第6話 寝不足
結局朝まで寝付けなかった。
理由は違えど昨日に引き続き今日も寝れなかった事により、なんとなく体調が悪いことを自覚する。
「ふぁ〜〜。おはよう。お主はほんとに起きるのが早いのぉ」
大きな欠伸をし、目に涙を浮かべながら起きてきた神宮さん。彼女は夜中に起きたことを知っているのだろうか。
「おはよう。あのさ、夜中に神宮さんが知らない女の人になったんだけど覚えてる?」
どう説明していいかわからないが、とりあえず起きたことを端的に伝えてみるが、「知らない女の人?」と聞き返してくる。
「うん。確か、タノシレイミって名乗ってたんだけど」
「たのしい、れいみ?なんじゃその変わった名は。妾は知らんぞ?夢でも見たのではないか?」
「いや、夢じゃないよ。その人と少し話したんだけど、その後急に光ったと思ったら次の瞬間には神宮さんになってたんだよ」
「妾が別の人になって、また妾になるとかありえんじゃろ。妾にはそんな力ないぞ?」
「そう言われてもさ―――」
「ああもう!知らんったら知らん!夢じゃ夢!」
誤魔化しているかと思い、更に追及しようとしたが、神宮さんの声で母さんが起きてきてしまいタイミングを逃してしまった。
「今日の朝食はなんじゃ?・・・ん?お主具合が悪そうじゃな?大丈夫か?」
少しすると機嫌を直した神宮さんがキッチンに来るが、俺の顔を見て心配そうに問いかけてくる。
「大丈夫、ただの寝不足だから」
お前のせいだとは言えず、居間に行けと手を振ってキッチンから追い出そうとするが、彼女は俺の手を掴んでくる。
「寝不足は体に悪いぞ。今日は休んでゆっくり寝とれ。先生には妾から報告しておくから」
「大丈夫だから。気にしないで」
「いやダメじゃ。お主が倒れたら誰が晩飯を作るんじゃ」
そっちの心配かよ。
だが実際、気分も悪くなってきていた。この状態だとどっちみち授業中に寝てしまうだろう。それならいっそ休んで家でゆっくり寝た方がいいはずだ。
俺は心配する母さんに休むことを伝え、神宮さんと母さんが家から出るのを見送ったあと布団に潜った。
あっ2人の弁当作ってないや。
______
物音で目が覚める。
枕元の時計を見ると針は午後6時を刺していて、9時間近くも寝てしまっていたのかと焦って起きる。
「おお、起きたか、今夕飯を作っておるからの!」
学校が終わって帰ってきたのか、制服姿の神宮さんがキッチンから声をかけてくる。
彼女は手に持った包丁を起き、冷蔵庫からゼリーを取り出し、スプーンと一緒に俺に差し出してくる。
「朝からなにも食べてないじゃろ?体調が悪い時はこういうのがいいと思って帰りに買ってきたのじゃ。食え」
神宮さんが俺のために?
その気遣いが嬉しくて感動を覚える。
「そんな気遣い出来たんだな」
「妾をなんだと思っておる!そんな事を言うなら返せ!それは妾が食べる!」
ごめんごめんと謝り、ゼリーの蓋を開ける。
「それを食べて早く元気になるんじゃぞ」
そういうと彼女は、まるで子ども相手にするように俺の頭を撫でながら優しく微笑む。
彼女から感じる温かさと、その優しい笑顔に思わず見惚れてしまう。
「ふふっ。なんだか子どもみたいで可愛いのぉ」
「う、うるさいなっ!」
俺は頭に乗せられた手を弾くと、「なんじゃ神様が心配してやっているのに」と言いながら神宮さんはキッチンに戻っていく。
ってか神宮さんが夕飯作ってるって言った?
それから程なくして、うちのキッチンに火柱が上がるのだった。
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