第48話 『堕ちた剣帝』と戦った①
屋上の空いた穴から現れた二人の男は全裸のカエサルを見て口を空けて固まっていたが、
「くっはははは! おいカエサルさんよ! なにふざけてんだよ!」
茶髪の青年は爆笑しながらカエサルに近づいた。
「ふざけてねえよ! あのガキにやられたんだよ」
「あ? なんだあいつ?」
「おかしな力を使うガキだ。あいつは相手の体を一瞬で消すことができるうえに、一時的に攻撃を無効化させられる」
「へぇ……あんな小童が」
茶髪の青年は僕を品定めするような目付きで見ていた。
一方、現れたもう一人の男。金髪の中年男性が僕達の方に駆け寄ってきた。
「エリアナ姫、ルティア姫! 大丈夫か!?」
「大丈夫よ。この子のおかげで」
ルティアさんは僕を顎でさす。
「え、君があの『黒い雷』を退けったていうか……全裸にした子かい?」
「僕は少し特殊な力を使うことができて自由自在に物体や生き物を消すことができます」
「それが本当だとしたら凄いな」
金髪の男は感心するように目を丸くしていた。
「信じてくれるんですか?」
「そんな嘘ついて何になるんだい、それにルティア姫とエリアナ姫を助けてくれたのは真実だからさ」
気さくな方だ。
「この人は王国の騎士団長よ。名前はラファエル・ファンクス」
「僕はカシューと言います」
「おう、よろしくな」
僕はラファエルさんと握手を交わす。
「お怪我治しますね」
「すまないな」
エリアナはラファエルに回復魔法をかけ始める。致命傷はないが彼の体は斬り傷だらけだ。
「ラファエルさんがここまで傷を負うなんて、考えられませんわ」
「あいつの魔法厄介でさ~」
ラファエルさんは項垂れていた。ショックを受けているようだが抑揚のついた喋り方のせいで分からない。
「おい小童」
茶髪の青年は僕に赤い刀身の剣を向ける。
「あいつの名はカーディ・カルディよ。『堕ちた剣帝』と呼ばれている男よ」
「なるほど」
僕は独りでに頷く。『元素分解』という一撃必殺があるとはいえ油断しないようにしよう。カエサルみたいに動きが速いと僕のスキルが間に合わなくなったりもする。
「カーディ、あのガキの力に気を付けろよ」
「分かってる。それにカエサルさんよお、聞いた感じ俺様の魔法なら打ってつけの相手だろうが」
カーディは得物を持ちながら、手首をくるくると回す。相対する僕は前に出る。そして相手を捉えるように右腕を前に構える。
「『元素分解』」
「!」
カーディは声を上げる暇もなく砂のように体が消えていった。
「一瞬で!」
「すごい……」
ラファエルさんとルティアさんが感嘆していたが、
「半信半疑だったが本当に一瞬で倒すとはなあ!」
床に空いた穴から消したはずのカーディが飛び出して屋上に降り立っていた。
スキルが発動した手応えは感じた。でも目の前にカーディがいるのは事実だ。さっきのカーディは魔法で作った分身体と考えるのが妥当だ。
「『元素分解』」
「グッ!?」
僕はスキルでカーディの右腕を消滅させた。肩から先が無くなった腕からは多量の血が流れていた。
今度こそ本物に違いない。僕は三度目の『元素分解』を行使した。カーディは消えてなくなるが、
「残念だったな俺様の分身は精巧に作られてんだよ」
「うわ、たくさんいる」
天井の空いた穴から次々とカーディと同じ顔を持つ人物が現れた。うわとか言ってしまった。一〇人位出てきた。
「カシュー、カーディの分身は斬撃しか放てないけどさ、身体能力は本人と同等で厄介なんだよ」
「確かに厄介ですね」
僕は背中越しにラファエルさんのアドバイスを聞きながら目を細める。
でも分身だって無限に作ることはできないはずだ。魔力が尽きるまで『元素分解』を行使するしかない。
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