第7話 ギルド登録と依頼


「――でね、メグが寝ている間、ちょっと衛兵さんとお話していたんだよ。 それでここは、街の冒険者ギルドの中って訳だ」

 寝起きのメグに、状況を簡単に説明しながら、ギルドの受付カウンターに歩く。


「なるほど、そうだったんですね。 ごめんなさいリョウリさん。 ずっと寝てしまって、重かったですよね? 」

「いや、全くそんなことは無かったぞ(軽々と運べたのも神様がくれた能力なのかな? )」


 カウンターには、職員らしい緑の制服を着た女性が座っていた。 ファンタジーの冒険者ギルドといえば、この登録の瞬間だよな。



 俺はさっそく、2枚の用紙をカウンターに置いて

「こんにちは、ギルドに登録したいんですが、ここで合ってますか? 」

「はい、ここで良いですよ。 こちらの用紙、拝見しますね」


 職員さんの声は明るく、対応も親切そのもの、手続きはあっさりと済んだ。

 


「どうぞ、こちらがギルドの登録プレートになります。 」

 手渡されたのは、手の先に乗るサイズの、小さくて薄い鉄のプレート。 小さく文字が刻まれていて、首から下げられるように、麻紐あさひもが結ばれている。


「プレートの刻印魔法は、登録者名の記録と金属腐食の防止です。 各地の提携ギルドと、国境ではこちらが身分証として使われますよ。 再発行の手続きは、必要な書類が多く時間もかかるので、無くさないようにしてくださいね。 」

「なるほど、わかりました」

 どうやら、ただの鉄板では無いようだ。 凄いな魔法。 錆止めか―― 食器類や剣などにもぜひ使いたい。


 メグのことも登録したかったが、村から攫われた迷子の子を、勝手に冒険者にするわけにはいかないので辞めた。 聞いた感じだと、この先の村までは、俺一人の身分証だけで足りそうだ。



「それと、通常は登録料に銅貨10枚を頂いているのですが、今回は既に支払われているようでしたので、大丈夫です」

「え? 」

 そんなものを支払った記憶は無いけど……。


「どうやら、さっきの書類を作った衛兵の方が、払ってくれているようです」

「なんと! そう、ですか。 そんなことを…… 」

 

 さっきの衛兵さん、疑ったお詫びなのか、ステータスが低いことへの哀れみなのか? どっちにしても、ありがたい気遣いだ。 次に会ったらお礼を言ってみよう。


 俺はここで、自分のステータスの扱いが気になった。

「あの、俺のステータスって、その…… 低いんですか? 」

「そうですね―― はい。 能力は一般市民の平均値、魔法は基本魔法の適正はあるみたいですが、レベルが低いみたいですね」


 そんな会話を横で聞いていたメグが、背伸びをして、ひょこっとカウンターから顔を出して

「そんなはずありません! リョウリさんの魔法は凄いですし、剣も使えて、大きな魔獣もあっさり倒してしまったんですよ?! 」

「メグ、落ち着いて、ありがとうな」

シャーっと威嚇する猫みたいだ。


 俺は職員さんに会釈して

「すみません、いきなり」

「いえ、大丈夫です。 しかし、それはおかしいですね…… 簡易測定ならまだしも、検問の測定ではミスはあり得ませんし…… 」

「あはは、気にしないでください。 俺が思う以上に、他の冒険者の皆さんは、お強いんですね」

 本当にこの世界のレベルが、イメージより凄いということもあるだろう。

 まぁ、メグのこの不満そうな表情を見るに、そうでもない気がするが……


「あ! 戦闘には無関係ですがリョウリさんは【カレー料理】というスキルをお持ちのようですね。 カレーが何かは存じ上げませんが、【料理】スキルには前例があります」

「それは、どんな効果があるんですか? 」

「確か、食材の目利きや、火魔法による火加減の調整が得意になったかと…… 」

「そう……ですか。 目利き…… 」



「もしかして、カレー用のスキル達は、きちんと測定されないのかもしれないな」

 俺は次の街に行く前に、自分と、他の冒険者の実力を確かめたくて、掲示板から依頼を受けてみることにした。


「さてと、俺でも受けられそうなやつは―― 」

 掲示板に近づくと、厚地で目の粗い紙に、依頼が書かれている。

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【薬草の買取】

【物流倉庫の荷運び】

【民家に出たネズミの駆除】

……

【スモールリザード討伐】4人以上から

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「思った以上に、低ランクは雑用系が多いんだな」

 魔獣討伐の依頼も何件かあったが、低ランクの討伐依頼は、どれも数人のパーティーでしか受けられないようだ。 上位の依頼になってくると、凶悪そうな名前の魔獣が並ぶが、人数の制限は無いらしい。


 端の方まで目を通していたら、職員がやってきて、1枚の新しい依頼を張り付けた。

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急募【魔獣討伐に随行】荷運びと雑用 ランク不問

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 これは良い! これなら危険なく、魔獣討伐の流れが分かるし、他の冒険者の実力も中位ランクの魔物がどんな感じなのかも見ることが出来る。 装備も軽装のままで良いだろうし。

「あの、すみません! これ、受けたいんですけど! 」


 俺は、今来た職員を呼び止めて、さっそく依頼を受けることになった。



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2024年10月28日

職員が【カレー料理スキル】に

触れるシーンを追加

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