第9話宣戦布告

かの帝国に宣戦布告をしたのはランドローズ王国の第3皇子である、フェガタゥーヴァル・ラルク・ランドローズ。


本気で頭のネジがほぼ外れている。と噂まで立っている。ある意味、並外れた奴だった。


(ちなみに、『フェガタゥーヴァル』というのは古代の言葉で『運命られた祭神』という意味がある。)


そして、その名の通り、フェガタゥーヴァル皇子バカは祭神だったのかもしれない。




ミネルバ帝国は、フェガタゥーヴァル皇子バカ


「ふはは!何を言っておる!その辺のノロマの帝国より余っ程、我が国の方が戦略的にも頭脳的にも、優れているではないか!!」


という発言をよりにもよって、ランドローズ王国の友好国として参加した晩餐会で聞いてしまった。

その事により、両国の関係にヒビが入る運びなった。帝国側も多少の事であれば、子供の戯言と言って、耳を貸さなかったかもしれない。



しかし、この世界情勢の中で ''帝国'' と名が付くものはミネルバ帝国しか無いので、この皇子バカが『ノロマの帝国』と銘打った時点で、もう帝国は引くに引けず、また、ランドローズ王国側も『また会おう』等とは呪いの言葉として、口が裂けても言えなかったのである。


両国の王族共々、戦争などする価値も無いと考えている為に、今回の騒動が自国の戦争推進派もとい、反王族派の貴族たちや商人たちに騒ぎ出す口実を与えてしまったことは明白で、とても頭の痛い事案あった。



しかし、この皇子バカが、この発言をしていたのには訳がある。この友好国同士の晩餐会には、大商人たちも、ある程度の献金をすれば参加できるのであった。

その額は侯爵家の俺でも目が飛び出でる程である。だが、それ以上に友好国側の御用商人としての地位が確立されるかもしれないという多くの打算や陰謀によって、莫大な額を払う商人が多くいた。


その中でも反王族派の筆頭商人と言われる者がいた。その名は、ミルロフ・ジォビィーラ

。初めは豪商として名を知られ、3年程前に、ようやく新装貴族として新しく貴族の仲間入りをした凄腕の商人であった。

また、言わずもがな、裏社会にも通じており、我々の家とも多少なりとも交流はあったが馬が合わずにそのまま商談も無くなっていった。



何故、馬が合わなかったのか。

それは我が侯爵家が《我が家、至上主義》だったからだ。

曰く、「我がライン侯爵家が頂点であり、その他の有象無象は端くれである。」という謎の信念により生み出され、繰り出される差別的な行動や言動の数々だった。


最早、俺にとっては迷惑極まりない迷作である。


初心の商人から貴族へ成り上がる道中や、より高みへと目指していく中で、我が家ほど邪魔な存在もいないだろうと思う。

そして、ミルロフは、我が侯爵家の傘下に入らなかった事で、強い力を持てるなどと錯覚し、より膨張した事で陰謀を企てたという訳だ。そういった意味では、フェガタゥーヴァル皇子バカも被害者ではある。



まぁ、この件では誰も許しなどしないだろうがな。

この俺もな!!



そうして始まってしまった名ばかりの戦争は、いつ終わらせるかを先に検討されていた。それでも始まった直後は両国の戦う者達のやる気は最高潮だった。だが後に、その戦争自体がいつの間にか戦場という名の親睦会となってしまったのは、指揮官が何らやる気の無い素振りであった為か。

国民や兵士はそれに何を思ったのか。両国勢は何故か戦場にも関わらず、武器を捨てて話し合いを始めてしまったのだった。そうして挙句の果てに戦場にて和解した。


(この和解は、後日の歴史書で『勇敢なる平和の使徒たちの和平による功績』として語られる続ける事になるが、それは別の話だ。)


このような出来事が起きてしまった為に、焦った指揮を任されていた騎士団長たちは現状を国に直訴した。両国の議会でなんとも不毛な検討が成され、特に帝国側は少しでも体裁を取り繕うために懸賞金を出して、『少しでも戦場の様に見せかけられた者には戦場での功績として褒美を遣わす』と密命を各師団長宛に送り付けたのだった。



画して、帝国側の勝利で幕を閉じた。

両国の繋がりとして、民衆や兵士、騎士団の距離感が縮まったのは言うまでも無いだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る