第6話 冒険者ギルドにて
冒険者ギルドに入ると、中の様子はまさに【ファンタジー】という感じだ。
戦士っぽい格好の女性や、魔法使いらしい大きな杖を抱えたローブ姿の男が椅子に座る、高い天井のエントランス。 仕事の依頼だろうか、掲示板には貼紙が打ち付けられ、数人組がそれをまじまじと覗き込んでいる。
「奥のカウンター、味のある色の木製で、凄く良い雰囲気だなぁ…… 」
「おい、立ち止まらずにこっちへ来い 」
衛兵は強い口調で俺に、右手側の扉へ入るように促す。
もう完全に誘拐犯扱いだな。
ギルドの中は、だいぶ賑やかだが、メグはまだ眠ったままだ。 起きてくれたら、すぐに解決だと思うんだけどなぁ。
試しに声を掛けながら、背中を軽くゆすってみたが、反応が無い。 相当疲れが溜まっていたのだろう。
◆
狭い部屋の奥には、黒い大理石の塊があって、書類とペンが置かれている。
「交番……いや、取調室か」
「まずはここに名前などの情報を書け、それからこの石に触れて貰う」
「なるほど、(これは能力鑑定機なのかな?)」
俺は簡単に書類を埋めて、衛兵に手渡した。
「なんだ? お前は旅人で、出身は名も無い島国、地図も無く今は迷子…… って本気で言っているのか? 」
「ええ、そうなんですよ、困ったものですね、あはは…… 」
「まぁ良い、ステータスを見れば大体のことは分かる」
次に俺は、黒い石に掌を乗せた。 手の横には、紙が置かれている。
石がぼんやりと光り、紙に文字が浮かび上がる。
衛兵はそれを、ぺらりとめくり、表情を変えた。
「ギルド未登録、ステータスレベル1、スキルは……って、こ、これは……! 」
「(やっぱり、カレー用の魔法スキル、凄いのが揃い過ぎてるよな…… 怪しまれてしまったか? )」
「……悪かったな」
「え? 」
「まさか基本魔法も覚えたての、冒険初心者だったとは。 この能力値では、獣人の誘拐は難しいどころか、一人で旅をするのも危険だ」
「ええ? 」
「冒険者ギルドでは、初心者へのサバイバル術や、護身術も教えている。 もし旅を続けるのなら、冒険者登録をお勧めする」
なんか、急に優しくなったな、この人。
というか、「危険」?? あんなに魔法がそろっているのに?
「これは今作成した書類だ、このままカウンターに持っていけば、登録がスムーズだぞ。」
「ど、どうもありがとうございます」
良くわからないが、無事に疑いは晴れたし、良しとしよう。
それよりも……
「冒険者か! いいね! 異世界らしくって! カレー用の素材も多く手に入りそうだ! 」
俺がワクワクし始めた頃、ようやくメグが目を覚ました。
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