第22話 職業ダンジョン 3/4
目が覚めた。
時計を見ると、数時間ほど眠っていたようだ。2人の救済のためにも一刻も早く帰還しなければならないのに、恥ずかしい限りだ。ただそのおかげで、魔力がかなり回復したのだが。
周りを見渡すと、1つの宝箱が部屋の中心で鎮座していた。つまり……俺は成し遂げたのだ。
「ふぅ……疲れたな」
剣をアイテムボックスにしまい、宝箱の元へと向かう。モンスターハウスは魔物が大量に出現するがその反面、攻略時に宝箱が出現する可能性があるのだ。この間3人で挑んだダンジョンは出現しなかったが、あれは……単に運が悪かったのだろう。
何はともあれ、宝箱だ。
さぁ、何が収まっているのやら。
「さて、中身は何だろうな」
宝箱を開く。
そこには、瓶詰めの緑色の液体が収められていた。そしてその傍には、1つの紙が収められていた。
「……怪しいな」
とりあえず、紙を読む。
【スキル液:闘気】
飲用することで【闘気】スキルを得る。
「……え、マジで?」
その効果に思わず絶句してしまう。
デメリットは……特にない。
ということは……マジで有力なクスリだな。
こんな形で、スキルって習得できるのか。
しかも、【闘気】って……シンプルでありながら、詩葉が愛用していたことからもわかる通り強力なスキルだろう。これを飲めば、俺は間違いなくさらに強くなれるだろう。
「さ、最高かよ!!」
クスリを飲み干す。
すると、全身にかつてないほどのパワーが
「す、ステータスオープン!!」
強くなった自分を確かめるべく、さっそくステータス画面を開いた。
─────────────────
【名 前】:
【ランク】:E
【スキル】:身体強化 Lv9
氷属性 Lv9
煌星流闘術 Lv7
毒耐性 Lv3
闘 気 Lv1
────────────────
そこには確かに、【闘気】スキルが刻まれていた。さっそく発動すると、全身を金色のオーラが包み込んだ。ソレにより身体能力が格段に上昇し、途轍もない万能感が押し寄せてくる。
自分自身でも恐ろしい伸びだ。
もう俺は……S級の実力を得ているんじゃないか?そんな風に感じてしまうほど、俺は強くなった。
「……入室して、本当によかったな」
モンスターハウスを攻略して、本当に良かった。あの時、扉を開いて本当に良かった。
抱いた後悔を撤回する。俺は……正しかった。
「よし……先を急ごう」
そして俺は特大の感謝をモンスターハウスに残して、部屋を後にした。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから数時間後、俺はようやくボス部屋の前へと辿り着いた。
「……長かったな」
時計を見ると、もう朝の6時だ。
徹夜をしている為、早く寝たい。
髪が脂っこいし、心が沈む。
さっさとクリアして、転職しよう。
もう……早く帰ろう。
そんな思いで、鉄扉を開いた。
「マッテイタゾ、ニンゲンノユウシャヨ」
扉を開くと、そこにいたのは……ロボットだ。シルエットは人間のソレ。だが質感は完全に鉄。鉄で出来た表皮に、顔はシリコンで出来ている。眼は赤く光り、表情は豊か。明らかにロボットだ。
身体は完全に鉄で出来ているのに、顔面だけはシリコン製なので人肌のような質感なのが不気味に感じる。これがいわゆる『不気味の谷』と呼ばれるモノなのだろうか。……いや、少し違うか。
そんなロボットが、カタコトで話しかけてきた。THEロボットといった感じの口調で、語り掛けてきた。
「ドウシタ、ヘンジガナイゾ。ニホンゴデハナシテイルノダガ……ニホンゴガワカラナイジンシュナノカ?」
「あ、いや、そうじゃない。少し……驚いただけだ」
「ソウカ、ソレナラバヨイ。ソンナコトヨリモ、ヨクゾココマデタドリツイタナユウシャヨ」
「あ、ど、どうも」
カタコトなので、少し聴きとりずらい。
いや、そんなことよりも……なんだコイツは。魔物……に分類されるのか?
大雑把な分類で分けると、ゴーレムの一種に属するのだろう。だがコイツの見た目はゴーレムのそれよりは圧倒的に高品質だし、見た目がSF過ぎる。
「えっと……お前は何者だ? 何故、俺に語り掛けてくる?」
「ソレハキサマガ“プレイヤー”ダカラダ」
「……プレイヤー?」
その言葉が耳に入った瞬間、何故だかスゥーッと心が穏やかになった。徹夜明けで先ほどまで苛立っていたハズなのに、何故だが急激に落ち着きを取り戻せた。
……このロボット、何者だ?
まさかとは思うが、精神攻撃を生業とするタイプの敵じゃないだろうな。【精神耐性】なんてスキルは有していないし、なんだったら元ボッチであるが故に俺の精神は常人よりも脆いんだ。精神攻撃なんて……一番の弱点だぞ。
「トキハミチタ。コレヨリ“チュートリアル”サイゴノシレンヲオコナウ」
「それはつまり……今から戦うというワケか?」
「サッシノトオリ、セイカイダ。ソレトアンシンスルガイイ、ワタシハセイシンコウゲキナドトイウヒキョウナコウゲキハオコナワナイ」
「……それは一安心だな」
もちろん、ウソだ。
「サァ、オドロウジャナイカ」
「はッ、小粋なジョークだな」
そして俺たちは、同時に駆けだした。
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