8〜10歳くらいの見た目で娘が居るってのがおかしいんだが、、まぁ本人達が良いなら別に良いか。
「丁度10時か。ヨシっ、10時のおやつタイムにしよう!ルシフルも100年ぶりの食事なら、甘〜〜いお菓子が良いでしょう?」
「賛成ーっ♪」」」なのじゃっ♪」
満場一致にておやつタイムにする事に。
今回はルシフルが腹ペコだというのを考慮し、重めのヤツでいこうと思う。
そう、『バウムクーヘン』!キミに決めたッ!!
俺はリビングのテーブルに向かって、モンスターボー、、ゴフンゴフン。魔力を放出し、形と味を明確にイメージする。
メープル、チョコ、抹茶、コーヒー味をご用意。
、、ふむ。バウムクーヘンだけだと少し彩りに欠けるか?
ならば、いちごショートもオマケしちゃおう。
魔法名は〜、、そのままで良いか。
[おやつタイムッ!!]
次の瞬間、テーブルの上にバウムクーヘン4種といちごショートケーキが出現した。
「おおーーっ!」」」」
「ふふっ、さぁ皆!いただきまぁすっ!」
「いただきま〜っす!!」」」」
皆、凄い勢いで口に運ぶ。
俺的には『木の切り株なんて食べれねーよ!』とツッコまれる気満々だったんだけどなぁ。
「あーーっ!!!私も食べるーーっ!!!」
皆でウマウマ騒ぎながら食べていたせいで、寝ていたサクラちゃんが目を覚ましたようだ。
開口1番おやつの催促だったので、サクラちゃんの分も出してあげる。
「さて、、この後だけど、皆をサイショノ街に送ってくるから、母さんとルシフルはここで待っててね。」
「あら、私もなのかしら?」
「うん。あの重くしたり軽くしたりする魔法とかを教えようと思ってね!」
「まぁっ♪楽しみだわっ♪」
「ワカバちゃん、帰ってから家で教えるんじゃダメなのかい?」
「あー、魔法は失敗すると周りに被害が出るからね〜。エチゴ屋がぶっ潰れるだけならまだ良いけど、サイショノ街が壊滅しちゃったら困るでしょう?」
「そ、それはマズイね。」
エチゴさんが多少ごねたが、後はすんなり納得してくれた。
サクラちゃんが素直に聞いてくれたのが少し意外であったが、理由は簡単、『私は剣士になるから、魔法は使えなくて良いんだーっ♪』と。
仰る通りである。
そんな訳で、おやつタイムを楽しんでからエチゴさん・ママンさん・サクラちゃんの3人と共に、エチゴ屋前にトラポした。
「こ、これは不思議な気分だわ。一瞬よ、一瞬。いつ移動したのか分からなかったわ。」
「ワカバお姉ちゃんっ、すごーいっ!!」
「ふふっ、まあね〜?んじゃ、今回のピクニックはこれにて終了。また遊ぼうね!」
「うんっ!また明日ね〜っ♪」
ママンさんとサクラちゃんは自分の家に入っていった。
サクラちゃんがまたトゥモローとか言っていたが、まぁスルーさせてもらおう。
こう見えて色々と忙しいのだよ、俺は。
「それじゃあ、エチゴさんは店番頑張ってね!」
「あ、ああ。今日のところは分かったよ。でも、俺も新しく覚えたスキルを試してみたりしたいなって。」
「ふむふむ。それじゃ、明日は訓練所に行こう!スキルでも魔法でも、試し放題だからね!」
「おおっ、そいつはイイ!楽しみにしてるよっ♪」
「うんっ♪」
エチゴさんと明日の約束をしてから、再びトラポでワカバの別荘前に移動した。
「お待たせー!」
「う、うむ。まぁ1〜2分しか経ってないのじゃがな?」
「そ、そうね。私も早く使いたいわ。」
「了解っ!それじゃあ、『ワカバが教える、誰でも簡単ロストマジック教室』始めるよーっ!!」
2人から拍手が湧き起こり、魔法教室を開始する事になった。
さてさて、俺はちゃんと地球流のイメージを言葉で説明出来るでしょうか。
まぁ、なるようになるかっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます