第14話 大量発生の原因が分かった
魔物狩りを行った僕達はワイルドボアの度を越えた大量発生を目の当たりにしていた。
「シウ、これじゃ埒が明かないよ」
「分かってるわ!」
シウは頭上に白色の玉を生成し、ワイルドボア達に放つ。
白色の玉がワイルドボアの群れにぶつかり、ドオオオオオオンという轟音が鳴り響く。
地面は大きくへこんでワイルドボア達は消し飛んでいた。
一先ず、シウの手が空いたので話しかける。
「直接、原因を叩きに行こうと思うんだ」
「ワイルドボア達が現れた茂みに突っ込もうということかしら?」
「うん」
僕は力強く頷く。
「カシュー様の機動力じゃ時間が掛かるわ。獣の状態に戻るから背中に乗って」
シウは体を光らせると白色の体毛に覆われた狼のような姿に戻る。シウの背中に乗らなくても僕のスキルを駆使すれば機動力は補えるけど。
「やったァ‼‼!」
「急に声でか」
僕は嬉々としてシウの背中に乗った。
「先に言っておくけど、いつもみたいに撫でまわさないで」
「分かっているよ」
さすがに周りの人達が戦っている中で自分の趣味に走るほど血迷ってない。
「こ、こら頭を撫でないで!」
「しまった無意識に」
気付いたら両手でシウの頭を回すように撫でまわしていた。
「もうっ、行くわよ」
シウは駆け出す。
僕達は疾風のように移動していた。
「カシュー様!?」「一体どこに行かれるのですか!?」
森の民は慌てふためいていた。
「ワイルドボアが異常発生してる原因を見つけて潰してきます!」
僕達はワイルドボアの群れに突っ込もうとする。目指すはワイルドボアが現れた茂みの向こうだ。
「くるわ! 任せていいかしら!?」
「もちろん」
僕はシウに応じる。
パッと見、茂みの前のワイルドボアは二〇体以上いた。さっきみたいに鎖で一体一体絞め殺すのは面倒だ。
食べれる状態になるかは分からないが肉体を残しつつ手早く倒せるようにしよう。
僕は両手を前に出す。
「『絶対零度』」
【元素操作】で一番近くにいたワイルドボアの体温を約マイナス二七三度にした。
ワイルドボアは生命活動を停止し、横たわる。
僕が今回行ったのは分子運動の停止だ。分子運動を激しくすれば温度は上がる。逆に分子運動が緩やかになれば温度が下がる。その原理をワイルドボア相手に行い、分子運動を停止させ、生命活動を終わらせたわけだ。
僕達はいよいよワイルドボアの群れの中に突っ込む。
「『絶対零度』『絶対零度』『絶対零度』『絶対零度』」
僕は次々とワイルドボアの生命活動を停止させた。
「見事だわ」
シウは口元を緩ませていた。
「ありがとう。『絶対零度』」
そして僕は再び機械的に『絶対零度』と言い続けた。
「茂みに入るわ!」
シウが合図する。草が顔に当たるので僕は腕を前に構えて顔を守る。
茂みは予想以上に奥行きがある。一〇メートル程進むと草木を抜けて木々が生えている場所に出る。
「「!?」」
茂みから出た瞬間に僕とシウは体を強張らせた。
正面の宙に黒い楕円が浮いているからだ。ブラックホールが目の前にあったら、この黒い楕円のように渦巻いているのかもしれない。
「なにかしらこれ」
「これ多分、異次元ゲートだ」
シウの疑問に応じた。
この世界に転生したときに様々な知識が頭の中に流れ込んでいたのでなんとなくどいうものか分かる。
「簡単に言うと特定の場所と繋がるゲートだよ」
「それも女神や精霊女王から教えてもらった知識か」
「うん。このゲートを出すには魔法を唱える必要がある。つまり近くに術者がいるはずだよ」
「むぅ」
シウは険しい顔をして唸った後、再び人の形態に戻った。
すると、ゲートからワイルドボアが飛び出してきた。
僕とシウは得心した顔をしながら見合う。
「ゲートを見た瞬間にここからワイルドボアが現れたんだろうとは思った」
「お主からゲートの話を聞いた瞬間にあっしもここから現れたと思ったわ」
頷き合った後、僕はゲートの前に立つ。
「『元素分解』」
ワイルドボアは声を上げる暇もなく消滅した。
「…………近くに嗅いだことない匂いを持つ人物がいるわ」
シウは首を振って周囲を警戒していた。
そしてまたワイルドボアがゲートから現れる。
「『元素分解』」
僕は淡々とワイルドボアの体そのものを消し続けた。
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