第19話 醤油を作る準備をした
料亭の食卓で食事を終えたあと、ネオンさんとシャノさんに醤油の作り方を説明していた。
「菌を使うんですね」
「うん」
醤油作りには菌が必要だということを伝えた。菌の役割は旨みを引き出すことだ。
「嫌がらないの?」
僕は不安そうに尋ねた。
森の民達は菌についての知識がないと思う。菌という存在そのものを嫌がったりしてないので不思議だった。
「だって……」
シャノさんは母親と目を合わせる。
何を出すんだろう。
「「カシュ―様の言うことだからきっと大丈夫かなって」」
「なるほどね」
僕が精霊女王の化身だということになっているおかげで信頼され、未知の食べ物に対する恐怖があまりないようだ。
「では今からさっき説明した通りの作り方を改めて羊皮紙に書きます」
僕は羊皮紙と羽ペンをドロシーさんから受け取った。
書くことは手順と一つ一つの作業をする意味だ。
大まかな作り方は大豆と小麦と菌の種になるもの(
まず大豆と小麦と菌の種を混ぜる前にやることがある。
大豆は旨みを凝縮させるために茹でなければならない。
また、小麦は大豆と混ぜる前に砕くのだが、最初に水分を抜かなければならないので炒る必要がある。火を通すことで小麦の風味を引き出すこともできる。
菌の作り方は米を水に漬けてから蒸して数日、放置して作らなければならない、米の周りにふわふわの菌が付いた状態になれば種麹の完成だ。
また寝かす前に塩水を加えるのは大豆の旨みを引き出しつつ腐らないようにするためだ。
僕は羊皮紙をドロシーさんに渡した。
「大変そうだね~。一年近く寝かせるなら多めに作っていいと思うんだけど」
「でも失敗したらもったいない気もします。最初なのでスケールは小さくした方がいいかなと」
「なーに言ってんだ。あたし達には魔法や魔法の道具がある。聞いた感じ温度管理が難しそうだけどいけるわよ」
化学品を開発するときもスケールが小さい量を試作してから大量生産に移行する。きっと、その癖がついていて僕はチャレンジする心意気がなかったんだ。
「そうですね。僕が臆しすぎていました」
こうして醤油を作る準備が始まった。
そして瞬く間にこの話は村中に広がった。
ラッカー長老は外に長机を並べさせて、魔力を使って火が点くコンロを数十個置くようにして皆に作業を進めさせた。僕の想定以上におおごとになっていた。外にいる者達は大豆を蒸したり、小麦を炒る。
ちなみに菌を作る人達はネオンさんの料亭で作業していた。
「皆さんありがとうございます」
僕はラッカー長老含む村の重役達に挨拶した。
「わたしらもそのショーユウ―というのが気になるんじゃ、なんでも魚に合うとか、肉やサラダに合うとか」
僕は皆にドロシーさんに醤油という名前を伝えたのだがなぜかショーユウーと伝わってしまった。英語みたいだ。
僕が前世の名前、
一方、僕達、子供は空いている長机で作業していた。炒められた小麦を麻袋に入れてから、太めの木の棒で小麦を砕く作業をしていた。
僕はシャノさんと一緒に麻袋に入った小麦を袋越しに砕いた。
「なんだが楽しいです」
「そう? こういう作業が好きなんだ」
コツコツとした作業に夢中になる気持ちはなんとなくか分かる。
「いいえ作業というより、皆で同じことしてるのが感動的で」
シャノさんはニコッとした顔で首を傾げる。
村全体で同じことしているという一体感が好きなんだ。
「それに横にカシュー様がいますし」
「僕もシャノが隣にいるから退屈しないよ」
「えへへっ、本当ですか?」
シャノさんはパァと顔を輝かせて尻尾を揺らめかせていた。
僕は尻尾に釘付けだった。
「将来、お母様の料亭で一緒に料理できたらなんて思っちゃたりして……」
「そうなの?」
「えっ、あっ、そういうことできたらいいなと思ってます、そのカシュー様、色んな調理方法知っていますから……」
「たまに料亭で僕が手伝いに行くって話?」
「い、いいえ、大人になったら料亭でずっと働くとか……」
シャノさんは尻すぼみに喋り、犬耳をせわしなく動かして慌てていた。
「ちょっとちょっと」
僕達の間にリル割り込んできた。
「カシューは将来、お爺ちゃんに代わって長老になるのよ。ずっとあたしの家にいるわ」
「やっぱりそうなんだ」
シャノさんの犬耳は折れ、見るからにシュンとしていた。
「そうなんだ」
僕もシャノさんと同じことを言った。
「「えぇ……」」
リルとシャノは軽く口を空けていた。
そのあとリルとシャノは僕の将来について話していた。僕を蚊帳の外にして。
どういう内容の話か分からないけど賑やかで何よりだ。
こうして僕達は醤油作りの準備を順調に進めていた。
大豆と小麦と菌の種を混ぜたものを塩水と混ぜて寝かせる作業は大人達に任せるので僕が関与するのはここまでだ。
一年後。来年の魔物狩りが終わったあとに出来上がる醤油が楽しみだ。
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