ばっきゃろい




(だあああああ!早口で言い過ぎた!)


 すだつってほしい。

 ではなく。

 好きだ付き合ってほしい。

 そう告白するはずだった。のに。


『釣り道具持ってないから無理』


『好きだった』


 先を越された告白、なのか。

 私も好き。

 ではなく。

 好きだった。

 過去形。

 つまり今は、好きではない、ということなのか。


(だあああああ!口がもたついて!かのえに訊けねえ!)


 いつの間にか接着剤でもつけられたのだろうか。

 空が上手く動かす事ができない口に苛立っている間に、かのえはペダルを勢いよく漕いでスワンボートを橋へと向かわせていた。

 もう話は終わったと言わんばかりの行動である。

 心なしか、いや、確実に、顔がすっきりしている。

 やはり、過去形なのだ。

 今は好きではないのだ。

 ならば、わざわざ言わなくても。

 いや、言ってくれないと困る、か。

 こっちはもう好きではないのだから、告白されても迷惑なのだとわざわざ伝えてくれたのだ。


 ありがとう。

 最後にお礼を言うべきだろう。

 気持ちに決着をつけさせてくれて、ありがとう。


(なんて言うかばっきゃやろう!!!)


 ちゃんと告白してない内から、諦められるかってんだ。


かのえ!」


 もたもたしている間に、あっという間に辿り着いてしまった。

 かのえは急用でもあるのかのように、すたこらさっさとスワンボートから降りて、橋を渡って公園から出ようとしていた。

 空もまたスワンボートから降りて橋を渡り、庚を呼びながら追うが、庚が止まることはなく、そして、空が追いつくことはなかったのであった。

 とある神社に辿り着くまでは。











(2024.1.29)



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