第24話 ピ、ピクニックだよ?




「あら、サクラ。それにワカバちゃんも。こんな朝早くにどうしたの?」


「あ、あはは。おはようございますママンさん。」


「ママーっ!ワカバちゃんも力持ちだったよ♪2階から飛び降りた私を楽々キャッチだもんっ♪」


「あらあらまぁまぁっ♪少し痩せすぎかと思ってたけど、体幹はしっかり鍛えてるのね!今度筋トレを見てあげるわっ♪」


「あ、、ありがとうございます。」


「それで、この惨状は何があったのかしら?」


ふむ。本題ですね、分かります。

でもどうしてバンプアップして血流上げてるのか、、。

皮パンピッチピチになっちゃってるぞ!?


これは正直に言わないと、、?



「あ、、あ〜これはですね?サクラちゃんが2階から飛び降りたのを見て、助けに入った時の二次被害というか、、。まぁ俺の早とちりだったんですが。」


「なるほどねぇ。サクラには2階から出たらダメだって、何度も言ってるんだけどねぇ。サクラっ!心配してくれたワカバちゃんに、ちゃんと謝りなさいね!」


「はぁい。ワカバお姉ちゃん、ごめんなさい。」


「い、いや。俺が勝手にした事だから。でも、2階から飛び降りるのは、もう止めようね?」


「はぁいっ!」


サクラちゃんは元気に約束してくれた。


多分もう大丈夫だろう。


いずれにせよ、店の入口をぶっ壊してしまった事に変わりはない。


修理代は支払うべきだと思う。



「あ、あの。これ、修理に使って下さい。」


「っ!!こっ、こここっこんなに要らないわよーっ!!!」


チタマでガラスが幾らくらいするものなのか知らないので、少し多めに500金貨(日本円にして約500万円)を渡したのだが、どうやら多すぎたようだな。



「えっと、じゃあどのくらいあれば、、


「もうっ!何言ってるのよ!ワカバちゃんはサクラが危ないと思って助けてくれたんでしょう?娘を助けてくれた恩人に、修理代なんて請求しないわよっ♪」


「い、いえ。ここだけの話ですが、実は俺、サイショノ街を丸ごと買っても余裕ってくらいの超大金持ちなんです。」


「ははっ!そこまで言ってくれるなら、1金貨だけもらっておこうかねっ!ありがとうっ!」


と、俺の両手に山盛りの金山から1枚だけつまみ取ったママンさん。

見た目はサイボーグで少し怖いけど、中身はきっと2の方なんだな!I'll be back!だな!!



「それじゃあサクラちゃん?そろそろ降りてくれるかな?」


「え〜っ!?ワカバお姉ちゃんが呼んだんだよ〜っ!?」


あ、そうだったよ!夜のお出かけを口止めするのが目的だったよ!!


しかし、サイボーグがショットガン片手に睨んでる気がする、、。


し、仕方ない!



「あ、あの〜。実は今から皆でピクニックに行くんですけど、サクラちゃんも一緒にどうかなぁ、、なんて?」チラッ


「わあっ♪行きたい行きたいーっ♪ママーっ一緒に行っても良いでしょ〜っ!?」


「ははっ!サクラはワカバちゃんにすっかり懐いちゃったねぇ。それじゃあ、ちょっと待っててちょうだい?サクラっ、自分の荷物くらい自分で用意しなさいな?」


「やったーっ!ワカバお姉ちゃんっ、ちょっと待っててね!!」


「慌てなくても大丈夫だからね。水筒、、は大丈夫か。お弁当、、も大丈夫だな。着替え、、も大丈夫。、、うん、手ぶらで大丈夫かもね。」


「手ぶらでピクニック?ワカバちゃん、本当にピクニックなのかしら?」


「も、もちろんですよ!ちょっとお耳を拝借しても?」


「ん、何かしら?」


ママンさんは俺の前でしゃがみ、耳を近づけてくれた。



「俺、アイテムBOX持ちなんです。」


「ええーーーっ!!!?」


「しーっ!!」


「あっ、、ごめんよ。だから手ぶらなのね〜?分かったわ。アイテムBOXの事はオカンも知ってるのかしら?」


「うん、大丈夫だよっ♪」


「了解よっ♪それじゃあ出発するとしましょうかっ♪」


「え!?ママンさんはお店があるんじゃ?」


「あぁ〜、店番なんて旦那にやらせときゃいいのよ〜っ♪サクラっお出かけするわよー!」


「あれ?荷物は〜っ?」


「大丈夫大丈夫っ!お腹が空いてきたら、キングバッファローでも狩れば良いのよっ♪」


「わぁっ!ママのカッコいいとこ見たーいっ♪」


「任せときなっ!!」


この盛り上がってる2人を止める術はないな、うん。


まぁ、ママンさんは母さんの元パーティメンバーって事だし、大丈夫だと思うんだよな。


超ハイテクAIが組み込まれてるはずだし。


などと失礼な事を考えながらも、2人を連れてエチゴ屋の方に戻った。



「あ、あら?エチゴ、よね?10年前の姿になってるけど、、。」


「やぁ、おはよう。サクラちゃんも。」


「おはよ〜っ!私も一緒にピクニック行っても良いって♪」


「そっかぁ!ママン、詳しい話は街を出てからするよ。」


「分かったわ。、、オカンは行かないのかしら?」


「あ〜、その辺も街を出てからね。あ、こちらはベリアルさん。ワカバちゃんの執事さん、、で、こちらはクレハちゃん。」


「まぁまぁっ!ワカバちゃんのお姉ちゃんかしら?よく似て可愛いわね〜っ♡ベリアルさんはいつこちらに?」


「はい、今朝方サイショノ街に到着致しました。まお、、


「ベリアルっ!!!」


ビクッ!!

