第3話
異世界に召喚されてから1週間がすぎた。
その間、私達は様々な知識を叩き込まれた。
そのおかげか、全員この世界の基本知識はバッチリ、
魔法も魔術も剣術も、それなりには上達した。
「なぁ、そろそろいいんじゃないか?」
ケイが寝っ転がりながら話す。
「この世界のことも大体は知ったし、魔法だって人並みに扱えるようになった。剣術もみんな程々にできるじゃないか」
「そろそろ、火でも雷でも放って逃げようぜ」
アイが迷うように答える
「確かに、知識 魔法 剣術 ともに基礎はバッチリよね。そろそろ潮時かしら」
正気だろうか…
「無理でしょ」
私は話を続ける。
「私達の能力は人並みなんだよ?王宮お抱えの魔導士とか騎士達が逃げた私達を追えば半日もかからず捕まえられてここに逆戻りだよ」
私の発言にみんなは考え込む
「ただし、運に賭けるなら。可能性はあるよ」
「可能性?」
「聞こうじゃないか」
私は図書室からこっそり盗ってきた地図を広げた。
「まず、逃げるなら1週間後のお披露目パーティーが終わった夜ね。風魔法で一気に城から飛び出て逃げよう」
「それはそうだよ、で俺の作戦はそのまま隣国のアスランまで逃げようって話で…」
「話を最後まで聞けって」
ケンは続けようとした言葉を飲み込んだ。
「逃げるとしたら、隣国じゃない。精霊の森だ」
みんながポカンとした顔でこっちを見つめる。
「隣国はタザールと友好国だ。隣国に私達がいると知られれば、引き渡されて終わり」
「だから、逃げるなら精霊の森。精霊は中間的な立場だから、私達は異界人。特別な力を持っているって利用価値をアピールしたら匿ってくれるかもしれない」
みんなの顔に嬉しさが宿る。
「なるほど!じゃあ1週間後のパーティーの夜、精霊の森に夜逃げするってことでいいよな!」
反対の声はでなかった。
(正直、精霊達が私達を匿ってくれる確率は限りなく低い。でも、可能性があるなら……それに、精霊なら呪いをとく方法も教えてくれるかも)
そうして数日が経ち、パーティー当日になった。
「異界から勇者一同が我々を助けに来てからだぞ!乾杯!」
意味のわからない自己紹介を沢山受けて、部屋に戻れたのは12時が回るころだった。
「事前に決めた2人組になって!はやく!」
ケンがみんなを急かしながら荷物をまとめる。
「窓はもう開けといたよ!風魔法の準備して!」
私も小さい声で叫びながらクラスメイトの先頭に立った
「アマノガワ、時間だ行こう」
風魔法を唱えて窓から外に出る。
全員外に出たのを確認して、精霊の森の方向へ全速力で進む。
5分くらい経っただろうか
「アマノガワ!ケン!後ろから追っ手が…魔導士だ!」
(思っていたより速い…)
「速度をあげて!捕まっても助けてやれないよ!」
瞬間、後ろから火の球が通り過ぎていった。
魔導士からの攻撃だ。
「全員攻撃が得意じゃない奴は下がれ!」
そう言いながらケンは魔導士達の前に出た
「水よ!唸れ!」
ケンが水魔法で龍を作り魔導士に差し向ける。
魔導士はものの数秒で龍を破った。
私もケンの後に続き、前に出る。
「闇は燃えて光は届かん」
呪文を唱え、闇魔法を魔導士達に差し向ける。
闇魔法はしぶとく残って魔導士の行手を遮った。
「アマノガワ!精霊の森が見えてきた」
向こうのほうをみると大きな森が見えてきた。
「攻撃はもういいからはやく精霊の森にはいって!」
次々とクラスメイトが精霊の森に入っていく。
後もう少しというところで、ケンに魔導士の攻撃が直撃した。
ケンがよろよろと落ちていく。
(やばい!間に合わない!!!)
その時、大きな鳥がケンを拾って森に連れて行った。
私はスピードを落とさず森にダイブした。
……痛い
「ケン!大丈夫?」
「全員夜逃げ成功だ!!」
「アマノガワ、息してる??」
「ん、生きてるよ」
生返事をして起き上がる。
さて、このまま休みたいところだが。まだピンチを逃れたわけではない。
「精霊さん、なんで助けてくれたの?」
大きな鳥に話しかける。
鳥はこっちに向き頭を下げた。
そして、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。
「大精霊様方がお呼びです」
そう言って鳥は翼をこちらに向けた。
どうやら乗れということらしい。
鳥にまたがるとすぐに鳥は羽ばたいた。
「……つきました」
見るとそこには6人の精霊がいた。
おそらくこの人たちが大精霊なのだろう。
6人の1人が跪く。
「お待ちしておりました。精霊王様」
その場にいたのは私と鳥だけ。
「精…精霊王?」
続く
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