第51話 久々のモフモフだ
商館の屋上でラファエルさんが南海傭兵団と激戦を繰り広げているであろう中。僕は商館の前で深刻なモフモフ不足で苦しんでいたがフェリーさんが気を利かして商会で雇っているメイドの獣人を連れてくるらしい。これでなんとか体調が良くなる。
少しして、フェリーさんが青髪ショートヘアで猫耳が付いた少女を連れてきた。
「この子はリーンといいます」
「あ、あの、私は何をすればいいでしょうか?」
リーンさんは恥ずかしそうに体を縮こまらせていた。
青いケモミミと尻尾に触るのは初めてかもしれない。僕は胸を躍らせながら立ち上がった。目の前にモフモフがあるだけで立ち上がる勇気が湧いてきたわけだ。
「後ろ……向いて……く、ださい」
僕は息絶え絶えながらなんとか要求を伝えた。
「なんで死にかけなのよ」
ルティアさんは相変わらず僕に呆れていた。対照的にエリアナはずっと心配そうにしていた。
「カシュー様ずっと可哀想」
「どこが……リーンさん、申し訳ないのですがこの子のために背中を見せてくれませんか?」
「は、はい……」
リーンさんはおそるおそる背中を見せる。メイド服のスカート越しに臀部の辺りから尻尾が飛び出していた。このスカートを考えた人に金貨を送りたい。尻尾を見えるようにするなんて……天才の発想としか思えない。
僕はパチパチと拍手した。メイド服、そしてそれを着こなすリーンさんに対して。
「では触らせていただきます」
「は、はい?」
リーンさんは不思議そうな声を出してじっとしていた。
僕は尻尾を生まれたてのひよこを触るように優しく両手で包んだ。
「……っ」
リーンさんの体が少しビクッと動く。あまり触られ慣れてないのかもしれない。でも安心して欲しい、数々の尻尾に癒しを与えたといっても過言ではないこの僕を信じて欲しい。
僕は青い尻尾を指の腹でスリスリと擦る。そのあと両手で毛をほぐす。一つ一つの毛を慈しむように愛でるように気持ちを込めてモフモフと戯れた。
「はぅ…はぅ……あ」
リーンさんは嬌声を上げていた。
「あわわ、なんだかいけないものを見ているみたいです」
エリアナは顔を赤くしながらルティアさんの背後に隠れて、こちらの様子を窺っていた。
「ただ尻尾を触られているだけよ」
ルティアさんはけろりとした顔をしていた。
「しゃがんでもらってもいいでしょうか」
「はぃ……」
リーンさんは弱弱しい声でしゃがんでくれた。
僕は麺を指で摘まむように、リーンさんの両耳をそっと摘まんだ。そして耳を完全に閉じないように何度も摘まんでみせた。至福の時間だ。
「はぅあ!」
リーンさんは背筋をピンと立てて固まった。
「嫌でしたか?」
「いや……その心地よくて」
「それなら良かったです」
僕の身も心も充実していくのを感じる。まるで砂漠を何十日も歩いてようやくオアシスを見つけた、そんな感覚だった。
そのとき、屋上から二人の人間が落ちてくる。二人は空中で剣を交じらせながら戦っていた。ラファエルさんとカーディだ。それと同時に屋上から壁を伝っていくつもの稲妻がラファエルさんを襲う。
「ぐぅ!」
ラファエルさんは白色の魔力を剣に纏わせて雷を受け止めるが下へと落下する。尻餅をつくが、体をくの字に曲げて跳ねるように立ち上がり、後方へと跳ぶ。
ラファエルさんに傷はないが一進一退の戦いを繰り広げているようだ。
「ラファエルさん!」
元気満々になった僕は駆け出す。
「おおう! 体調は無事なのか!?」
「フェリーさんとメイドのリーンさんのおかげで大丈夫です」
僕は背後を振り向くとリーンさんと目が合う。彼女は恥ずかしそうに目を逸らした。恥ずかしがることはない、君は僕に癒しをくれたんだ。
っと今はさすがにそんなことを考えてる場合じゃないや。
「『元素分解』!」
「なにっ!?」
僕はラファエルさんと交戦しているカーディが着ている服と武器をこの世から消した。
「…………」
全裸カーディは無言で立ち止まってしまった。
「まだやるかい? 大人しく捕まらない?」
ラファエルさんは大剣を肩に担ぐ。これでカーディもまともに戦闘できないはずだ。
「ちっ……だが時間稼ぎはこれで十分だ」
カーディは舌打ちをして意味深なことを言っていた。
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