第2話
異世界に召喚されてから最初の朝が来た。
やたらに大きいテーブルに人数分の食事が用意されていて、後ろには壁に沿って侍女が並んでいた。
黙々と朝食を食べて、終わると学校の教室みたいなところに案内された。
「これから皆さんには魔物と戦うために魔法を習ってもらいます。あとはこの世界で暮らすための基礎知識も蓄えてもらいますね」
すらっとした女性が淡々と話す。
どうやら彼女が私達の先生になるらしい。
「私の名前はスラッシュです、皆さんのお名前を1人ずつ教えていただいても?」
この問いには私が1番に答えた。
「アマノガワです」
クラスメイトが一斉にこっちをみる。
私の名前は真波天夏だ、でも、本名を教える気にはどうしてもならなかった。
それに、ちょっとかっこいい名前名乗ってみたいし…?
みんな、私の言葉の意味を察したのか偽名ばっかり名乗っていった。
「駿です」 「コウです」 「…アイナ」
スラッシュは全員分の名前を名簿に書き留めていった
「把握しました。それでは早速、初期魔法の授業をしましょう。」
1番最初に教えてもらったのは水魔法だった。
スラッシュによると自分の頭の中で水のイメージをしてそれを押し出す感じらしい。
水魔法は全員クリア。
中にはめっちゃ大きい水の塊を作り出す人もいた。
次に炎、草、雷、光、闇、氷、と教えてもらったが、
全員クリアした。
私は光だけ使えなかった。
「皆さん、お疲れ様です。少し休憩を挟むのでゆっくり休んでください。」
スラッシュが教室から出ていって、ザワザワと騒がしくなった。
「本当に魔法、使えたな。」
「すごい!楽しいなぁ」
その中で佐藤こと、今の世界では「ケイ」がちょっといい?と話を切り出した。
「魔法が使えるんだったら今すぐにでも炎魔法を使って火事でも起こして逃げるべきなんじゃないか?」
しん、とその場が凍りつく。
「あんたバカ?」
中山美穂こと「アイ」が反論した
「私たちはまだ初期魔法しか扱えないのよ?しかもこの世界の知識なんて一つもない。あんた、この国の人がなんの硬貨を使っているのか知ってる?」
佐藤が黙り込んだ。
「とりあえず今はまだ、その時じゃない。あいつらから知識を搾り取れるだけ取ってから燃やすなり殺すなりしないと」
話し合いはこれにて幕を閉じた。
スラッシュが戻ってきたのだ。
「次の授業は元素の魔法を応用した魔術を教えます」
そうして一日中、スラッシュ先生と授業をして、部屋に帰れたのは空が夕焼け色に染まってきた時だった。
今日習ったことは3つ
・魔法の使い方
・魔術の使い方
・この世界の時間軸
魔法は元素、水、炎、雷、草、光、闇、氷などのこと
魔術はそれら元素を応用して空を飛ぶなり、幻覚を見せるなりした物らしい。
そして、この世界の時間軸。
まず、時間は現世と一緒で1日24時間。
月も1年12ヶ月といった形だった。
部屋に戻ってソファに横になる。
「私達にかかってる呪いって、闇魔法の類かな?」
「多分そうじゃない?」
と、呪いについて話し合っているところに割り込む
「闇魔法じゃないと思うよ」
話し合っていた子達がこっちを振り向いた。
「闇魔法じゃなくて禁忌魔法だと思う」
「まて、アマノガワ、禁忌魔法ってなんだ?スラッシュ先生はそんな魔法教えてくれなかったぞ?」
ケイがテーブルから身を乗り出して言った。
「スラッシュ先生がなんか知らん人と話してるの聞いたんだよ、そのうち禁忌魔法もほにゃららって」
クラスメイト全員がこちらに注目する。
「闇よりは、禁忌って方が呪いっぽくない? それに、呪いが闇魔法を使ったものなら、私達にわざわざ教えないよ。とかれちゃうかもだし」
「謎は深まるばかりね」
腕組みしながらアイは呟いた。
異世界に召喚されてから2日が経った。
次は教室ではなく、大きな訓練場に連れてこられた。
「今回は剣術の授業です。私は剣術には疎いため、ダイラット先生に教えてもらってください」
そうして、大柄なダイラットとか言うやつに剣術のあれこれをしこたま叩き込まれた。
正直言うと魔法の授業の方がまだマシな感じだ。
やっと休憩の時間が来て、クラスで固まってはぁはぁと息を整えていると私達より年上の男達に周りをぐるりと囲われる。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
ケイが男の1人に殴られた。
「お前ら、異界人とかなんとか知らないが、目障りなんだよ。急に俺たちと同じ訓練場で剣術習うとか、舐めてんだろ」
そう言って今度は三橋楓こと、ソラが殴られた。
その瞬間目の前が真っ赤になった。
私達だって、好きで召喚されたわけじゃない。
「闇よ!」
気づいた時には闇魔法をかけていた。
闇は男達の首元に巻き付く。
「仲間を傷つけるんだったら、殺す」
男達がゼェゼェと喘いでいる。
このまま締め続けていたら、あいつらは死ぬだろう。
「調子に乗りやがって!」
締め付け損ねた男達がこっちに向かってくる。
「炎!」
ソラが炎魔法を放ち、それを牽制する。
今となっては、クラス全員が協力して男達を攻撃し、仲間を守っている。
「そこまでだ」
ピンクがかった髪色の男が来た。
私は闇魔法をといた。
「こいつらが粗相をしただろう。すまなかった」
感情のこもっていない謝罪を受けた。
それで終わり、ピンク髪の男があの暴力者達を引きずりにながらどっかに行ってしまった。
「……私達、あの騎士もどきに勝ったの?」
わぁぁ!と私達は歓声をあげた。
「騎士もどき、騎士もどきだけどもすごいよ!」
「ソラ!アマノガワ!よくやった!」
「ケイ、ソラ、怪我大丈夫?」
いろんな方向から揺さぶられてハッとする。
「や、やったね勝ったよ!」
私もすぐに歓声をあげた。
そうして、2日目が終わった。
続く
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