第31話 アップデート
【ラスボスイベントのお知らせ】
【この度、ラスボスが実装されました】
【ラスボスはラストダンジョンに潜みます】
【10月22日までに討伐してください】
【期日までに討伐されない場合、ラスボスがダンジョンから出てきます】
「……つまり、どういうことなの?」
「ら、ラスボスが、じ、実装……?」
「それを倒せば、このアプリは終わるのか?」
ラスボス、つまり物語の最後に登場する敵のことだ。通知内容をそのまま解釈すれば、ラスボスとやらを倒せばこのアプリはエンディングを迎えるのだろう。つまりこのアプリの終了を、意味してると捉えられる。
だが……それは個人的には嫌なことだ。
俺はこのアプリのおかげで、変われた。
力を手にし、何より友達を得た。
このアプリが終了することで、万が一このアプリのプレイ時の記憶が削除されるとかだったら……とてもじゃないが看過できない。ラスボスが顕現したとしても、俺はこのイベントを進めたくない。
「ラスボスとやらを……倒すしかないわね」
「いや、だが……こういうのはクリアと同時に、プレイ時の記憶が削除されるのがセオリーだぞ? 俺たちの記憶が削除され、赤の他人になるのは……嫌だ」
「だ、大丈夫だよ。そ、そんなことで、わ、私たちの絆は消えないよ!!」
「……信じていいんですね?」
コクっと、2人は頷いた。
「万が一記憶が削除されたとしても、また友達になればいいじゃない。アタシたちの関係は、記憶の削除くらいで消えるほど浅くないんだから!!」
「そ、そうだよ!! だ、だから、安心して」
「……わかりました。2人とも、ありがとうございます」
2人を信じよう。
俺たちの友情が、この程度ではないことを祈ろう。
「でも、アプリが終了するのは……困るわね」
「そ、そうだよね。も、もっと異能を楽しみたかったのに……」
「スキルが消えて、一般人に戻るのは……嫌ですね。この能力でずっと、非日常を満喫したかったです」
わがままを言っても仕方ないことは、もちろんわかっているのだが。だがそれでも、こんなに楽しいアプリは他にはないだろうから……終わってしまうのは惜しい。
「まぁでも、ラスボスの期日までは少しあるんだから、もう少しだけ満喫しましょう。ラスボス戦に挑むまでに、少しでもスキルを獲得しておきたいからね」
「そ、そうだね。い、今のまま挑んでも、きっと負けちゃうもんね」
「えぇ、俺もレベルを上げたいですし」
期日まで、そこまで時間はない。
だがそのわずかな時間を、今はレベルアップに当てるとしよう。少しでも長く、このアプリを満喫しよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時間はあっという間に過ぎ去り、10月21日になった。掲示板を見る限り、この期間にラスボスを倒したという報告は見受けられない。
「志苑、お待たせ」
「じゅ、準備万端だね!!」
いつもの公園にて、俺たちは揃っていた。
あの頃よりも、格段に強くなって。
─────────────────
【名 前】:
【ランク】:SSS
【スキル】:双虎流闘術
身体強化
金剛闘気
神龍煌気
聖悪特攻
────────────────
─────────────────
【名 前】:
【ランク】:SSS
【スキル】:闇属性
魔力爆増
自動魔力回復
自動体力回復
必要魔力現象
暗黒ノ心得
────────────────
─────────────────
【名 前】:
【ランク】:SSS
【職 業】:毒属性魔法師
【スキル】:身体強化 Lv MAX
氷炎属性 Lv MAX
煌星流闘術 Lv MAX
金剛闘気 Lv MAX
猛毒属性 Lv MAX
状態異常無効 Lv MAX
万物特攻 Lv MAX
──────────────
3人ともSSSランクとなり、スキルも格段に増えた。今の俺たちに、倒せない敵などいない。例えラスボスであっても、一瞬で屠される自信がある。
これまでのダンジョンも、ほとんどの敵を一撃で屠れるようになった。今ではSSS級ダンジョンのボスだって、一撃で倒すことができる。俺たちはSSSランクの中でも、上位層に君臨しているのだ。
「挑むわよ」
詩葉はそう言うと、自身のスマホをスワイプさせた。すると目の前に、例の如くブロンズ門が出現した。
その門はいつもよりも、どこか禍々しい。
門から溢れ出す瘴気は、吐き気を催す。
それでも、俺たちは挑まなければならない。
これほどまでに強くなっても、いまだに緊張してしまう。ダンジョンから漏れ出す瘴気に、思わず気持ちが日和ってしまう。だがそれでも……逃げる理由にはなり得ないのだが。
「ふぅ……」
本日中にラスボスを倒さなければ、地表に顕現してしまうと記載されていた。そのためにこれまでの間、俺たちは鍛え続けた。この先に何が待ち受けようとも、俺たちは挑まなければならない。
例え、アプリが終了したとしても、
例え、記憶が消されても。
俺たちは……挑まなければならない。
そうしなければ、きっと被害が甚大になるだろうから。
「行くわよ」
「う、うん!!」
「あぁ……行くぞ!!」
そして俺たちは、門扉を開いた。
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