「はっ!も、申し訳ございません、ワカバ様。ママン殿、詳しいお話はまた後ほど致しますので。」


「わ、分かったわ。それじゃあ話の続きも気になるから、出発しましょっ♪」


出発前から色々ハプニングは起こってしまったが、無事に出発する事になった。


しかし、元パーティメンバーのママンさんでも、母さんだと気づかなかったな。


完璧に俺の姉だと信じて、肩車してるよ。母さんは苦笑い中だな。


そして、何故か俺もサクラちゃんを肩車してるんだが、明らかにおかしな感じに見えるよな?


自分より一回り大きいサクラちゃんを肩車って、過積載だと思うんだが。


かと言って俺がサクラちゃんに肩車されるのも、年齢的におかしいんだよね。


ま、まぁ、サクラちゃん見守る会の会長としては、体の大きさで遠慮するような子にはなってほしくないからな!


サクラちゃんが満足するまで、肩車でも高い高いでもやってやるさーっ!!



皆で賑やかに街の南門へ向かう。


途中途中、玄関先を掃除してるおばさんや、新聞配達の青年などに声をかけられはしたが、挨拶を交わす程度で済んだ。


問題となるのは、門で見張りをしている兵たちだろう。


きっと絡んでくる。俺のシックスセンスがそう告げている。



「あっ、ワカバちゃん!おはようっ♪」


「おはようございます、門兵さん。」


早速挨拶されてしまったが、まさかの顔見知りであった。

昨日、サイショノ街に入る時にいた門兵さんで、『この街の皆が家族だ』みたいな事を言ってくれた人。


名前は知らないが、まぁ門兵Aとしておこう。


顔見知りだから、行き先くらいは聞かれるだろうね。

正直に魔の大森林なんて答えたら、多分止められるだろうから、なんて答えるべきかなぁ。



「おや、サクラちゃんと一緒にお出かけかい?」


「うんっ♪ワカバお姉ちゃんと一緒にピクニックなんだーっ♪」


「そっかそっかぁ!今日は天気も良いし、たくさん遊んでくると良いよ!」


「うんっ♪」


「じ、じゃあ行ってきます。」


「気をつけて行ってらっしゃい!」


門兵Aに見送られ、街の外へ出た。サクラちゃんが上手く会話をリードしてくれたおかげで、深くはツッコまれずに済んだな。グッジョブサクラちゃん!


こうして、南門から延びる街道をしばらく進み、南門が見えなくなった所で、一旦小休憩をはさむ事となった。



街道沿いの草原で1/10スケール東京ドームを展開。


ここで、ママンさんに事情説明をする。



「ベリアル。サクラちゃんとエチゴさんを連れて、ドーム探検でもしてて?あのネットの奥辺りにお弁当とかデザートとかもあるから、お土産に持って帰ってきてね。」


「はっ!お任せ下さい、まお、、ワカバ様。」



3人を送り出し、俺と母さんとママンさんの3人で、ピッチャーマウンドを囲むように座る。1/10スケールだから、マウンドが囲むのに丁度良い大きさなんだ。


真上から見たら、円卓会議に見えなくもないな、うん。



「あっ、話し始める前に、飲み物が欲しいところだよね!」


俺は汎用魔法『ワカバ社製自販機』を使い、自販機を設置。


コーラを2本買った。俺と母さんの分だ。



「ママンさんはどれが良いですか?」


「は、初めて見る物しかないから、ワカバちゃんにお任せするわ?」


「ん〜、じゃあママンさんもコーラで良いかな!」


こうして皆にコーラが行き渡り、いよいよ円卓会議っぽいマウンド会議の始まりである。



「まずは、ママンさんに謝らないといけない事があります。」チラッ


「そうね。ママン、私、、ワカバちゃんの姉じゃなくて、オカンなのよ。」


「、、は?」


「いや、だから〜、、エチゴの妻のオカンなのよーっ!」


「い、いやいやいや。だって完全に子供じゃないの!それに、もし仮にオカンが子供に戻ったっしても、こんなに可愛くなかったじゃないのよ!!」


「うっさいわ!!まぁ信じられないわよね。私だって信じられない部分があるけど、こんな嘘ついたって仕方ないじゃない?」


「、、本当なのね?」


「そうよ。エチゴも若くなっていたでしょう?その原因となるのがワカバちゃんなんだけど、ワカバちゃんが本気出したら若返り過ぎちゃったのよっ♪」


「、、ワカバちゃん。一体何をしたのかしら?」


「えっと、これも他言無用でお願いしたいんだけど。」


「ええ、誰にも言わないわ。」


「なら、、。実はね?」


俺はママンさんに、洗いざらい何があったのかを説明した。



プシュッ!ゴッゴッゴッゴッゴッゴッ!!


「ふぅ。なるほどねぇ。」


コーラを一気飲みして一言漏らすと、ママンさんは俯いて黙ってしまった。



これはきっと、言われるんだろうな。


そう思った俺は、自販機でコーラを4本買ったのであった、、。


はぁ〜〜。一気飲みしないで済む方法は無いのだろうか、、。

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