第23話 出発前からトラブルかよ




なんだかんだありましたが、リビングの家具達も元通りの配置に戻ったので、ベリアルを起こす事にした。



「ベリアル〜。起きろ〜。」


体を揺すって声をかけてみたが、まるで起きる気配がない。ベリアルのステータスなら、俺がビンタしても破裂しないかなぁ?



「ふふっ♪ベリアルさんは普通に寝てるんじゃなくて、ワカバちゃんのスリープで寝てるのよ?解除しないと起きないわ。」


「あっ、そういえばそうだったよ。母さんのドキドキ生着替えを見せる訳にはいかなかったからね!」


危うくビンタしてみるところであったが、母さんが止めてくれた。命拾いしたな、ベリアルよ。


俺はベリアルにかかったスリープを解除し、もう一度起こしてみる。



「ぁ、、うぅ〜ん。、、はっ!こ、これはこれは、魔王様。お恥ずかしい姿を見せてしまい、申し訳ございません。」


「いや、別にいいよ。眠らせたの俺だし。」


「そう言っていただけると助かります。」


そんなやりとりをしていると、エチゴさんも起きてきた。



「おはよう。、、こちらの方は?」


「おはよう、エチゴさん。こちらが例の魔族の人だよー。」


「もう助けてきたのかい?随分早かったね。」


「魔王様のお力添えにより、命を繋ぐ事が叶いました。、、あっ、私、ベリアル・ド・ベアルと申します。以後よろしくお願い致します。」


「これはご丁寧に。僕はエチゴ・エド。オカンの夫でワカバちゃんの父です。よろしくお願いします。、、ワカバちゃん?そちらの可愛らしいお嬢さんは、ベリアルさんの娘さん?」


「あははっ♪妻の顔を忘れたのかい?アンタは後で往復ビンタの刑よっ♪」


エチゴさんは、ビュンビュンッとビンタの素振りをする母さんを見て、ようやく誰か理解したようだ。



「え、、ええーーーっ!!?ちょっ、完全に子供になってるよーっ!!?」


「あ〜、、実はね?」


俺からエチゴさんに、何があったのかを説明した。




「、、という訳なんだ。ま、まぁ体は小さくなったけど、ステータスは半端なく上がったから、エチゴさんがビンタされたら首の骨折れちゃうかもねっ?」


「な、なるほど。、、ちなみに?」


「ん〜、多分無理だと思うよ?既に1度覚醒してるからね。」


「そ、そんなぁ〜っ。」


俺の言葉を聞き、ガックリと項垂れるエチゴさん。


まぁ、本当の事言うと、多分イケるとは思うけど、あの女から『女性限定で許可する』って言われてるからな。


下手にエチゴさんも子供にしちゃうと、何されるか分からない。あの女、自分の趣味の為なら、平気でやらかすタイプだからな。


それに、、コーラ4㍑一気飲みなんて、もうしたくないんだよーーーっ!!!



「まぁまぁ。とりあえず今日の予定なんだけど。ベリアルの救出は済ませたから、次はベリアルの家を作りに行くよ!」


「そうね。今6時ちょっと前だから、冒険者達はまだツギノ街に到着してないわね。もう少ししたら出発しましょっか♪」


「でも、オカンの姿を皆になんて説明すれば良いかな?この時間でも動き出してる人はいるからね。」


「あ〜、、その問題もあったね。とりあえず母さんはステータスの隠蔽をしておいてくれる?、、んで、俺たちで言い訳を考えるよ!思い付いたら挙手でお願いします。」



という訳で、急ではあるが『母さん子供になっちゃったよ事件対策会議』が始まった。



ビッ!


「はい、ベリアル君!」


「はっ!ここは一つ、母君には別人を演じてもらうのが無難かと、、。」


「ふむ。、、続けて?」


「はっ!小さくなる前の面影が、、あまりないですが、見る人が見ればきっと面影があるはずでございますので、母君の隠し子という設定でいかがでございましょうか。」


「ふ〜む。候補としておこう。」


「はっ!」


今ベリアルが出してくれた案。そうなんだよ、面影があんまりっていうか、ほぼないっていうか〜、、。


夫のエチゴさんが見ても分からなかったくらいだからなぁ。


この究極美幼女の魔力で再構成されたからか、どちらかと言うと俺の姉と言った方が信憑性があるくらいだ。


今さらだが髪色まで変化してきてる気がする、、?えっなに!?まだ完全に終わってなかったの!?


これ、多分だが瞳の色まで変化してる気がするぞ、、。



ビッ!


「はい、、俺の姉という事にしよう。髪も俺より少し濃いピンクゴールドになってるし、、母さんちょっとこっち見て?」


「ん?」


「、、はい。瞳も程良く赤くなってるし。あっ母さん、隠蔽の続きをどうぞ?」


「分かったわっ♪」



ピッ!


