第3話 カレーを作るための魔法スキル

「よし! じゃあ、早速さっそくカレーを作ろうか! 」

「う、うん」

 リョウリは鉄鍋から道具を取り出し、並べていく。

 猫耳の女の子も、リョウリにつられて、少し気分が明るくなった様子だ。

「そうだ、名前を言っていなかった。 俺は唐井からい料理りょうり―― リョウリだ。」

「リョウリさん、ですね。 私は、メグです」

「そうか! よろしくな、メグ」

「はい! 」


 リョウリは足元に横たわるオオトカゲを見て

「早速だがメグ、この倒したトカゲは食べられるのかな? 」

「う~ん、たぶん大丈夫です。 毒のある魔物はだいたい目が赤いので」

「そうか。 まぁ、大丈夫だろう! 見た目美味そうだし」

 肉の見た目は、高級な和牛のように霜降りだ。



 自己紹介を終えたリョウリは、揃った食材を眺めて、完璧だと思ったが。

「あ、しまった! 」

「……どうしたんですか? 」


 リョウリは大事なことに気付いていなかった。

「火と水が無い…… カレーの話をしていたから、テンションが上がって、つい忘れていた…… 」

「え? 」

「ほんとうにすまん! 悪いがメグ、火と水を確保するまで、カレーは待ってくれないか? 」

「いえ、こんなに親切にしてもらえるだけで、私は十分です! 」

 猫耳の女の子:メグは力一杯、リョウリを見上げながら主張する。


「そうか、頼りないおっさんでごめんな…… 」

「頼りなくないですよ、さっきも凄かったです。 でも、あんなにすごいのに、魔法は使わないんですね」

「魔法?! 」

「はわわ、ごめんなさい! 強い冒険者さんは、魔法で火を起こすのかなって思っていたので」

「いや、怒ってはいないんだ。 驚かせちゃったな、ごめん。 だが、そうか! この世界には魔法があるのか! 」


 神様は俺に、力を与えると言っていた。

 それは全て、カレー料理を楽しむために必要な力のはず―― つまり。

「火も水も、魔法で出せてもおかしくない! 」

 リョウは腕まくりして、何もない平らなスペースにてのひらを向ける。


「頼む! 出てくれ!! 」

 イメージしたのは、赤く燃える炎。


 するとリョウリの手から、ぶぉっと炎が噴き出した。

「本当に出た! 」

「凄いです! リョウリさん! 」

「おぉ! 」


 もう一度、小さく火を出そうとすると、今度は火の玉が空中に浮いた。

 さらにイメージを固めると、地面からガスコンロみたいに円形の火が出た。

「やったぞ、これなら火加減も完璧だ」


 続けて水魔法を試す。

「こっちもコツはいるが、水量、形、自由自在だな。」

「水も! きらきらしていて綺麗ですね!」

 メグも、間近で見る魔法に興奮気味だ。


 他に出来ることは何かないだろうか?

「そうだな…… 包丁、まな板、テーブルも出来ないかな」

 リョウリはさらに、物質生成の魔法を試す。


「お! 小さいが半透明な板に壁だ! 」

 どうやら大きなテーブルは難しいが、小さなテーブル、包丁とまな板はそれっぽいものが出来た。これで道具も完璧だと、料理はうんうん頷く。


 野菜、袋の調味料、火に水に道具。 足元にはトカゲ肉。

「メグ! 全部揃ったぞ! 」

「じゃあ、リョウリさん? 」

「おう! 今度こそカレーにしよう! 」


 ようやく異世界のカレー作りが始まる。

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