ここでいいのに




 思い立ったが吉日である。

 かのえはベンチから立ち上がって、おせんべいとおかきを嬉々として食べ続けている二柱の神様に、告白してきますと晴れ晴れとした顔で宣言するや駆け走った。


 不思議だった。

 あんなに緊張していたのに。

 あんなに恐怖していたのに。

 今はどちらも持ち合わせていない。

 あんなに重かった心身もとても軽やかだ。

 早く告白したい。

 早く告白して、振られて、二柱の神様に慰めてもらうんだ。


 かのえは特急で空の家まで到着すると、スマホショルダーで首から下げていたスマホを手に持って空に電話。コール音が何度か鳴ってのち、空が出たので、家の前に来ていることを伝えた。告白したいから早く来て。とも。

 すっとんきょうな大声を暫く出し続けてのち、空はわかったと言って電話を切った。

 十分後。

 家から出てきた空は制服姿だった。

 ちょっと移動しようぜ。

 空から言われたかのえは別にここでいいのにと思いつつ、わかったと言って、空の後を追ったのであった。











(2024.1.22)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る