第15話 大量発生の原因が分かった
僕は誰かが展開した異次元ゲートから現れるワイルドボアを消していたのだけど。
「あれ?」
ワイルドボアは出てこなくなった。
シウは辺りを警戒しながら口を開く
「さすがにワイルドボアの数に限りがあるようね」
「そうだね」
そろそろ術者が異変に気付いて動き出してもいい頃だ。
「「「カシュ―様!」」」
背後から僕を呼ぶ声がする。
首だけ後ろに向けるとグスタさんやオリエントさん含む森の民達が茂みを越えてきていた。
「これはなんだ?」
オリエントさんは異次元ゲートを見てキョトンとしていた。
「実はかくかくしかじかで……」
僕は異次元ゲートからワイルドボアが発生していて、術者が近くにいるかもしれないということを説明した。
「昔、悪人が森の結果外で待機して森の民を捕らえようとした事件があったのですぞ。そやつの目的は森の民から結界内に入り込もうとする手段を聞くことだったのですぞ」
グスタさんは顎に手を当てて思い出しながら喋っていた。
「それと同じことが起きているということですか?」
「おそらく……とりあえずカシュ―様はここで待機してくだされ。森の奥を皆で調査してきますぞ」
グスタさんはシウ以外の皆を引き連れて木々が生い茂る方向へと歩いて行った。
「シウは付いて行かないの?」
「グスタ殿にはお主の警護を密かに頼まれておるからの」
妙に僕の近くにいると思ったらそういうことだったのか。
「こっそり皆の後付いて行っていいかな?」
「グスタ殿が嫌がるわ。でも誰もカシュ―様を止めれないわ」
「じゃあ行こう」
僕はシウを連れてグスタさん達の後を追った。
歩けば歩くほど木々が密集している地帯だ。光は地上にほとんど届いていないのか辺りは暗くなっていた。
向かっている先には森の民達が松明で辺りを照らしているのか、いくつかの灯が見えた。
「何者だ!」
奥の方から声が聞こえる。何かあったんだ。
「横に周りこもう」
「分かったわ」
僕とシウは皆の横へと駆け足で回り込む。
一応、グスタさんは僕に付いてきてほしくないみたいだし、一旦、隠れよう。
僕達はうつ伏せになって茂みに隠れ、様子を窺う。
横に回り込むと木々が倒れ込んでいる場所でグスタさん達が立ち止まっていた。
グスタさん達の前には灰色のフードを被った人物がいた。
「何者か答えよ‼‼」
グスタさんは声を張り上げる。
「我は
異様な雰囲気を放つフードを被った人物はしゃがれた声を出していた。
声からして男性の老人だ。
それに死霊王とかいう大層な名前を名乗っていた。
「死霊王……!」
シウは思わず声を出していた。
「カシュ―様は知っているかしら?」
「うん」
死霊王という名前は有名だ。
幾千もの魔法を扱う王の呼称だ。死人を操ることもできて不死の軍団を率いて各国を攻め落としたという逸話もある。かつてこの大陸のほとんどが死霊王が治めていたらしいが死霊王が死ぬとともに彼の国は崩壊して分裂したという歴史がある。
とにかく強大で凶悪な王というわけだ。
森の民はざわめきだす。
「死霊王だと⁉」
「生きてるはずがない一〇〇〇年前の人物じゃぞ!」
「とにかくこいつがワイルドボアを出してた張本人ですよ! 倒しましょう」
驚く者、鼻を荒げる者達がいたが。
「待つのでずぞ!」
グスタさんの一声で静まり返る。
「こやつが死霊王というのはありえぬ話ではない。死者を操れる人物なら死した後、自分自身を蘇らせる術も持っておるかもしれぬぞ」
グスタさんは自論を述べた。
続いてオリエントさんが口を開いた。
「だけど、問題はなぜここにいるということだ。グスタさん、死霊王は確かこの大陸の中央に国を築いた人物だ」
疑問を抱いているようだ。
すると、皆の前にいる死霊王と名乗る男はフードを脱ぐ。
彼の姿に僕含めて全員が目をギョッとさせた。
男は骸骨姿だったのだ。
「推論通り我は死した後、自らを蘇らせる魔法を発動したがそれは魂だけの状態だ」
死霊王は空を見上げる。表情こそないが何かを懐かしく思うような顔をしていた。
「魂だけになった我は支配できなかったこの森へとやってきた。人類未踏の地に興味があった。そしてここにはふんだんに魔力が溢れているではないか! 我は魔力を使って肉体を再生しようとした」
死霊王は歓喜の声を上げた。
「しかしここの森の魔力はあまりにも神聖すぎて我と相性が悪い。だが、この森に溢れる莫大な魔力を利用する手はない。復活には時間を要するがおかげで時間をかけてようやく今の姿というわけだ。クハハハハハハ!」
「神聖な魔力をよくも利用したな!」「そうだそうだ!」
森の民が声を荒げる。
死霊王は森の民の声を気にせず話を続けた。
「そしてワイルドボアを使って貴様らの戦闘能力を確かめた。中々に強いではないか! 死人にして操り、再びこの大陸を支配してやるわ! クハハハハハハ!」
死霊王は喜びで震えているようだ。
その言葉にグスタさん達は眉間にシワを寄せていた
もちろん僕とシウも静かに怒気を放った。
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