第26話 神をもてなしてみた①
スロさんとオレシャさんはクッキーとお茶をルナとレリアに用意し、なぜか食卓につかず僕とリルの横で背筋を伸ばし、後ろ手を組んで佇んでいた。
同席するのが恐れ多いのだろうか。ちなみにラッカー長老は不在だ。今頃、村の重役達は夜、ルナとレリアをどうもてなすか話し合っているのだろう。
真向かいにいるレリアは僕の目を見て話を切り出す。
「カシューさん、村での生活は楽しいですか?」
「はい、楽しいです」
「それは良かったですわ、ではリルさん」
レリアがリルに話しかけていた。
「は、はい! なんでしょう……」
リルは声が上擦ったり、語尾を弱めたり様子がおかしかった。緊張しているのだろう。
「カシューさんをどう思っていますか?」
「えっ、ど、どうって?」
リルは僕の顔をチラッて見てレリアと向き合う。
「貴方にとって良い存在かどうかを聞いてるのですよ」
レリアは何を探ろうとしているのだろうか。もしかしたら村人達の僕に対する心象を聞いているのかもしれない。
「もちろんいい存在です」
リルは横目で僕を見ながら喋る。
「その……カシューは……」
そのあと、リルは言い淀むが
「凄く頭もいいですし、たくさん村の人を助けてて、尊敬もします。あと凄く強くてその……憧れみたいな……あぅ」
気恥ずかしくなったのかリルは赤面する。
「ふふっ、随分と好かれてますわね」
「ま、まあ友達としてね!」
レリアに応じるリルはやたらと語尾を強めていた。
するとレリアの隣にいるルナが不思議そうな顔をしていた。
「なんでカシューさんの印象聞いたの?」
「私のためです、後で話しますわ」
「分かったわ」
ここでは言いにくいことらしい。
その後、しばらく家で一息ついた後、二人をあるところに案内した。
「いいところに連れてきましたね」
横にいるルナは僕を褒めていた。
今、僕らの目の前には村共用の風呂屋があった。
木造建築で作られており、風呂の桶も木製だ。日本で言う檜風呂のようなものだ。
「では二人でゆるりとお楽しみください」
これで僕は場を盛り上げなくていいし、しばらく自由行動ができる。体を【元素操作】させて粒子化させよう。それで遠くまで行って珍しい植物を探してこよう。
僕は踵を返すと。
「何逃げようとしてるんですか」
「あう」
ルナに首根っこを掴まれてしまった。
「いや、僕、男ですよ。一緒に風呂なんか入れませんよ」
「あら
「いや、ルナさんとレリアさんが平気でも目のやり場に困るんですよ。それに今は子供でも中身は大人ですよね」
僕は無理やり逃げようとしたが。
離れられない! 尋常じゃない力だ!
「痛い痛い、かなり痛いです」
「村の人は恐れ多くて私達と混浴しないので退屈しのぎについてきてください。このまま首を千切ることもできます」
「女神なのにパワータイプすぎる」
まさかこれほど怪力だったとは。僕は仕方なく一緒に風呂屋に入った。
ここの風呂屋の浴室は男女別に分かれてない。時間帯で男女別に分かれている。
脱衣所で僕はルナとレリアに背中を向けて服を脱ぎ、腰にタオルを巻いた。
「もういいですか」
「いいですわよ」
僕は後ろを振り返った。二人はちゃんとタオルを胸の上まで巻いてくれていた。
僕達は大浴場に入った。大浴場も木製だ。
「ふぅ……」
レリアは天井を仰ぎ心地よさそうにしていた。
「神様って風呂に入るんですか?」
気になったことを聞いた。
レリアが背伸びをした後に応じてくれた。
「私達の体は自動的に清浄されるので入る必要はありませんわ」
「そうなんですね」
自動洗浄機能付きのトイレみたいだ。
例えが悪すぎたかも。
「自動洗浄機能付きのトイレって……」
首までお風呂につかっているルナはじーっと目を向けてきた。
「心を読まないでください」
「心を読まない術を身に付けなさい」
どうやって?
「私が渡した呪文書に書いてありますわ」
レリアが疑問に答えてくれた。
二人は明日の昼までこの村に滞在するので、今日の案内が終わったらすぐにその呪文を覚えよう。
しばらく風呂に入ったあと、僕達は村の宴会会場へと行った。
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