第2話 気づいてた
『
もし、ドラマや漫画の世界でなら、すぐに変われるかもしれない。
でも、その一歩を踏み出す勇気がすぐに出る訳ではない。
だからと言って、変わりたいと思わない訳じゃないけど・・・
「『はぁ〜』は、俺のセリフなんだが」
『なんで、先輩がここに!』
私の隣にいるのは、山口
会うたびに、本当にバカだなと言う、失礼極まりない人だ。
『いつからここ…』
「俺の話は無視するくせに、他人の話は聞く訳か」
これは、初めから聞いてたな。
それに、物凄く低い声で話すし、すこぶる機嫌が悪いようだ。
『別に、ただ、あの子の言葉が頭から離れないだけですよ』
私の本音をぶつけたにも関わらず、あの子は、嬉しそうな顔をしたのだ。
忘れるなと言われる方が無理だ。
「なんだよ、嬉しそうにして」
あれ、先輩の様子が変だな。
いつもは、一方的に話したら去るくせに、今日は、やけに突っかかる。
先輩には関係ない話なのに。
「絶対、俺の方が先に気づいてたのに」
『先輩、何言って…』
そうだよ、先輩が私の事わかる訳ない。
だって、いつもバカにするだけだから。
だからーーーー
「いつも、他人の顔色を
えっ、
先輩は、本当に気付いてたって事・・・
『うそだ、そんな事わか...』
「わかるんだよ、ずっと見てきたから」
今、先輩の口からずっと見てきたと聞こえたような...あれ、おかしいな。
先輩と顔を合わせたのは、ひと月ほど前だ。
『先輩、どういう意味...』
顔を上げ、先輩と顔を合わすと、手で顔を隠していた。
これは、容赦なく言葉を放つ先輩が、黙っているという状況。
いつもと立場が逆転している、という好奇心が勝ってしまい、強引に手をどかそうとした。
『先輩、顔見せてください』
「やめろ!」
すると、近距離で先輩と見つめ合う状態になってしまった。
つまり、私がバランスを崩し、先輩が助けてくれたのだ。
先輩の目を見ると、おかしな感覚がした。
あの子の時と同じ感覚...そう、全てを見透かされている感覚だ。
『先輩、あの子と知り合いですか』
私、何言っているんだろう。
『いや、すいません。忘れてください』
この発言に、私自身が驚き、先輩の前から去った。
本当の自分って 夏色りく @7216riku
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