「い、異議あーり!」


「はい、エチゴさん。」


「た、確かに、僕が気付かないほど可愛くなってますが、それでもオカンは愛する妻です!」


「ふむ、それは分かる。しかし、それを外でも通すというのはどうなのかな?」


「、、というと?」


「つまり、今の母さん=前の母さんというのがバレたら、魔族になったってバレる可能性がある!まぁバレたところで、誰も母さんを捕まえておく事なんて出来ないけども。」


「父君の気持ちは分かるが、外では魔王様の姉君として演じられませんか?イチャイチャするのは家の中ですれば良いのでございます。」


「それともエチゴさんは、この状況で、外に出てからも母さんとイチャコラチュッチュしたいっていうの?ただのロリコン変態スケベ異常者にしか見えないからね!?」


「っ!!そ、そうだったね。僕が間違っていたよ、、。」


「ふむ。分かってくれたなら良し。では、母さんは家の外では俺の姉さんという事に決定!くれぐれも、呼び方に注意だからね?特にエチゴさん!」


「わ、分かってるよ。しかし、僕はなんで呼べば良いかなぁ。」


「ふ〜む。そこは母さんも交えて決めよう。母さんだって、こう呼ばれたいっていうのがあるかもだし。」


「そうだね。、、ちなみに?」


「うん。エチゴさんは若返ってステータスも上がったけど、造りは変わってないね。まぁ、母さんはエチゴさんの時の約3倍MP使ったもん。」


自分も超イケメンになってるのでは!?と、期待してしまったようだが、まぁ若返っただけでも満足してもらいたい。メタボ中年が、若々しい細マッチョになったんだから。



「はぁ〜。、、まぁ仕方ないか。オカンも凄く喜んでるみたいだし。」



なんて話しをしていると、母さんの隠蔽作業が終わったようだ。



「お待たせ〜。ワカバちゃんっ、人にステータスを見せるのってどうやれば良いのかしら?」


「あ〜、えっとね?自分に鑑定かけて、その中身を魔力で写し出すイメージだよ。母さんの魔力操作Lvだったら、余裕で出来るはず!」


「ふふっ、分かったわっ♪それじゃあ、隠蔽ステータスよーっ♪」



そう言った母さんは手をリビングの壁に向け、魔力を放つ。


壁にはバッチリ、母さんの隠蔽済みステータスが写し出されたのであった。




クレハ・エド(7)

種族 人族

性別 ♀

クラス ウィッチ・オブ・アビス

LV 1

HP 568

MP 672

STR 334

DEF 80

ING 409

DEX 76

AGI 219

属性 闇・火・水・風・土


[スキル]

鑑定Lv1、アイテムBOX


[パッシブスキル]

ワカバの姉Lv1、状態異常無効

全属性魔法、魔力操作Lv99


[魔法]

全魔法、ビンタLv99、往復ビンタLv99


[補足]

ワカバの姉。わずか7歳にして、全ての魔法を極めしウィッチ・オブ・アビスに到達した、歴史上2人目の天才魔法使い。クレハのビンタで敵は破裂する。


身長119cm、体重○○kg。

B88cm、W56cm、H82cm。




「ワカバちゃんのお姉ちゃんにするって話してるの聞こえたから、こんな感じでどうかしら?」


「うんうんっ、良いと思うよ!名前も俺の姉さんっぽくて良いね!」


「ありがとっ♪それと、ベリアルさんの事もなんて答えるか決めなきゃよ?」


「ベリアルは俺の執事で良いと思うよ?まぁ、今日街を出るまでの間だけだけどね。」


「オ、、クレハちゃん。このスリーサイズは少し無理があると思うよ?」


バンッ!!パラパラパラ、、

「何を言ってるのかしら?」


「い、いや、、ごめんなさい。」


ふむ。母さんのSTRでテーブルを叩くと、木っ端微塵の一歩手前まではいくんだな。


前のノリでエチゴさん叩いたら、、。注意しておくべきだね。



「さて、それじゃあ早速、魔の大森林に行ってみよう!」


「おーっ!」」」


こうして、皆で外に出る。



「あ〜っ!ワカバお姉ちゃんだーっ♪」


「えっ?、、あ、あぁサクラちゃん。お、おはよう。」


エチゴ屋から出ると、向かいの店の2階の窓から、サクラちゃんが声をかけてきた。



「えへへっ♪ワカバお姉ちゃんっ、夜は何処に行ってたのーっ?」


ビクッ

「えっ!?よ、夜って?」


「う〜んと、、確か3時くらい?おトイレに起きたら、ワカバお姉ちゃんが真っ黒な服で窓からお出かけしてた!!」


ふむ。完っっ全に目撃されてますね。

しかし!見られたのがサクラちゃんで良かった。何か口止めお菓子でもあげれば大丈夫だろう。



俺はサクラちゃんに手招きして、こっちに呼び寄せる。


するとサクラちゃんは何を思ったのか、2階の窓枠に足をかけたではないか!


何をする気なのか、言われなくても分かる。これはいかん!



「ちょっ待っ、、


「えいっ!」ピョンッ



俺の制止も間に合わず、サクラちゃんは2階の窓から飛び降りてしまった!!


自分と同じくらいの体格(実際には一回り小さいが)の俺が、普通に飛び降りてたんだ。

自分も窓から出てみよっと♪となるのは当然の流れである。


だが、体の頑丈さは3000倍以上差があるんだ!


いくら体が少し大きいからといっても、4歳児である事に変わりはない!


、、仕方ない。



俺は地面をひと蹴り。サクラちゃんの落下速度を遥かに上回る速さで、落下予測地点に先回りする。


バリバリンパリーンッ!!と、風圧で入口のガラスは大破したが、サクラちゃんを無事にキャッチ!


お姫様抱っこの状態ではあるが、これはちゃんと怒らないとダメ。


今回は俺がいたから大丈夫だったが、下手したら死んでしまっていたかもしれないんだ。



「サクラちゃん。2階から飛び降りるなんて、危ない事しちゃダメだよ!」


「え、、でも、いつもやってるよ?」


「ん?今なんて?」


「だから、いつもあの窓から飛んでるよって。」


「そ、、そか。」


どうやら俺の早とちりだったようだ。

、、さすが異世界。サスイセであるな。



「ちょっ、何事よーーっ!?うわ〜っ入口めちゃくちゃじゃなぁいっ!!」


店の奥から、シュワちゃ、、ゴフンゴフンッ!ママンさんが現れた。


レザーパンツとレザージャケットが良くお似合いですね。

と、心の中で褒め称える俺なのであった。



、、なんて言い訳しようかしら。


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