第3話

 独りぼっちだった。


 昨晩までは傷をなめ合う友がいたのに、急に暗い暗い夜の海に放り出されたような気分。


 久々にテレビでも見てみようか。


 そう思いながらも、体の下のスマホを手探る。


 YouTubeを立ち上げ、登録している同年代の女子ユーチューバーのチャンネルを開く。

 新しい動画をクリックすると、彼女よりもっと有名なユーチューバーとデリバリーの料理を食べながら、だらだらとおしゃべりをしている。


 芸人でもない素人の女の子のおしゃべりなんて、たいしておもしろくはない。


 ずらりと大きなテーブルに並んだ料理を見て、これだけウーバーで買ったらいくらになるんだろうと暗い気持ちになって、莉子はスマホの電源を切った。


「どいつもこいつも・・・」


 そのうち、YouTubeも見れなくなりそうだ。


 莉子はお金がない。

 時給1600円で7.5時間勤務、残業なし、交通費なし、優しさなし、笑いなし・・・

 カレンダーの具合により手取りは二十万円を切ったり切らなかったりする。


 地方出身の二十六の女が首都圏で一人暮らしするには心もとない金額だ。


「祝日の日数によって左右される私の人生っていったい・・・」


 つぶやくと虚しさが増す。

 莉子は家賃を抑えるために埼玉に住んでいるが、セキュリティにある程度配慮した物件となると、古すぎる物件はNGとなる。


 狭くてもせめて風呂は独立していてほしいと小さな願いをかなえると、家賃はどうしても6万円は超えた。

 仕事に就けない期間を考慮すると、貯金もできるだけしたい。


 女の一人暮らしは、金を稼いでなくても金がかかる。

 もっと都心から離れたらと思うが、交通費が出ず、次は職場がどこになるかわからない身の上だから、それも躊躇してしまう。


 食費を抑えようと自炊をし、弁当を作り、水筒を持ち歩き、そんなことをしてたら時間も食われる。

 バイトも考えるが、通勤にも時間がかかるので、そこまで体力は残っていない。


 ストレスのたまる職場で疲弊して、これで新しい荷物まで抱えるとパンクすることは目に見えている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る