第21話 竹を見つけた①

 僕はこの前、リル、エステル、シャノとお出かけした際に見つけた、とある場所に向かった。


 あの日は収穫があった。


 竹の生息地を見つけた。村の者達はすでに見つけていたかもしれないが竹を利用した物は村にはない。村人達が竹の有用性に気付いていれば、きっと竹を利用した物が村にあるはずだ。


 きっと竹の有用性に気付いていないんだ。竹は強度があるうえに中身がスカスカなので断熱性も高い。建築材料としてだけではなく、ざる、かご釣竿つりざなどにも利用できる優れものだ。何よりも成長が異常に早いので繁殖させれば容易に入手できる資源となる。


 これを利用しない手はない。


 僕は竹の生息地を前に立つ。


「スキルでばらけさせよう」


 僕は両手を叩く。その瞬間、目の前にある竹は等間隔にばらけてボロボロと地面へと落ちていった。スキル【元素操作】でバラバラになるようにしたわけだ。


 とりあえず20本ぐらいの竹をばらけさせた。このまま僕は数多の竹を宙に浮かせて村へと帰った。


 村に着くと村の者達は僕の周りに浮かぶ竹の切れ端を見て目を丸くしていたが、誰も竹について聞いてこなかった。


 僕がこうして皆にとって珍しいものを持ってくるのは日常茶飯事だからだ。


 さすがにこの数の竹を抱えて家に入るのは迷惑なので家の裏で作業しよう。


 家の裏ではリルが手のひらから炎を宙に放っていた。


「リル、お疲れ」


「あ、カシュ―どこ行ってたのよ。手合わせしようと思ったのに……って何それ、この前、見つけた、変な木だよね」


「そうそうそれ」


 僕はたくさんの竹が正方形になるよう地面に並べた。


 村の者達がこの竹を見つけているなら名前が付いてるはずだ。


「あっ、ママ!」


 家から洗濯物を抱えたオレシャさんが出てきた。


「あら、外で遊んでたのねぇ」


「遊びじゃないよ修行だよ。魔法の威力を上げるために最大出力で魔法を打ってる!」


 リルは力強く遊びではないことを主張した。


「あのオレシャさん」


「あらカシュー様なにかしら」


「この木の名前知っていますか?」


 僕はこの世界における竹の呼び方について尋ねた。


「うーん、何かしら見たことないわ」


 珍しい木なのかもしれない。


 僕は「家から図鑑を取ってくる」と言い、急ぎ足で移動した。


 家には村の者達が独自で作った図鑑がある。図鑑には多種多様な植物が記載してある。ちなみに植物は絵で描かれており、その横に植物についての説明文が書いてあるという構図だ。


 すぐさまラッカー長老の部屋に行って『レガリアの森図鑑』を借り、図鑑を持ってリルの下へと戻った。


 僕はリルの横で図鑑のページをペラペラと捲る。ちなみにオレシャさんは洗濯物を干していた。


「うーん」


 竹らしきものが載っているページが見つからない。もしかして未発見の植物なんだろうか?


 この森は大樹から流れる神聖な魔力のおかげで多種多様な植物が生まれる。竹は、最近、生えてきた植物なんだろうか。


「よっと」


 リルは図鑑を見るのに飽きたのか竹の切れ端で器用にリフティングしていた。


「あった!」


 僕は図鑑の後ろの方。その他と書かれている項目を見て竹と似た絵が描かれているのを見つける。


 発見した日は三四年前。発見場所はレガリアの村付近。名前はワイテデル木だ。


 説明文には色々書いてあるが、村の人達は竹を放置したところ繁殖し過ぎて大量に伐採してしまったらしい。


 竹は繁殖力が強い。村の者達が竹を有効利用する気がなければ切るのが自然かもしれない。


「名前分かったよ。ワイテデル木だ」


「変な名前ね」


 リルは怪訝な顔で竹のリフティングを止めた。


「で、これで何しようっていうのよ」


「ワイテデル木は凄い木なんだ」


「ふーん」


 僕のスキルで竹の形を変えてみよう。


 僕はまず竹で水筒を作ってみることにした。


 【元素操作】で竹を独りで変形させた。


 竹の中身は空洞だが竹の節目ごとに壁があるので穴を空けた。穴は四角にした。そしてその穴に栓をするために別の竹を穴にはまるように削った。後は水筒の本体に紐を通せるように竹に穴を空けてやった。


「なにこれ?」


「水筒だよ。ワイテデル木は熱を遮断する力があるから水筒に使えるんだ。ただこの竹は採れたてだからね。乾燥させて消毒させてやらないとそのうちカビ生えるよ」


 僕は説明しながら水筒に興味を示していたリルを見ていた。


 革袋の水筒があるのでこの水筒が皆を使ってくれるかは分からない。


 ただ竹で色んなものを作れるので片っ端から作っていこう。

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