第4話 1皿め:基本のカレー

「じゃあメグ、カレーの調理を始めるぞ! 」

「はい! 楽しみですリョウリさん! 」

 俺はまず、先ほど魔法で出したテーブルの上で、野菜の皮をく。 ジャガイモとニンジンは、既に水魔法で洗浄済みなのだが、その時に偶然、風魔法で野菜の皮が簡単に剥けることが分かっていた。

「これは簡単で良いな、ピーラー要らずだ」

 魔法と言うものは案外簡単で、イメージに慣れれば鼻歌を歌いながらカレー作りを進められる。


 材料をカットするのは、風魔法でやろうとすると調節が難しかったので、包丁ですることにした。

「うん、物質魔法で作った包丁も、良い切れ味! よかった、魔法が無ければ普通の剣の先で調理するところだった…… 」

 玉ねぎは細切り、ニンジンは一口サイズの乱切り、ジャガイモは大きい方が俺は好きなので、他の具材より大きめに切った。 ジャガイモはこの後水魔法に少し当ててあくを抜く。

「こんな立派なお野菜、私初めてです…… 」

 とメグは俺の手元をじっと観察し、トントンと包丁の音が鳴る度、猫の耳と尻尾を動かして楽しそうにしていた。

 微笑ましいな、と思って見ていたが、目が合うとメグはにっこりと笑った。 

 あぁ、これは美味いカレーを作ってあげなくては!


「さて、次は肉だな」

 俺は倒した魔物の解体をする。

 これも神様がくれた恩恵なのか、簡単なイメージでスラスラ解体できた。

 あっという間に霜降り肉のブロックが並んだ。

「おぉ……! 」

「――これは…… 美味しそうですね……」

 今回はすぐに食べたいので、すね肉以外の、モモ肉とバラ肉を使うことにした。


「さて、最初は肉から焼いていくか! 」

 まず、一口サイズに切った肉に塩、コショウ、ナツメグ、クローブを振り、次に小麦粉を薄くまぶす。

 解体時に出た脂身をフライパンで溶かし、肉を重ならないように並べて、表面に焼き色が着くまで強めの火魔法で加熱する。

「良い匂いです…… 」

 メグの尻尾はぴょこぴょこと動きを速めている。


「今回は鍋が一つしかないからな、一度肉を器に取ろう」

 俺は魔法で小皿を作り、焼けた肉を移す。


 空いた鍋に再び油をひいて、玉ねぎを色が飴色になるまで炒めていく。

 鍋の力か、火魔法の力か? 前世で作っていたときよりも短時間で出来た。


「あとはここに、ニンジン、ジャガイモ、肉とローリエの葉を入れて―― 水魔法で具材が浸るくらいの水を入れる」

 袋に赤ワインの小瓶も入っていたのでそれも半分注そそいだ。

 浮いてきたあくを取って、10分ほど火魔法で煮たら、なぜか袋に入っていたカレールウを入れる。

「さて、辛さは何口かな? 匂いと雰囲気からメグも食べられる辛さだとは思うけど…… 今回はルウ様に頼ったけど、使い切っちゃったし次回の味つけは…… って! え?! 」

 袋の中を見て俺は驚いた。


「使い切ったはずのカレールウが、袋の中に復活している?! 」

 まさかこの布袋、基本の食材は無限なのか?!

 袋の中を探ると、使ったものうち戻らないものも多い

「ふむ、野菜は無いみたいだな、ローリエの葉は5枚に戻っているから、多分スパイスも復活できる。 酒は半分のままか」

 どうやら無限生成できるのはカレールウと一部のスパイスなどに限られるらしい。 野菜、酒などの食材は元に戻らない。


「いやこれ、最強じゃないか! 具材さえあれば一生このカレーで生きていけるぞ! 」


 興奮している俺を見たメグは、何のこと? という表情だったが、難しいので説明はやめておこう。


 そうこうしているうちに、カレーが煮込み終わった。

「完成だ!! 」

 メグも「お~! 」と目を輝かせている。



 早速食べよう! 

 布袋には、なんとパックのお米も入っていたのでそれを、魔法で空中に作ったお湯の中で温めた。

「木のお皿とスプーンは鍋底にあったからな、これを盛りつけて―― 」

 お玉は魔法で作った。 とてもカレーを分けやすい。



「さあ食べよう!! 」

 目の前に置かれたお皿をみて、メグは「うわぁ~! 」

と可愛い声をあげた。

 俺も一緒に「うわぁ~! 」とおっさんの声でつい喜んでしまった。


 それじゃあ……

「いただきます! 」

「いた? ます! 」

 メグも俺を真似して続いた。


 美味い!!!!!!!!!!!!!!!

 ルウが良いのか? 肉か? なんだこれ! めちゃくちゃ美味いぞ!!

「う、うますぎる…… 」


 メグを見ると、美味しさのあまり目に涙を浮かべている。

 でも食べる手は止めない、はむっ! と大きく口を開けて、もぐもぐしている。


 甘口に近い中辛かな? メグも食べられてよかった! 


「美味しいな! 」

 と俺が話しかけると、メグはうんうんと大きく頷きながらカレーを食べた。

 幸せそうな様子を見て、俺も嬉しくなった。





 

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