第42話 南海傭兵団を知った
大通りに出た僕はフードの男達と衛兵らの戦闘を観戦していた。フードの男は三人、対して衛兵は七人もいる。しかし、フードの男は四方八方に走りながら衛兵らに斬り込んでおり、衛兵は相手のスピードに対処することができずに防戦一方だった。
とりあえず僕はスキルを使ってフードの男達の着ている服と武装を跡形もなく消滅させた。全裸にしたわけだ。
「っ!?」
衛兵たちは突如、全裸になった男達を見て固まっていた。
一方、フードの男達は状況を把握できず、辺りを見渡していた。
「お前なんで服を着てないんだ!」
「お前も着てないぞ!」
「なっ⁉ 真っ裸じゃねえか!」
彼らは互いの体を指差して驚嘆していた。
「なにがなんだが分からんが捕らえよ!」
衛兵たちは裸になった男達を追いかける。
「く、くそ! 意思を糧に駆動せよ身体よ!」
全裸達は身体強化の魔法を唱えて敗走するが僕は男達の進行方向にある街路を泥のように軟化させた。
「なんだ! うわ!」
全裸達は前のめりで転んでしまう。
「な、なにがお、起きてる……いや好機だ! 捕えよ!」
茶色の髭を生やした衛兵が戸惑いながら命令すると、部下であろう残りの衛兵達は全裸達を次々とうつ伏せになるように拘束する。
「貴様ら何者だ! こんな日に爆発を起こすとは……許せん!」
茶色の髭の人は全裸の男を見下ろして叫ぶ。
「…………」
しかし、全裸は口を噤んだままだった。
さっき倒したフードの男達も僕が質問しても口を噤んだままだった。そして何者かによって口封じのために殺されていた。
「………なに?」
全裸はぽつりと呟いて不思議そうな顔をしていた。
本来ならここで術式が発動して自分は死ぬはずだと思っただろう。しかし、僕はそうさせなかった。服を消したさい、舌に書かれているであろう術式も消したわけだ。
「こいつらを連れていけ!」
全裸の男三人は衛兵に両脇を抱えられながら連れ去られてしまった。
茶色の髭の衛兵はその場に残った衛兵と相談していた。
僕は空気中の水分でシャボン玉を作り、体に纏わせる。そして、シャボン玉内に入る光の屈折を調整し体を透明にした。そろそろと衛兵に近づいて盗み聞きすることにしたわけだ。
「魔法と剣術を駆使する黒フードの集団といえば、心当たりは一つしかありませんね」
衛兵は茶色の髭の人に話しかけていた。
「南海傭兵団か……そんな連中がきているとは考えたくないのだが」
「あいつらは金のためならば何でもする集団ですよ。こんな無慈悲な爆発行為をするフードの集団といえば彼らぐらいしか」
「もし南海傭兵団の『黒い雷』がこの町に来ていればランド自治領の戦士では太刀打ちできぬ――」
茶色の髭の人は険しい顔をしていた。
「――いや待て、この町に来ているフエンジャーナー王国の騎士団長ならば勝てるか? いや……南海傭兵団には『堕ちた剣帝』もいる」
なにやら一人で考えごとをしており、その話を聞いた部下は眉に皺を寄せており、困ったような様子を見せていた。
どうやらあの集団は南海傭兵団と言うらしい。『黒い雷』、『堕ちた剣帝』という異名も気になる。
話を聞く限り悪名高く、凶悪な連中らしい。
さて考えを整理しよう。まずあいつらの狙いを考えるんだ。
無差別に爆発を起こしていたように思えたが傭兵団というのは基本的にお金で雇われる。
雇用主に町の爆発を命じられたのだろうか? 彼らが受けた依頼内容は分からないが他に目的があるはずだ。
洞窟に入っていくフードの男達を尾行したときの会話を思い出してみよう。
『おい、手筈はどうなってる?』
『準備はバッチリだ』
『俺達、陽動部隊が機能すれば間違いなく目的は果たせるはずだ』
『そうすれば大金と魔物は俺達の物になるな』
大金は依頼の報酬だろうか?
いや、違う可能性もある。自らを陽動部隊と言っていたので爆発を起こし、衛兵達の気を逸らしている間にどこかからお金を手に入れる算段があるのかもしれない。
魔物については皆目見当つかない。
この町で一番大金がありそうな場所と言えば……
「コパー商会」
僕は商会の建物があるであろう町の中心地に目を向けた。
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